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大つごもりに 

まったく個人的な感懐です。
今日は皆様にお読みいただくというよりは自分自身の覚書です(大体いつもそうなのですが・・・)。
最近、大つごもりはカウントダウンなどもあってお祭り騒ぎをするのが普通ですが、私は十代の頃からひそやかにこの日を送ることにしています。

    歌合戦

などというのも中学生時代までしか知りません。それも親が見ていたというだけの理由で、私自身はあまり関心はなかったのです。
とにかく自然の光のままのところで煩悩をかみしめていたいのです。
陰気と言われようが何と言われようが、それはまったく気にしません。

この一年何をしてきたのだろう、などと改めて思うと、やはりダメな人間でした。
持病を克服できず、衰え行く感覚が強まりました。誰しも老いていきますのでそれはかまいませんが、数字としての年齢ではなく、気概が足りない、それを補う力がない、という感じです。

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ひとりの正月 

大掃除はいかがでしょうか?
職場の研究室は

    軽く整理する程度

で、あっさりやめてしまいました。
下手にひっくり返すとまだ終わっていない後期の授業関連の資料がどこに行ったかわからなくなるという危険性をはらんでいるからです(実は面倒なだけ)。
家の掃除はさらにいい加減。ここ十年ばかり自宅で正月を過ごさなかったこともあって、大掃除をする習慣を忘れてしまったとも言えるのですが(これは完全な言い逃れ)。
子供の頃、私は大掃除となると兄弟の仲で一番働き、何でもかんでも磨き上げるのが好きでした。窓ガラスから家電製品からキュッキュッと音がするほど磨くのです。
そんなまじめな

    お掃除少年

はどこへ行ってしまったのでしょうか?

それでもかろうじて車だけは磨きました。車内は砂や菓子くず(誰が食べたの?)が床にびっしり。
それをブラシでかき集めては捨てました。近所の蟻さんが喜んでいるのではないでしょうか。
ダッシュボードなどは軽く艶出し。窓ガラスも磨いてかなりきれいになりました。

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文楽・超入門(11) 

年内最後の「超入門」です。
文楽に登場する

    役名のつく人物

の男女比はどれくらいだと思いますか?
ざっと

    2:1

と言ってよいと思います。
それほどに男性の登場が多いのです。

さすがに庶民の日常を描いた「世話物(せわもの)」では女性もまずまず登場しますが、それでも男性のほうが多いと思います。また、時代物になると男性が多いのは当たり前のようなもので、「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」を例にとってみると、女性には「おかる」「お石」「戸無瀬」「小浪」「顔世」「おかるの母」などが登場しますが、たかが知れた数です。それに対して男性は「大星由良助」「高師直」「塩冶判官」「早野勘平」「桃井若狭介」「加古川本蔵」「大星力弥」「原郷右衛門」「千崎弥五郎」「斧九太夫」「斧定九郎」「天河屋義兵衛」「足利直義」「石堂右馬之丞」「薬師寺次郎左衛門」・・・・・といくらでも出てきます。
さらに文楽の

    (かしら)の種類

も圧倒的に男性のほうが多いのです。男性の首には二枚目系だけでも「若男」「源太」「検非違使(けんびし)」「孔明(こうめい)」「文七」などがありますが、女性の場合「娘」「老女形(ふけおやま)」くらいです。年をとってからも男性は「定之進(さだのしん)」「舅」「鬼一(きいち)」「武氏(たけうじ)」などさまざまですが、女性は大雑把に言って「婆(ばば)」ひとつ。悪人、三枚目も含めるとその数は比較になりません。

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文楽この一年(3) 

この一年を振り返るシリーズ、最後は演目の話です。
初春は「七福神宝の入舩」「祇園祭礼信仰記」「傾城恋飛脚」「国姓爺合戦」で寿ぎを。「七福神」はにぎやかですが特に内容があるわけではありません。しかしこういう無内容の演目というのは寿ぎには欠かせないと感じています。理屈ではない、何がどう面白いと分析するのさえいやになるようなものに私は意義を感じることがあります。
思い起こせば、主要部分に代役が出た公演でした。しかしその代役をつとめた豊竹英大夫、豊竹呂勢大夫、桐竹勘十郎の奮闘が嬉しかった公演でもありました。
四月に久々の

    競伊勢物語  日吉丸稚桜

が出ました。
『伊勢』は、「はったい茶」を千歳大夫、切場を住大夫でつなぎ、玉女の有常が大きな柄で見せました。『日吉丸』は津駒大夫・寛治で、玉也の五郎助の奮闘ぶりが思い出されます。
ほかに『勧進帳』と『桂川連理柵』。『勧進帳』は咲大夫に呂勢大夫と南都大夫が挑む構図。改めて咲大夫の大きさを示す結果になったかもしれませんが、両中堅にとって飛躍の場になったとすれば、こういう役割が今後大事になりそうな気もしました。勘十郎の弁慶、和生の富樫、勘弥の義経。いいですね。『桂川』は簔助のお半に勘十郎の長右衛門でしたが、もうまったく互角に近い貫禄を勘十郎が示しました。嶋大夫・綱大夫が「帯屋」でしたが、嶋さんのチャリ場は抱腹絶倒だったようです。

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文楽 この一年(2) 

技芸員さんの世代交代など、もう何年言われ続けてきたことでしょうか。
その中で、

    住大夫 師匠

のいぶし銀の語りは今年も健在でした。
私は50代以降の師匠(現在84歳)を存じ上げているわけですが、本当に長くお元気でご活躍です。
5年くらい前に「90過ぎても語ったはるで、たぶん」とおっしゃる方がありましたが、それはいくらなんでも、と思っていました。しかしなんだか現実味を帯びてきたようにさえ思います。

    綱大夫 師匠

がややご病気がちなのが案ぜられます。それでもここぞという時には義太夫を知り尽くした師匠らしさが客席に響いているようです。

    嶋大夫 師匠

はお元気。お弟子さんや後輩の方々に対してのお稽古もずいぶん熱心にされているようで、これまたかけがえのない存在となっていらっしゃいます。

伊達大夫師匠が亡くなって、あの面白さを受け継いでくださる方の出現が待ち望まれます。
あの「夏祭」の義平次をどなたが引き継がれるのでしょうか? 古怪とさえいわれた師匠の芸風は絶対に失われてはならないと思います。若い相子大夫さんはきっとそういうタイプだろうと想像するのですが、彼に至るまでの間にどなたがあの面白さを?

咲大夫さんは時代物の大柄なもので存在感を誇られ、存在感といえば松香大夫さん。この方も確実にいい位置に来られていると思います。まじめな方ですが、芸としては面白い面もお持ちですし、次の義平次にはこの方などいかがでしょう? 英大夫さんは伊達師匠の代役もあり、弁慶上使や寺子屋などを地方と東京で語られるなど、誰もが期待を寄せています。ますますのご研鑽をお願いします。文字久大夫さんがじりじりと大物になりつつあります。清十郎さんの口上でも堂々と「ひとへに請い願いあげたてまつりまする」をやってのけられました。
それでもまだ中堅世代の魅力が発揮されているとは思えません。師匠方からご覧になると不満も多いのでしょうが、聴衆はそれを受け止める力を持っていると思います。
来年は中堅、若手から大化けする人が5人くらい出てきてほしいものです。

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ベー助登場 

このブログに時々来てくださる若い小学校の先生に

    ベー娘 (べーこ) さん

がいらっしゃいます。
彼女も耳にいささかの障害があり、それでも小学校の普通学級の先生としてバリバリバリバリ働いています。
「ベー娘」というのは「ベートーヴェン娘」の意味で、大学で音楽を専修した(ピアノがうまいだけでなく、管楽器も和太鼓もあれこれおできになるようです)彼女が自らをベートーヴェンになぞらえられたのです。
孤独感と責務の重さに負けそうになりながらも一生懸命働いている彼女の日々は、元祖ベートーヴェンの獅子奮迅ぶりになんら劣るものではありません。小学校では当然合唱の指揮などもされるわけですが、そのうまさは同僚の先生方を圧倒されているようです。

今から200年前の

    1808年12月22日

に初演されたのはベートーヴェンの偉大な二つの交響曲、いわゆる「運命」と「田園」。
当時は「田園」が第5番、「運命」が第6番とされ、演奏順も「田園」が先だったようです。
寒い劇場での長時間の演奏会にお客さんの評判はよくなかったそうですが、今からみればまさに歴史的な夜だったことになります。
「田園」の描写力には感嘆を禁じえません。ピッコロやトロンボーンも含めた多様な楽器の長所を生かした構成は[指揮者]ベートーヴェンのまなざしを感じます。
「運命」には、あの4つのタ・タ・タ・タンという音が全体を支配しながらも闇から希望へと抜け出す強い精神性を感じます。すでに耳の症状が致命的であることを察知していたベートーヴェンの心の中はどんなものだったのかと思いやるばかりです。

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くわい祭り 

クリスマスイブの話題、と行きたいところではありますが、きわめて和風の、しかも地域密着の(要するにと~~ってもローカルな)お話です。
大阪には

    伝統野菜

というものがいろいろあります。

    天王寺蕪(てんのうじかぶら)

    勝間南瓜(こつまなんきん)

    毛馬胡瓜(けまきゅうり)

    田辺大根(たなべだいこん)

などがそれで、さらに私の勤務先の吹田市には

    吹田慈姑(すいたくわい)

というものがあります。あの蜀山人は銅座の役人として大坂で暮らした思い出として

  思い出る 鱧の骨きり すり流し 吹田慈姑 に 天王寺蕪

と詠んでいます。
貝原益軒「大和本草」にも記載があり、古くはなかなかの名物でしたが、一時ほとんどその姿が見られなくなったのです。かろうじて作られていたものを地元の方が復活しようとあれこれ工夫されています。

なにわ野菜
なにわ野菜の数々

そして、昨日吹田市メイシアターで

  第1回 吹田くわい祭り

が催されました。
そして、この中で私どもの大学で活躍する娘人形が

    くわい娘

に任命され、あれこれとお手伝いをさせていただいたわけです。

辞令

辞令用紙
辞令を受けました(笑)

おしごと
さすがに女子大生はおじさまがたに人気があります

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雪 

昨日は天皇誕生日で、今夜はクリスマスイヴ。
今上(とか「当今」とかって最近はあまりいいませんね。要するに、現天皇)とイエス・キリストはほぼお隣同士だったのですね。
私が大学2年生の時、国文科新入生歓迎コンパというのを先輩たちに開いてもらいましたが、その席上で恩師が

    不思議な歌

を歌われたことを覚えています。
北原白秋作詞・中山晋平作曲の「皇太子さまお生れなった」という歌で、

  日の出だ 日の出に 鳴った 鳴った ポーオ ポーオ
  サイレン サイレン ランラン チンゴン
  夜明けの鐘まで 天皇陛下 お喜び
  皆々拍手(かしわで) うれしいな母さん
  皇太子さま お生れなすった


というものです(歌詞の通り、朝の6時39分の誕生だったとか)。
恩師は大正15年生まれで、昭和8年の今上の誕生をかろうじてご存じなわけです。
時に7歳の恩師は学校で習われたのではないかと思うのですが、それをよく覚えていらっしゃったものです。
キリストの誕生といえば今でもクリスチャンの皆様を中心に賛美歌として歌われたりするわけですが、
豊竹英大夫さんの

  ゴスペル・イン・文楽


もありますね。

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文楽 この一年(1) 

授業も終わって、あともうひと仕事で私の年内の責務は終わります。
少し余裕の出たところで、まもなく終わる平成20年を振り返ろうと思います。

昨年末、吉田玉幸さんが亡くなりました。そして、今年は

    吉田文吾さん、竹本伊達大夫さん

が鬼籍に入られました。
文吾さんと玉幸さんは、紋寿さん、一暢さんとともに次代を担うと期待された人形遣いさんでした。ところが、紋寿さんを除いてみなさん若くして亡くなり、世代が一つポンと飛んでしまうような感覚になります。
ただ和生、勘十郎、玉女、玉也、玉輝、清十郎さんなどが安定して、いくらか安堵はしているのです。
太夫陣では、住大夫、綱大夫、嶋大夫さんがご健在。第二世代の咲大夫、松香大夫、英大夫、津駒大夫さんあたりがかなりいいところまできたのでは?(私の場合床の評価はできませんが)。
それに続く人達にも期待がかかりますが、役がなかなか当たらないもどかしさの残る一年でした。
三味線では咲さんに引っ張られつつ、一見優男、実は豪腕・燕三さんの時代ものに磨きがかかってきたのではないでしょうか。

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年賀状を書きながら 

一週間ほど前に年賀状は書き終えましたが、書きながら来年のキャッチフレーズは

    耳はだめでも筆と口

かなと思ったりしています。
この一年よくあちこちでお話をさせていただきました。
初めて行った大阪・北浜の老舗料亭に始まって、大学内での仕事や近隣の市民講座のようなところ、福祉関係ではお役所もあり。
そういうお話をさせていただくたびに、まだもう少し自分にも仕事ができるのではないかという気持ちにさせられることが多いのです。
枯れかけても枯れていない。倒れかけても朽ちていない、と。
それもこれも聴衆の皆様の反応のおかげです。
こんな言葉はありませんが、

    聴衆力

とでもいいたくなります。

また、話はしないまでも文楽人形をもってあちこちにも行きました。その場合はほとんど学生のしゃべることや寸劇の内容は私が考えるので、シナリオ書きもしました。
これもいい勉強になるのです。机に向かってものを書きつつ、役割を果たす学生の顔を思い浮かべながら、どういう具合に盛り上げていこうかなどと考えるのはほとんど芝居の台本を書く楽しさです。
ただ、不本意だったのは専門分野の連載を夏以降休ませていただいていること。これはかなりの準備が必要なので体力的な問題が大きく、年が明けたらまた復活しようと思っています。

けっこう小銭稼ぎしてるね、といわれそうですが、なんのなんの。文楽人形関係への投資でいっぱいいっぱい。残高数千円はクリスマスイブにご苦労様だった学生たちの胃袋に消えていくでしょう。

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暗誦 

私にとってきわめて困難な授業に

    朗読演習

があります。
学生が出す声をきちんと聞いてそれを評価するのが仕事だからです。この授業を設定しようと言い出したのは私なので当初は当たり前のように実施するつもりだったのですが、今となってはほんとうはもう逃げたいのです。

    できません

と言いたいのです。
しかし、我ながらなんと往生際が悪いのでしょうか。受講する学生にしたら、「なんやのん、この先生?」という感じでしょうが、この後期も、

    何とか工夫したい

という思いだけでここまで続けさせてもらいました。
毎回が針の筵で、終わったら「ああ、今日もダメだった」と思うばかり。
ところが、今年の学生は意外なところで反応してくれました。
ラフカディオ・ハーンの「雪女」を私が朗読用に書き換えたものを読ませると、なかなか楽しそうだったのです。
これはいけるかもしれないと図にのった私は、年内最後の課題として芥川龍之介の

    「蜘蛛の糸」

を各自5~6行暗誦して、リレー方式で何も見ずに読んでみようと言ったのです。

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火狐 

『本朝廿四孝』

    狐 火

は面白いです。
三味線のキュンキュンいう音、太夫の醸し出す怪しげな雰囲気、そして何と言っても激しい人形の動き。
たおやかな姫君が激しい情念の炎を燃やして恋しい人を追う幕切れは海外でも理解されるものなのではないのでしょか?
五世清十郎の新しい八重垣姫を9月と11月に堪能した私たちは、20年後の人から見ると歴史的な八重垣姫に立ち会ったことになるのかも知れません。

ただ、清十郎さんにとっては、

    次の八重垣姫

が試金石だろうと思うのです。
よほどしっかりやらないと「清十郎」の評価を下げることにもなりかねません。まあ、こんなこと私が申し上げなくてもご本人は承知していらっしゃるわけですが。

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マンU 

昨夜はガンバ大阪とマンチェスターユナイテッドのサッカーの試合をしっかり見てしまいました。

    高 い

ですね、コーナーからあれだけ鮮やかに得点されると、クラブチームレベルではまだ日本人は小さいと思いました。
「その瞬間」は、地面から屹立した太い幹のけやきのごとき大木が、ぐいっと伸び上がるようにボールを捕らえ、しなやかにゴールに投げ入れる。とても逆らえない自然の脅威にすら見えました。

こういうチームがしのぎを削っているヨーロッパのサッカーが強いのは当たり前だと感じました。かつてはブラジルなど南米が強かったわけですが、今年は最終ランキングでスペインが1位になったようにヨーロッパの力はすばらしいもののようです。

圧巻だったのは、ガンバ山崎が1点返した直後の得点。あっという間にルーニー、フレッチャー、ルーニーと3点取ってしまいました。

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公開講座終了 

一昨日、本年度の公開講座の私の担当分がすべて終了しました。
この一年、と申しましても回数としては16回でしたが、読み続けたのは

    伊勢物語

でした。
受講者の皆様には物語のすばらしさに反するつまらない話だったかもしれませんが、私自身はとても面白かったのです。
これまで気付かずに読んでいたところもあり、勉強にもなりました。
この時間の一番初めに

    伊勢物語は面白いのでしょうか?

と受講者の皆様に問いかけておきました。
私自身初めて自分の意志(高校の授業としてではなく)で読んだ古典文学がこの作品だったこともあって、当たり前のように面白いと思っていたのですが、大学生の頃、ふと「伊勢物語って面白いんだろうか?」と疑問を持ったことがあるのです。
もちろん面白いのですが、そんな想い出があるためにあえて問いかけをしてみたのです。
はたして何人の方が「面白い」と感じてくださったことでしょうか?
結局初段から第23段まで行きました。つまり「井筒」の段です。途中には紀有常の話もありましたので、文楽の

    競伊勢物語

のことを申し上げたのですが、あそこに出てくるお姫様は「井筒姫」でした。
そのほか、謡曲の「井筒」はもちろん、近松門左衛門作

    井筒業平河内通(いづつなりひらかわちがよい)

    心中重井筒(しんじゅうかさねいづつ)

についても若干申し上げました。
この作品の持つエネルギーはすばらしいですね。

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「大入り!」賛江 

文楽ブログの姉御的存在である

    大入り!文楽手帖

さんがひとまず休止されるそうです。
私が初めて文楽関係のブログを見たのが「大入り!」さんだったのです。
文楽ブログ名物といってよいような

    お園 さん

    ツチ子大夫 さん

の名コンビに笑わせていただいたり感心させられたり、ほんとうにいろいろ楽しませていただきました。決して大げさではなく、憧れのブログでした。
ブログの関係というのは実際に会わないまま続くこともあるのですが、私がブログ仲間ではじめてお目にかかったのもやはりお園さんでした(国立文楽劇場にて)。あのときの衝撃(こちら)は今も忘れられません! 思わず私は

  「大入り! 文楽手帖」の熱血リポーター
  平成の杉山其日庵
  21世紀の藤田嗣治


とご紹介したのでありました。

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東京は千秋楽 

今日、東京公演は

    千秋楽

を迎えます。
短い期間ではありましたが、みなさまご苦労様でした。
各ブログでご感想も書かれていますし、個人的にいろいろお教えくださったかたもあり、行けなかった私はかろうじて雰囲気だけを味わわせていただきました。
まだまだご感想はお待ちしていますので、何かありましたらよろしくお願い致します。

そうそう、ある方から

    字幕が変わった

というお知らせをいただきました。
もちろん、いい意味で変わった、ということです。
国立小劇場は文楽には適当な大きさの劇場ですが、どうしてもその分大阪よりも窮屈です。もともと字幕など考慮して設計されているわけではありませんから、見にくかったのは事実です。しかし今回字の太さがよくなっていたと教えていただきました。
国立劇場のみなさんの少しでもよくしようというお考えが実を結んでいるわけです。今後もさらに改良を重ねてくださいますように。

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「八陣」の物足りなさ 

文楽十一月公演は豊松清十郎襲名披露という慶事が劇場中に香っていました。
その一方で私は

    八陣守護城

の上演をかなり楽しみにしていました。
何しろ久しぶりですから、どんな話だったか思い出すことから(笑)始めねばなりませんでした。
前回の上演では「門前」「毒酒」「浪花入江」「早討」「本城」と並んでいました。今回はその中から

    「門前」と「毒酒」はカット

されていました。
こうして見ると、仕込がないためにどうも「本城」でいきなり盛り上がる感じがしてしまい、終わってからの印象もなんとなくぼんやりした感じがしないでもなかったのです。

なぜ正清が健康でいるのがそんなに変なのか、なるほどプログラムを見れば理屈では理解できます。しかし、やはり「毒酒」目に焼き付けておいてからの「浪花入江」はまた格別ではなかったかと思えたのです。

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極月半ばの・・・ 

今年もこの日がやってまいりました。

    十二月十四日

いつも申しますように暦が違いますから、西暦で言うとこの日はもう翌年、つまり1703年になっているわけです。
吉良上野介の没年は、

    1702年

と表記されることが多いのですが、厳密に西暦で言うなら1703年1月30日ということになります。

この間の水曜日(10日)に「日本文化と歴史」という授業で

    忠臣蔵の美学

という話をしました。
いわゆる「忠臣蔵事件」とはどういうものなのか、どういう場所でどんな出来事が繰り広げられたのか、それを演劇の世界はどのように受け止めてどのような表現をしたのかなどなど。

しかし今「忠臣蔵」という言葉を知っている学生は意外に少ないのです。

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春は千本桜 

来年の話です。
四月で国立文楽劇場は25周年を迎えるそうです。
へ~っ、もうそんなに・・・。そういえばあの時、私は20代でしたよ!
そして今回の上演演目はあの時とまったく同じ

    寿式三番叟

    義経千本桜

だそうですね。
文字(住)の翁で始まって、津大夫・団七の「大物」、越路・清治の「すしや」、南部らの「道行」に織(綱)・燕三の「川連館」。
玉男の知盛と権太、先代勘十郎の狐忠信、簑助の静御前と弥助、文雀の弥左衛門。
先代清十郎が初日途中までお里を持たれ、代役は一暢。
当代勘十郎、清十郎はまだ亀井六郎、入江丹蔵でした。

ありありと思い出します。

プログラム

プログラム2

プログラム3
いずれも昭和59年4月公演プログラムより

プログラム3
チケットと床本とアンケート
 アンケートの商品は
  松賞 北海道旅行特別参加資格証
  竹賞 北海道特産品=ホワイトチョコ、ニポポ人形、木彫熊など
  空の旅賞 特製スカーフ、エプロン、キーホルダー、ボールペンなど 
でした。

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お駒(3) 

話を整理してみます。

萩原家には勝鬨(かちどき)という家宝の茶入れがありました。
ところが、萩原千草之助が吉原の遊女・十六夜に夢中になるうちにこの茶入れを喜蔵や丈八に奪われます。
尾花才三郎の父は萩原家の家老。その息子才三郎に茶入れ探索を命じます。腰元お駒は実家に戻り、それぞれ町人として暮らしつつも茶入れの詮議を心に掛けています。

とまあ、ここまでが「城木屋」の前提ですね。

で、城木屋は家が傾きかけていて、なんと、あの喜蔵がお駒目当てに金を融資する。
茶入れとお駒というふたつの宝物を手にしようというわけです。
逆に言うと、二つの問題の解決が喜蔵の婿入りによって迫ってきます。

  悪の勝利か、一気の解決か

解決のためにはきっかけが必要です。それはお駒が茶入れの犯人を喜蔵と知る瞬間の演出ではないでしょうか? 茶入れは丈八の手に渡りますから、それ以前に喜蔵が茶入れを持っていることを何らかの形でお駒が察するように見せる必要がありそうです。
それが丈八の手に渡ったことを知らずにお駒は喜蔵の周辺を探し回りそれを見つけた喜蔵がお駒に襲いかかろうとして、誤ってお駒は喜蔵をあやめてしまう。そんな感じでしょうか。

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文楽・超入門(10) 

久しぶりの超入門です。忘れてたんだろう、って? はい、実はそうなんです(笑)。

不思議ですよね。文楽人形の三人遣い。
よくぞあんなことを考えたものです。

主遣い・・・左手で人形の首を支える「胴串(どぐし)」を持ち、
       右手は人形の右手を操作する。全体の動きの指
       令を出す。

主遣いの左手
↑胴串を持つ主遣いの左手

主遣いの右手
↑人形の右手を持つ主遣いの右手

左遣い・・・右手で「差し金」と呼ばれるものを持ち、人形の
       左手を操作する。あわせて左手で人形を支え
       たり、小道具の出し入れをしたり、時には人形
       の右手を主遣いから受け取って担当することも
       ある。

左遣い
↑差し金を持つ左遣いの右手

足遣い・・・人形の足を操作する。女の人形には原則的に
       足はなく、着物の裾を持って足の動きを見せる。

というのが役割ですが、こんなことを考えた人はたいしたものだと思います。
三人遣いの前提として、人形にさまざまな仕掛けが工夫されたことは無視できません。
口が開いたり、目を閉じたり、さらには目が左右に動いたり。
そういう過程を経て、どうやら吉田文三郎という人を中心に三人遣いが考えられたようです。

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お駒(2) 

この作品は

  どこかで聞いたような話

になっています。

いわば

  「失われた宝物とそれによる沈淪と苦難」
  「宝物の奪還とそれゆえの危機」

というパターンで構成されます。『伊達娘恋緋鹿子』などと似ていますね。お駒の父がお七の話を語って聞かせるのもこういう共通点があるからです。
ところが、今の上演では「失われた宝物(この場合は茶入れ)」の話がはっきりせず、はじめて見る人にはやや分かりにくい面があるのではないでしょうか。
文楽の上演はいわゆる「見取り」の形式が多く、話の前提は何らかの形で知識として持っていなければ分かりにくいことがある、ということが多いわけです。

イヤホンガイドでは詳しく解説がおこなわれているのでしょうか?
わかりにくいといえば、お駒は「城木屋」の段切で帯をぎゅっと締めなおして、奥に向かって歩みを進めますが、一体彼女は何をしに行くのでしょう?

現在の上演では

  喜蔵を殺しに行く

ということになっており、人形遣いさんもそういう思い入れで遣っています。
しかし、いくら丈八に刷り込まれたとはいえ、殺人に行くというのはずいぶん飛躍があります。

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年賀状を書く 付320,000 

なかなかやめられない習慣が

    年賀状

です。
この時期は喪中葉書が届くのがなんとなく寂しいものですね。
今年は文吾師匠、伊達大夫師匠が亡くなりました。
他にも技芸員さんの親御さんが亡くなるということもあるわけで、同世代の技芸員さんからそういうお知らせをいただくと身につまされます。

文楽の方は丁寧ですから、たくさん年賀状を書かれるのだろうと思います。
絵心のある方は絵を入れられますし、ご自身の舞台写真を入れられる方もあります。
芸の奥義について触れられる方もあれば、その奥深さに悩む思いを添えられる方もあります。
中には、ぱっと見たらとても技芸員さんとは思えないような

    可愛い年賀状

もあります(笑)。

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お駒(1) 

お駒・才三郎の

    恋娘昔八丈

は初演当時大変な人気を誇ったようです。「そりやきこえませぬ才三さん」のクドキは誰もが愛する名フレーズ。ほとんど流行歌のようなものだったのです。

十一月大阪公演では長らく親しんできた

    簑助のお駒

ではなく、そのお弟子さんたちによる上演とあって、大変興味深いものでした。
簑二郎・勘弥という研修同期生(※12月9日・訂正 勘弥さんは文楽研修2期生、簑二郎さんは3期生です。まゆみこさんからご指摘いただきました)による静かな火花が散らされ、相手役の和生さんのきちんとした二枚目の好演もあって、私には大変好ましい上演でした。

日程の都合で勘弥さんのお駒を見る回数が多かったのです。最初はぎこちなくお駒の人物像が見えなかったのですが、千秋楽では今彼女が何を考えているのかまでくっきり描かれるに至り、これは勘弥さん一人の手柄ではなく、簑二郎さんとともに3週間にわたって築き上げてきた成果だと思っています。確認していないのですが、お互いが左遣いをなさっていたのではなかったのでしょうか?

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紅葉舞う道を 

十二月も一週間が経ち、木々は葉を落すのに忙しくなっています。

DSC01737.jpg
私の研究室から見た箕面の山


誰も彼もが

    忙しい

と口にする昨今で、自分だけが大変なのではない、と思いながら皆さん年末の仕上げに頑張っていらっしゃるようです。そのあわただしさを助長するように落ち葉が街に積もっているわけです。

東京の国立劇場周辺は紅葉はいかがなのでしょう?ありましたっけ?皇居のほうに出ないとなかったのかな?
13日間という短い公演期間で、これまたなんだかあわただしく感じられなくもないのです。

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道真の怒り 

私の住まいから勤務先にかけて、昨日は朝から激しい雷雨でした。
前が見えないくらい、といっても過言ではありません。

雷の好きな人はめったにいないと思うのですが、その理由は主に音と光でしょう。

    危険を知らせてくれる信号

と思えば雷鳴も稲妻もありがたいものですが、現実的にはあのピカピカドカンを目の当たりにするとそれどころではありません。
ところが私の場合はほとんど雷鳴は関係ありません。
おかげさまで穏やかな気持ちでいられるのです(笑)。
しかし考えようによってはこれは恐ろしい話です。たいていのかたは雷鳴と稲妻の時間差で雷の位置の見当をつけます。私にはそれが出来ないからです。

ある日突然、天神様の怒りに触れたらどうしよう、と考えると、日ごろの不勉強が思い浮かんでいっそう

    学問の神様の祟り

を恐れるのです。

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今年の忘年会 

12月も5日になりました。
あっという間の一年でした。特に毎年感じるのは後半が短いのです。
皆様は年内の仕事の整理はつつがなくできそうでしょうか。
大学の授業は、年内の予習はほぼ終えました。あとは体調次第です。休むわけにはいかないのです。
私はこの一年、後半はほんとうに勉強できませんでした。書かなければならない原稿も最低限で終わってしまいました。

さて、皆様は

    忘年会

がおありでしょうね。
なつかしいです。私は、忘年会というものにはもう何年も参加していないのです。
以前は十二月の東京公演で必ず1回。関西(主に大阪)で数回ありましたが。

おそらく最後に出席したのは雑誌「上方芸能」の「望年会」(ここではこの字を書くのです)だと思います。
講談の師匠(先生、っていうのかな)、踊りの師匠、評論家、研究者、マスコミ関係者などがいらしていてなかなか楽しいものでした。

職場では現在の学部ができた平成16年から一度も参加していません。そもそも実施されているのかどうかもよく知らないのです。
私が参加しないことは親しい人は知ってくれていますので、誘わないようにしてくれているのかもしれません。
その心遣いは、残念な反面、実はとてもありがたいのです。
断るのはつらいですし、参加はできませんし。

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師走の東京 

本日、文楽東京公演、文楽鑑賞教室が始まります。

文楽公演は

源平布引滝 義賢館・矢橋・竹生島遊覧・九郎助内

鑑賞教室は

二人三番叟
解説
菅原伝授手習鑑 寺入り・寺子屋

というプログラムですね。「布引」は千歳、文字久、呂勢、富助、錦糸、紋豊、和生、勘十郎、玉女らを軸にしたメンバー。「義賢館」が楽しみです。
鑑賞教室は三番叟がフレッシュ! 松王丸は勘十郎・玉女、千代は紋豊・清十郎です。豪華ではありますが、こういう公演ではいっそ文司、勘緑らの世代を使うのもいいと思うのですが。
寺子屋は英、津駒。このあたりの太夫さんはもう本公演でもこういう場を語られるくらいでお願いしたいものです。

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知盛の玉男師匠 

昨日は快晴。まったく雲ひとつない好天でした。
勤務先の目の前の街路樹の色とりどりの「もみじ」が目に痛いくらいです。
夕方になると

  月と木星と金星

がかなり近くに見えて、とても愛らしい感じがします。

それなのに、それなのに、昨日も朝から仕事に追われて四苦八苦していました。
まったくもってどこかに時間どろぼうがいるのではないかと真剣に疑ってしまいます。
そんなばたばたした時間に一通のメールが届きました。
直接お目にかかったことがない方なのですが、関東在住の文楽ファンの女性からでした。

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八重垣姫 

文楽の数あるお姫様の中でも八重垣姫は静から動へ、人間から狐へと変化のある役で大変面白い人物です。
彼女は婚約者の勝頼を一途に思って絵像に描かせています。ところがその勝頼が切腹したと聞いて

  回向せうとてお姿を

  絵には描かしはせぬものを


と嘆いています。
ところが、部屋の外でなにやら泣き声がするのでのぞいてみると濡衣と話している若い男の姿が。
その姿ときたら絵像にそっくり!
思わず走り出してすがり付いてしまいます。
ところが自分は勝頼ではない、と男に言われ、恥ずかしい思いをしながらもそばにいる濡衣に「この人との仲を取り持って!」といきなり頼んだりします。

濡れ衣には思惑があるため、この願いを叶えようというのですが、それにしてもこのお姫様、今の今まで勝頼のことを思ってないていたのに、そんなにすぐに別の男を好きになるのでしょうか?

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