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八重垣姫 

文楽の数あるお姫様の中でも八重垣姫は静から動へ、人間から狐へと変化のある役で大変面白い人物です。
彼女は婚約者の勝頼を一途に思って絵像に描かせています。ところがその勝頼が切腹したと聞いて

  回向せうとてお姿を

  絵には描かしはせぬものを


と嘆いています。
ところが、部屋の外でなにやら泣き声がするのでのぞいてみると濡衣と話している若い男の姿が。
その姿ときたら絵像にそっくり!
思わず走り出してすがり付いてしまいます。
ところが自分は勝頼ではない、と男に言われ、恥ずかしい思いをしながらもそばにいる濡衣に「この人との仲を取り持って!」といきなり頼んだりします。

濡れ衣には思惑があるため、この願いを叶えようというのですが、それにしてもこのお姫様、今の今まで勝頼のことを思ってないていたのに、そんなにすぐに別の男を好きになるのでしょうか?

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と思ったところで、いやいや、それは違うだろう、と感じたりするわけです。
彼女はこの男を心の深層では

    勝頼本人である

と見抜いてしまっている。本人すらそのことに気付いていないかもしれない、場合によっては作者でさえ気付いていないかもしれないけれども、それはもう確信といってよいもので、事実この男は勝頼であるわけです。
まだ十代のうぶなお嬢さんでありながら、いや、そういうお嬢さんだからこそ鋭い直感で見抜いているのだと思えてなりません。
そう考えると、八重垣姫は決して浮気な女でもなんでもないのです。
そういう、透徹した心を持つからこそ、「狐火」で諏訪法性の兜に取り憑いた狐が彼女にも乗り移り、諏訪湖を一気に掛けていく力になるのだと感じます。

  まことや、当国諏訪明神は狐をもつてつかはしめと聞きつるが

  明神の神体に等しき兜なれば八百八狐付添ひて守護する奇瑞に疑ひなし


なんていうことばはもう尋常のものではありません。

「本朝廿四孝」はなかなか入り組んだ難しい話ですがここに至ってもはや理屈抜きの面白さがあります。やはり名作、そして八重垣姫はスーパーヒロインだと思います。

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コメント

憧れの勝頼

11月公演の八重垣姫、可愛かったです。絵姿の勝頼に憧れ続けて、その婚約者が亡くなったと聞けば、その絵姿と自分だけの世界にこもってしまうような一途なお姫様なのですよね。もう頭の中が勝頼の面影でいっぱいなのだと思うと簑作をひと目見たときの悩乱ぶりも理解できます。襖の隙間から、簑作の姿をのぞくところも天真爛漫なお姫様ぶりで可愛かったですね。暴走気味ではあるものの、見ていてスカッとするお姫様ではあります。

♪やなぎさん

ご感想ありがとうございます。
簑助師匠とは違った味があって、ぜひ清十郎さんはこういう形で今後も演じてほしいと思うのです。
また簑助さんの八重垣姫もお弟子さんが継いでくださればとも思います。

一途な娘ならではの心眼

>藤十郎センセ
少女が、ピュアな恋によって透徹した目を取得する奇跡が胸に迫ります。このような物語に触れられる幸福を喜ばずにはいられません。よいお話、ありがとうございました。

♪おとみさん

恋は失うものであり獲得するものであり。
恋は人を幼くしたり大人にしたり。
そして恋はものを見えなくしたり透徹した目を養ったり。
恋の八重垣を越えて少女は成長してゆくのですね。

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