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暗誦 

私にとってきわめて困難な授業に

    朗読演習

があります。
学生が出す声をきちんと聞いてそれを評価するのが仕事だからです。この授業を設定しようと言い出したのは私なので当初は当たり前のように実施するつもりだったのですが、今となってはほんとうはもう逃げたいのです。

    できません

と言いたいのです。
しかし、我ながらなんと往生際が悪いのでしょうか。受講する学生にしたら、「なんやのん、この先生?」という感じでしょうが、この後期も、

    何とか工夫したい

という思いだけでここまで続けさせてもらいました。
毎回が針の筵で、終わったら「ああ、今日もダメだった」と思うばかり。
ところが、今年の学生は意外なところで反応してくれました。
ラフカディオ・ハーンの「雪女」を私が朗読用に書き換えたものを読ませると、なかなか楽しそうだったのです。
これはいけるかもしれないと図にのった私は、年内最後の課題として芥川龍之介の

    「蜘蛛の糸」

を各自5~6行暗誦して、リレー方式で何も見ずに読んでみようと言ったのです。

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私にすればやけっぱちのような提案で、受講しているのは専門の違う学生ばかりですから、たちどころに

    ブーイング

が返ってくるだろうと思いました。
そうすると、「では私はここを読みます!」「私はその次!」と、どんどん決まっていくのです。
そして、とりあえず5分ほど各自で暗誦しよう、というと、一生懸命覚えています。
「何なの、このやる気満々の態度は?」
と私は茫然。
「では聞いて欲しい人、いますか?」と、これまた「そんな学生、いるわけないよな」と思いながら言うと、さっと手が上がります。

    「えっ、ホントに?」

という言葉をぐっと飲み込んで、平然とした雰囲気を装っていると、きちんと読んでいました。注意点を言うとメモまでしています。

どうやら、暗誦というのが新鮮だったようで、読めたら達成感があり、読めないと悔しいという思いも抱いたようです。
暗誦というのは実に単純なものですが、かつて高校1年の冬休みの宿題といえば

    百人一首の暗誦

でした。百人一首に限らず古典の好きだった私は、なんでも丸暗記をするのが好きでした(苦手でしたけど)。
「蜘蛛の糸」は名文です。あの作品の第一節を暗誦するだけで文章がうまくなりそうな気がするくらいです。そういう芥川の力(作品発表当時26歳)にも助けられて、学生は乗っています。
また学生から授業の方法を教わってしまいました。
最終的に22日にリレー朗読会を催す予定です。

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コメント

名文

朗読ブームが静に広がっているようです。藤十郎さんが文楽評を書かれている「上方芸能」で、朗読を特集したらすぐに完売したそうです。
芥川龍之介の、無駄が一切ない文章は名文中の名文ですね。10年以上も前になりますが、小説家・宮本輝さんの講演を聴いたことがあります。宮本さんは、自分が文章を書くあたって参考にした10人の作家をあげました。一人目が芥川龍之介。「くもの糸」第一節を暗誦されました。あとの九人が誰だったか忘れました(笑)。

♪やたけたの熊さん

私がこういう授業を始めたのは短大教員のときですからもう7,8年前になるでしょうか。「国文演習」という、いわば「卒業研究」のような授業があったのですが、文学研究の真似事をするのではなく、学生らしい自己表現をするためにと思って始めたのです。
宮本さん、まったく同じ考えなのですね! びっくりしました。
熊さんは有名人に出会うことで有名な(?)人ですから、今度宮本さんに会われたら「同じこと考えてる人がいてまっせ」とお伝えください。

暗誦

あとの九人を思い出しているのですが…
吉野せい「洟をたらした神」、柳田國男「山の人生」(「遠野物語」のB面)、山本周五郎「須磨寺附近」。あとは出てきません…。
宮本さんは、それら作品のいちばん好きなページは何度も読み返しているのですっかり暗誦できます、とおっしゃってました。藤十郎さんのお話をお聴きして「宮本さんと同じ!」とびっくりしました。

♪やたけたの熊さん

芥川以外のものもまたいいですね。けっして宮本さんにおべんちゃらをするわけではないのですが、私は宮本さんの作品は好きで特にその文章には感心しています。
「眉墨」のような短編も「ドナウの旅人」のような長編もみごとだと思います。「蛍川」なんて文章で読ませます。そうかぁ、宮本さんとは似た感性があったのかな。
でも文章力にこれだけの差があるのは、努力と才能の違いですね。
ますます宮本さんが好きになりました。
明日、学生にこの話をさせていただきます。

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