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文楽この一年(3) 

この一年を振り返るシリーズ、最後は演目の話です。
初春は「七福神宝の入舩」「祇園祭礼信仰記」「傾城恋飛脚」「国姓爺合戦」で寿ぎを。「七福神」はにぎやかですが特に内容があるわけではありません。しかしこういう無内容の演目というのは寿ぎには欠かせないと感じています。理屈ではない、何がどう面白いと分析するのさえいやになるようなものに私は意義を感じることがあります。
思い起こせば、主要部分に代役が出た公演でした。しかしその代役をつとめた豊竹英大夫、豊竹呂勢大夫、桐竹勘十郎の奮闘が嬉しかった公演でもありました。
四月に久々の

    競伊勢物語  日吉丸稚桜

が出ました。
『伊勢』は、「はったい茶」を千歳大夫、切場を住大夫でつなぎ、玉女の有常が大きな柄で見せました。『日吉丸』は津駒大夫・寛治で、玉也の五郎助の奮闘ぶりが思い出されます。
ほかに『勧進帳』と『桂川連理柵』。『勧進帳』は咲大夫に呂勢大夫と南都大夫が挑む構図。改めて咲大夫の大きさを示す結果になったかもしれませんが、両中堅にとって飛躍の場になったとすれば、こういう役割が今後大事になりそうな気もしました。勘十郎の弁慶、和生の富樫、勘弥の義経。いいですね。『桂川』は簔助のお半に勘十郎の長右衛門でしたが、もうまったく互角に近い貫禄を勘十郎が示しました。嶋大夫・綱大夫が「帯屋」でしたが、嶋さんのチャリ場は抱腹絶倒だったようです。

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夏は『西遊記』『五十年忌歌念仏』『鑓の権三重帷子』『国言詢音頭』。どうも消化不良の建て方だったような気がします。中では『国言』が和生の色気や玉女の力感などを住大夫の力で見せてくれたかな、と思いましたが。子供たちが喜ぶ第一部ではありましたが、もっと喜ばせる方法はあるだろうと思います。

十一月は九月に続いての清十郎襲名披露が『本朝廿四孝』でおこなわれました。ほかに『靱猿』『恋娘昔八丈』『双蝶々曲輪日記』そして久々の

    八陣守護城

でした。久々だけに『八陣』はもう少し丁寧に見せてもいいと感じましたが、この一年、咲大夫の時代物の表現を聴かれた皆さんはこの人の「切」の称号をまだ不要と思われるのでしょうか? 文司の大きさに拍手が沸き、玉女も立ち回りも団七走りもない座った姿勢の多い役ながら幅のある男性美を感じさせました。
『靱猿』は大名と太郎冠者と猿曳が、さながら政治家と官僚と庶民のようで、唯一言葉の通じない猿が一番雄弁に真実を語るというのが痛快でした。『恋娘』は第二世代の人形遣いの活躍が嬉しかったのですが、「城木屋」の段切が端折られた感じになって、このままでいいのか疑問もなしとしませんでした。『双蝶々』はさすがに名作です。

東京公演では二月に清治率いる「道行初音旅」があり、これは長年文楽ファンの待ち望んでいた演奏ではなかったかと推察します。五月に『狐と笛吹き』の再演がありましたが、評判は芳しくなかったようです。九月は清十郎襲名もさることながら『奥州安達原』で勘十郎の岩手が話題になりました。

さて、皆様は

    今年のベストワン

を選ぶとすればなんでしょうか?
独断でけっこう(というか独断こそ重要)ですので教えていただければ幸いです。

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コメント

狐におぼれた二月

こうして今年一月からの公演演目を見ると、とても遠い出来事のように感じます(見過ぎかも?)ずっと見たかった「国姓爺合戦」も見られましたし、なかなか上演されないような演目も今年は見られて楽しい一年でした。しかし、一番印象に残っているのは二月の「義経千本桜」です。曲も素晴らしいですし、人形も人の心を打つ演技をしてくれていました。そして、お客さんから万雷の拍手でおくられる狐にジーンとさせられて、思いきり溺れさせていただいた公演です。

ベストワン

こういうの、最初にコメントしにくいんですよね(笑)。
それでは「桂川連理柵」に一票です。石部宿屋の段からでしたので、お半と長右衛門の気持ちがよく分かりました。でも女子中学生に恋をする長右衛門はいけません。私はやっぱりそれなりに世間を知った…話題がそれてしまいそうになりました。失礼しました。
床では嶋大夫さんのおとせの憎手口に、観客から笑いが起こりました。また喜一郎さんが健闘されました。
人形は勘十郎さんの安定感が群を抜き、またお茶目な勘禄さんの長吉に笑いました。
やはりチャリ場と悲劇とが合わさった作品は、変化があって飽きませんね。

♪やなぎさん

やなぎさんは熱心に「見過ぎ」ていらっしゃるようですが、やはり東京公演ではあの「千本」は特筆ものでした。道行の弾き出しを聴くだけでも価値のある名作ですね。
珍しい演目もいいですよね。二月には「敵討襤褸錦」が出ますね。これは大阪ではトンと上演されていません。私も行くつもりです。

♪やたけたの熊さん

たしかに「桂川」は飽きない作品ですね。私は長右衛門がかつての過ちに思いを致して狂乱するかのように桂川に向かう段切がたまりません。
私も女子大に勤めてはいますが、女子大生には女性としてはほぼ関心がありません(笑)。やはりそれなりに世間を知った・・・あ、話がそれそうになりました。

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