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10年 

十年ひと昔などと申しますが、長いような短いような時間でございます(落語のマクラみたいですが)。
平成11年の夏には、

    桂川連理柵

が上演されたのです。私はその初日に行きました。
お半は大津宿屋にも出てきますが、ここは黒衣、ナイショですが(そうでもないか)おそらく簑太郎さんが遣っていらしたと思います。
そしていよいよ「帯屋」。ここはもちろん出遣い。下駄の音とともに現れたのは吉田簑助師匠の遣われるお半です。

    万雷の拍手

とはこういうものかと思う、すさまじい音が劇場内に響きわたり、まったく止む気配がありません。長く、長く続いた拍手でした。その音は割れんばかりに大きいのに、不思議なことに静けさすら感じる、そうです、まさに時間が止まる、そんな感じでした。
身体をゆすって拍手する人、泣きながら手を打つ人、隣の人の肩をたたいて喜び合う人、客席は思い思いにその感動に身を委ねていたのです。
こんな瞬間にはもう二度と出会えないだろうと思うほどの感激を、私もまた味わっていました。
この感激・・・前年の秋に倒れられた簑助師匠が、懸命のリハビリを超えて9か月ぶりに帰ってこられたのでした。

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私はいつもの習慣で、そのときの様子もノートにあわててメモしていました。
そんなメモなどなんのためでもない、ただ自分の感想を記録しておきたいためにひそかに書いていたものです。
ところが、この公演から毎日新聞の宮辻政夫さんが「上方芸能」誌の文楽評をおやめになったのでした。残念だと思っていたところへ当時の編集長から手紙が届きました。

  あなたが跡を継ぎなさい

と。執拗に抵抗してお断りを繰り返したのですが、編集長と編集次長(現編集長)の色香に迷った(ウソです)私は、ついに引き受けてしまったのでした。
まさかあのノートがネタ帳になるとは思いも寄らなかったのです。
その年の「上方芸能」の望年会(わざとこの字を当てるのです)では当時の代表(現発行人)の木津川先生からも「しっかりやるように」と声をかけていただき、5年は続ける、とひそかに覚悟を決めたのでした。

  あれから10年

です。
耳の病気というアクシデントに見舞われ、もうだめだと思いながらついに10年この仕事を続けさせていただきました。これはもう、まったく雑誌スタッフの皆様のご寛容と読者の皆様の励ましのお言葉に支えられてのものでした。私なりの主張があってのことだったのですが、甘い、甘いと言われてここまでやってきました。
その10周年の記事を相棒の先生と一緒に書き終えました。
みなさま、ありがとうございました。

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コメント

15年記念

藤十郎さんが執筆を始められたのが、蓑助師匠復活の直後でしたか・・・。現編集長から「こんどの文楽評、期待してくださいね」と言われたことを思い出します。もちろん期待以上に、文楽ファンにとってとても心温まる評論です。
10年といわず15年をお待ちしています。記念になにか?ですか。文楽劇場から歩いて30秒の季節料理「R」で、記念祝賀会をさせていただきます。もちろん編集部の色香ムンムンの方々もお誘いします。

♪やたけたの熊さん

後日記事にしようと思うのですが、「○○大夫がいい」とか「人形の■■はもっと頑張って欲しい 」とか、こういうのでは評にならないわけです。もっとも的確な言葉にする難しさをいつも噛み締めています。
季節料理Rでは、ビール一杯おごって、呂大夫さんから隠れた太夫さんの名前を教わらないと……。

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♪管理人のみ……さん

ありがとうございます。せっかくほめていただいたのに、非公開とは残念です。(笑)

もう10年!

藤十郎さんが評論をお書きになる、と伺ったのはつい最近の話だったのがもう10年、ですか。
私が文楽を観始めた、というのも10年目でしたね。
九州へ帰ってしまった、という事情が有り、残念ながら10年の間藤十郎さんの評論を読んだのは数回しかなのです。非常に申し訳有りません。
まとめて出版して頂いたら非常に有り難いと思います。

15周年記念パーティーは馳せ参じます。

♪しろくまさん

早いですね。
しろくまさんの文楽体験とほぼ重なるわけですね。
博多座で売ってくれればいいのですが、売れないでしょうね(笑)。
なお、15周年はありえないと思います(笑)。

しろくま世話人

しろくまさん。
「R」での15周年記念パーティでは、しろくまさんは世話人の一人に既に決定していますから(笑)。

やたけたの熊代表

熊代表、了解です。
恐らく11月公演の然るべき時期ですね。(笑)
予定空けときます。

♪やたけたの熊さん&しろくまさん

すごいですね、5年後の催しの代表と世話人が決まってるなんて。
オリンピックかワールドカップ並ですね。

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