ひもじい
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兄の長男が幼い頃、私は大学生でした。兄嫁に次の子が産まれたので家の中が一時混乱して、誰がこの長男の世話をするのか、連絡が不足した日がありました。
兄は「早出」があって、5時過ぎに出勤(私は聞いていませんでした)。私はうっかり寝過ごして9時頃に家を出ようとしたら、ちょうどその長男が起きてきました。そして、でかけようとする私を見て縋り付き、「お兄ちゃん(私のこと)、お留守番は大丈夫だけど
何か食べさせて!」
とひもじそうにいうのです。あまりにかわいそうで、私は大学に行くのをやめて、せっせと何かを作ってやりました(目玉焼き程度でしょうが)。
私も子供のころ、なんだか忘れましたが、
ひもじい
気持ちになった日の周囲の風景を思い出すことがあります。
↑応援よろしく!
『伽羅先代萩』の若殿、鶴喜代君が空腹に耐え兼ねています。政岡の息子千松は
おなかがすいても
ひもじうない
といいますが、もちろん実際は空腹でたまりません。
政岡は茶道具を用いて飯を炊きつつ、ついさっき沖の井が持ってきた膳の飯を室内犬の狆(チン)に食べさせます。
狆は喜んで食べ、鶴喜代君は思わず言います。
俺は(おりや)
あの狆になりたい
と。その瞬間、客席は
ハハハハ
と、一瞬ながら笑いのツボ。
しかし、この笑いは何だか違うな、と、ずっと思い続けています。
面白いのだから、素直に笑えばいい、というもっともな考え方もありそうです。観客・聴衆はお勉強に来てるんじゃない、文楽は大衆芸能なんだし…。
でも、私は、お勉強に行ったことはないつもりですし、大衆の一人として楽しみたいだけなのですが、今でも立ち止まってしまいます。
これ以上書くと長くなりますので、腰折のみ残して、また明日。
あの狆になりたいといふ
鶴喜代を
2010年観客笑ふ
※13日エントリー時点で大きな誤りを書いておりました。14日に一部修正しました。
- [2010/01/13 00:00]
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コメント
はじめまして。ひこにゃんと申します。いつもブログ拝見いたしております。
先生(先生ですよね?)のお人柄そのままに、優しい、心が温かくなる内容で、しかも日々更新(お暇なのかな?)、楽しみにしております。
さて、本日の話題とは離れますが、「文楽研修一日体験」という催しをご存知でしょうか?これは研修生に応募する人材を一人でも多く、という願いから生まれた催しで、内容は三業の解説(なんと90分たっぷり!)、現在勉強中の研修生との質疑応答、そしてその後「壺坂」の舞台を客席でご覧戴くという、豪華(?)なラインナップです。実はすでに11日に開催されたのですが、当日参加されたのは、二組だけでした。11月から劇場ロビーにチラシも置いてあったのですが、周知できなかった様で。別に劇場といたしましては、「この催しに参加いただいたからには、絶対に研修生として応募していただきます!」と言うつもりは御座いません。これをきっかけに、文楽の世界を知って戴くだけで、大きな収穫だと思っておりますので、気軽にご参加いただきたいのです。だって壺坂が無料で見れるんですよ。お得でしょう?
文楽愛好家の皆様、ここはひとつ子供(勿論甥御さんでも近所の子でも結構)をダシにして、ご自分も楽しまれては如何?この先も開催いたしますので、是非奮ってご参加を!
長々と申し訳ございません。ブログ本体より長いのでは?藤十郎人気を当て込んで、宣伝させていただきました。失礼をお許しください。
近年に珍しく寒い日が続いております。どうぞお体ご自愛くださり、益々楽しませて下さいませ。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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♪ひこにゃんさん
文楽ファンの一人に過ぎませんが、好きという面では半端な人には負けていないと思います(笑)。
この件、個人的には存じておりましたが、ここでご紹介したことはなかったですね。
なかなか難しいようですが、読者の皆様の中には関心をお持ちの方もいらっしゃるかも。とくに無料「壺坂」(笑)。
あのシーンはうるっとしました
先日、文楽劇場行ってきました。
いままで何度か聴いているのだけど、とくに素晴らしい「「御殿」でした。
住大夫さん、鶴喜代君の声をずっと「ああ、お腹へって力でないんだ、この子は」と感じさせる弱々しさで語ってましたね。
鶴喜代君の「狆になりたい」はかわいそうですよね。
その後の「幼けれども天然に太守の心備わりて」のあたりで、うるっとしました。あの幼さであの状況で周りの人たちを思いやる心がね。
あの語りは、難しいのだろうなーと思います。
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♪おふたりの管理人のみ……さん
明らかに私が書き間違っています。早めに訂正いたします(わけあって、明日にでも……)。
明日の記事(既に書いて掲載予約中)とも齟齬があります。明日中に統一しておきます。
失礼いたしました。
♪あやりんさん
おいでになっていたのですね。やはりえべっさんあたりはよくお客様が多いようです。
住大夫師匠はそんなによかったですか。どこまで進化されるのでしょう?
♪お二人の管理人のみ……さん
14日夕方近くになってやっと時間があり、書き改めました。5分で済むことなのに、遅くなりました。
そうですよね。
狆の所で、結構笑いありましたけど、笑えませんでした。
言葉のやりとりは、面白いのですが、子供心に大人への思いやりの気持ちで切なさを感じました。
ようできた子やと、自分の子供の時のアホさ加減と比較もしてました。
今回の一番の収穫でした。
♪花かばさん
いろんな受け止め方があっていいとは思うので、なんら自分の思いが唯一正当だとは考えていません。でも、花かばさんと気持ちを共有できたのはうれしいです。
花かばさんはご幼少の頃は「伊賀の神童」と呼ばれたりはしなかったのですか?
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