面白かった日高川
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豊竹英大夫さんほかの床、豊松清十郎さんの清姫、吉田幸助さんの船頭で
日高川入相花王
が上演されています。
日高川の渡し場で、登場人物は二人だけ。背景は夜の闇。
なんだかがらんとした印象です。
清十郎さんの清姫は猛然と駆け込んでは来ません。疲れ果てたように必死の思いで渡し場にたどり着いたという感じです。彼女はまだ生身の人間、恋しい人を追う一人のお嬢さんであって、鬼でも蛇でもありません。そういうことを感じさせる清姫でした。
船頭は食えない男です。清姫をじらして嫌味を言うばかりでけっして渡してくれないのです。
清姫は低姿勢、
お願いだから渡して
という態度ですが、いつしか彼女の思いが激しいものと化し、ついには船頭を追い詰めてしまいます。
このあたり、落語の「らくだ」じゃありませんが、立場の逆転、なかなか面白いです。
実は私は今回の上演でこの演目にとても強い芝居心を感じました。床のほうはよく分かりませんが、清十郎さんと幸助さんのやり取りがとても面白かったのです。景事のように華やかに見せればそれでいい、というのではなく、きちんとした芝居になっていた点に大いに感心したわけです。
公演が始まるまでは、清十郎さんも幸助さんもやや物足りない役だと、実は思っていたのです。しかしこのお二人はやはりただものではありませんでした。
さて、このあとの記事は舞台裏の話になりますので、客席から見た舞台だけに関心がある、という方はここまでということで・・・。
↑応援よろしく!
この演目は終盤清姫が蛇体になることで一気に盛り上がりますが、ここで大活躍するのが
大道具 さん
です。
波幕を大きく揺らして清姫の川渡りを表現します。
あの大道具さん、いつから波幕の下に潜んでいらっしゃると思います? 実は幕が開いたときにはすでに待機していらっしゃるのです。つまり、清姫と船頭のやり取りの最中は、客席から見えないように舞台上に
ねっころがって
いらっしゃいます。この場面は船底を使いませんから、うろちょろすると客席から見えてしまうわけですね。だからはじめから波幕の下に芋虫のように転がってじっとしていらっしゃるのです。
波を作るのは肉体労働として大変ですが、逆にじっとしているのもけっこうしんどいとおもうのです。
大道具さん、ご苦労様です。
- [2010/01/23 00:00]
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コメント
面白かった
船頭と清姫の掛け合い。
前に見た時もそうだったのか、全く持って思い出せず。
今回楽しんでいるからいいか。と、勝手になっとくしてました。
後でうがいを
波幕を揺らし始めると、盛大にホコリが舞います。
あれを見るたびに「後でうがいをするのよ!」と心の中で叫んでいる自分がいます(笑)
♪花かばさん
花かばさんが保証してくださったら心強いです。
何度も見たい、と思えた「日高川」でした。
♪やなぎさん
同感ですね。
大道具さんはマスクをしていてもお客様には見えないから大丈夫でしょうが、清十郎さんはそうはいかないですよね。
清十郎さん、毎日うがい、手洗いは励行されたでしょうか?
見比べ聞き比べ
秋の巡業のときは、床が呂茂・芳穂という組み合わせだったのです。このときの清姫の呂茂さんはまさに絶叫。脅迫してらっしゃいました。迎え撃つ芳穂さんは圧されながら仕方なく売り言葉に買い言葉、というオモムキ。簑二郎さんの姫はアスリート風。一輔さんはともかく後半の清五郎さんは「さすがの船頭あしらひかね」という感じがしました。
今回は呂茂さんのお師匠さんの英さんなのでお手本風になるのかと思っていたら、師弟で全然違ってたので意外でした。
三月はさあどんな掛け合いになりますことやら。次は船頭が玉佳さんなんですよね。こちらも楽しみです。
♪えるさん
そうそう、簑二郎さんはスピードと持久力のありそうな清姫ですね。
英さんは清十郎さんとうまく合っていたのでしょうね。実はかなり気になっています。
こうなってくると
絶叫クレーマー呂茂さんはどなたにお稽古をつけてもらったのだろう、なんてことがちょっと気になってきます。必ずしも自分のお師匠さんにつけてもらうとも限りませんから(掛け合いならなおさら)。
いや、意表を突いてバテバテ英さんに習いました(あるいは、二人とも同じ重鎮のところに通いました)、だとしたら、それはそれで興味深いですけど。
簑二郎さんのお姫様は、ご自宅(おやしき内)にフィットネスジムがありますな。
♪えるさん
呂茂さんの場合、どれくらいが英さん仕込みなのでしょうね。
今回の英さんの語りを皆さんからうかがっていますと、清十郎さんとよく合っていたように思います。
簑二郎姫、温水プールで鍛えてるかもしれません。
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