fc2ブログ

ふたたび、父子 

このところなんとなく「父と子」のテーマにこだわっていたかもしれません。まんざら理由がなかったわけでもないのです。「そんなこと

    わかってるよ」

とおっしゃる方もおありかと存じます。
そうなんです、11月の文楽公演には

    嬢景清八嶋日記

    一谷嫩軍記

が出るからなのです。父と娘、父と息子、の話ですね。
もちろん、母と子、兄と妹、男と女にまつわる演目も出ますが、やはり軸になるのはこの時代物ふたつでしょうね。
今日は「嬢景清」をちょっとばかり予習しておきます。
「花菱屋」は駿河国手越(てごし)の遊女屋。今で言うと静岡市駿河区ですね。手越というと平維盛も源氏を追討するために足を踏み入れた場所です。後にこのあたりは丸子宿の名で東海道の宿駅として栄えますね。そこに肝煎の左治太夫が糸滝という14歳の少女を連れてきて、父のために身を売りたいと言うわけです。父、すなわち悪七兵衛景清は盲目となって日向(宮崎県)にいると知ってのことです。
花菱屋の長もなかなかの人物で、金と時間を与えます。要するに日向の国まで行かせてやって、父と会えるようにしてやるのですね。そして左治太夫が同行して糸滝は西に向かうのです。
ここに出てくる人物はおよそいい人ばかり。中にはドライなおばちゃんもいますが(笑)。
糸滝はいい人に巡り会いました。
しかし糸滝は父親思いです。恋焦がれていると言ってもいいくらいでしょうか。

にほんブログ村 演劇ブログへ
 ↑応援よろしく!

日向嶋の段といえば、やはり

    玉男師匠

を思い出します。
冒頭は一人芝居。よくもあれだけ観客をひきつけられるものだと感心しました。
重盛の位牌を石の上に置いて思い出を語る20分近く、まるで飽きませんでした。
古くは津大夫、そして住大夫、綱大夫各師匠を経て咲大夫さんがこの2月に東京で語られました。景清は今や玉女さん。糸滝は先代清十郎、簑助、紋寿の各師匠から2月は勘十郎さんで今回は当代の清十郎さん。
世代が変わりましたね。

父との再会を果たした糸滝ですが、景清は零落した我が身を思うと会うのも辛かったでしょう。
私も落ちぶれたら娘に何と言い訳しようかなんて思うといささかなりとも気持ちがわかるような気がします。
でも娘は一途に父を思うのですね。
そして、身を売ったとは言えないため、左治太夫は「糸滝は相模の国の田地持ちの大百姓へ嫁に行った。婿殿の親御が糸滝から景清のことを聞いて不憫がり、直接会って来いと言ってくださった」と嘘を言って財布と文箱を差し出したのでした。
しかし景清は大名の娘が百姓の嫁になるとは、と怒り、追い返すのです。
もちろん本心ではなく、自分が罪人であって、難儀が糸滝に及ばないようにとの思いからだったのですが。
しかし景清の行為は、父親が罪人であることで糸滝に難儀が及ぶことを案じる心からのものでした。
で、里人の親切で残された文箱に「書置」があることを知り、それを読んでもらうと、

  わが身を手越の遊君に、売代なし参らせ侯

とあったのですね。これはもう、父としてはなんとも悲しいばかり。私の長女は18歳ですが、昔の人の14歳とはまあまあ同じくらいの感覚かもしれません。それだけに、このあたりは涙腺がゆるみはしないかと警戒(笑)しています。そしてとどめに

  動かぬ義心の鉄碇も、曳かるる輪廻も親子の絆

勘弁してほしいなぁ・・・

スポンサーサイト



コメント

この段は

 最初にあの女房の遣り手ぶりで笑わせたり、現実味を出しておいて、泣かせますからね。紋寿師匠の本当に可憐で愛らしい、邪心のかけらもない糸滝に、花菱屋の長が心を打たれるあたり、ぐっときます。この場、平成2年に亡き呂大夫さんが演じられた場面の一部が、ロビーの文楽紹介コーナーで見られるので、時々見に行きます。
 しかし日向嶋は辛いですね。意地を通しプライドを保とうとする父と娘の、わかりあえないままの別れ…今回玉女さんと清十郎さんで、どんな演じ方をされるか、楽しみです。
 しかし毎回、11月公演は一番時間がとりにくいので、どれだけ見られるか、ちょっと不安…

♪まゆみこさん

父はえらそうにしても娘には弱いです。
景清がどんなに突き放してもそれは偽りであることがわかるだけにまたつらいです。
つらいなぁ、この芝居を見に行くのは。

父と息子

この関係には難しいものがあります。
成長してきた息子は父をライバル視して、自分と比べるようになります。

先日仕事のちっちゃな会合で、中小企業の親子とそれぞれ話す機会がありました。
父の跡を継ぐ息子は「経営のことを直接父親に聞くのがなにかイヤで・・・」。父親も「意外と息子とは仕事の話はしにくいです」とおっしゃってました。

♪やたけたの熊さん

確かに微妙な関係ですね。
文楽でもあえてお父さん以外のかたに入門することが多いですよね。
住大夫、咲大夫、勘十郎、簑次等々。
うちも息子は教員志望ですが数学なので関係あるようなないような。

私事ですが…

今年2月に父を連れて行き、友人に「孝行娘が父に見せるのにぴったりの演目でしょう」と自慢しました。

勘十郎さんの糸滝が最初の出のところからかれんでけなげで…(そこまでみならえないけど)。
清十郎さんもどんな感じに遣ってくださるか楽しみです。

♪nanasinonaさん

私事、大歓迎です。私なんてほとんど私事しか書いておりませんので。
「nanasinonaさん」改メ「糸滝さん」になさってもいいくらいですね。「ご自慢なされ、ご自慢なされ」というと刃傷沙汰になりそうですが、ほんと、ご自慢の価値ありですよ。

糸滝ちゃんの父親孝行は

母とばかり思っていた乳母の供養なんですね。会ったことのない親にどうしてそこまで、ということじゃなくて。

乳母にとっては大事な大事なお主だったのでしょう。

♪えるさん

そうですね。なかなか「景清」について書けないのですが、彼女は「実はあなた様は…」とその出自を乳母が今はの際に教えてくれるのですね。
花菱屋の皆さん、心がぐらぐらします。

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://tohjurou.blog55.fc2.com/tb.php/1755-8d4e871f