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初春公演に寄す(1) 

文楽初春公演も終わり、春を待ち望む時候となります。
旧暦の元日も過ぎ、厳寒の日々とはいえ、立春はまもなく。春は遠くはありません。

私なりの初春公演感想を少しだけ書き留めておきます。
人形ばかりに関心が集中する私ですが、もっとも印象的だったのは

    佐太村

でした。え? 「千本」じゃないの? と言われるかもしれませんし、そりゃもう、「千本」もよかったのです。清十郎さんは勘十郎さんに気圧されることなく自身の演技をなさいましたし、勘十郎さんはもう炸裂という言葉が似合う凄まじさ。
狐に限らず、動物は顔の表情など、本来は感情をあらわにしないもの(怒りは例外)。それが、表情のない人形を用いることで、まさに狐の、狐以外ではありえない感情表現を成り立たせてしまうスーパーマジック。
検非違使から耳動き孔明への変化がその真髄に見えます。
そして「河連館」での、人間のスピードを超える勘十郎さんの早替り。このかたの当たり役の随一に狐忠信が入ることは疑い無かろうと思います。
感銘を与えるだけでもすばらしいのに、幕が引かれた瞬間に

    もう一度観たい

と思わせる。観客に、いわば「とどめを刺す」力が勘十郎さんにはありました。
玉男師匠は舞台をキリッと締められましたが、勘十郎さんは舞台を異空間に解き放つ演技に見えました。立ち役のさまざまな魅力だと思います。

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それならやはり「千本」が一番だろう、と言われるかも知れません。
しかし、敢えて私は「佐太村」を推します。勘寿(千代)、和生(白太夫)、玉輝(松王)が支える中、簑二郎、勘弥(八重)、文昇(春)、幸助(梅王)がめざましい熱演。文昇さんはこの一年の間に、人形にずいぶん

  血が通うようになった

と思います。やはり襲名の力でしょうか。
幸助さんの梅王は力感があって、情に篤く、自信に溢れた男の腕っ節を感じさせました。彼の団七九郎兵衛が待ち遠しいです。
簑二郎、勘弥のお二人は切磋琢磨しつつ、お互いの長所をひそかに学び取っていらっしゃるようにお見受けします。それでいて個性を失うことなく自分の演技を確立しようとされているようです。その意味で、お二人の優劣を論ずることはナンセンスにも思えます。
八重のかわいさ、一途さ、そして運命に翻弄される哀れも。ふたつの八重像を観られた観客は幸せだったと思います。
こういうダブルキャストは楽しいものです。
最後に観たのは当然勘弥さんでしたが、私は「八重も死なれね身の繰り言」なんて、涙が出そうでした。
もちろん、

    住大夫師匠

の語りの力は大きかったのでしょう。簑助師匠の桜丸にぶつかる緊張感も凄まじかったでしょう。
それにしてもバランスのよい優れた舞台でした。
勘寿、玉輝さんが八重や梅王を自由に動かしていたことも、和生さんが飄々とした、しかし一徹な白太夫で安定していたことも特筆したいものです。
ただ、「佐太村」だけでは桜丸の無念がどうにも伝わって来ず、せめて「車曳」だけでもあって欲しかった、と感じました。

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