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傾城阿波の鳴門(第四の2) 

後に残った助右衛門は金を片付けて、しみじみ思います。義理を立てることを第一にするのに、あえて金を返して藤屋との縁を切ろうとするおまきのこと、一人の男を思い続ける、忠臣蔵の小浪のようなお辻のことを。そして彼は、なんとかしてお辻を伊左衛門と結婚させることはできないかとも思案しています。奥からはお弓のためにお辻が琴を弾いているのが聞こえてきます、その歌もやはり夫を慕う内容です。
そんな時、

    深編笠

の浪人らしき人物がやってきます。助右衛門が応待すると、答えます。「自分は尾羽うち枯らす浪人だが、このたびつてがあって播州に仕官することになった。しかしこの身なりのままと言うわけには行かず、金を借りたい」とのことです。ずいぶん横柄な態度です。律儀な助右衛門が「ご用立てするのはいかほどですか」と尋ねると、浪人は「わずか五百両だ」と答えます。あまりの金額に驚いた助右衛門は断ります。
すると浪人は「金があることは知っている」と迫りますが、助右衛門は首を縦には振りません。すると浪人は「それならお座敷を汚す」と居直り、腹を切ろうとします。驚いた助右衛門が必死になって止めていると、お弓が障子を開いてなにやら絵姿を見ています。そして助右衛門を呼び、「あの浪人は

  阿波の十郎兵衛

という海賊で、五右衛門の銀十郎と異名を取る男です。このたび夫が大坂に出てきたのも十郎兵衛を捕えるためなので、これは天の賜物です」と勇み立ちます。

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「しかしここで捕えたら難儀がかかってきませんか」と助右衛門は案じ、「たしかにご当家に迷惑がかかるでしょう」とお弓が思案していると、助右衛門は「あの浪人を何とか帰しますので、表で捕えてください。とは言え、ただでは帰らないでしょうから、望みどおり

    五百両

をいったん渡します。その上で捕えてお金を返してください」と頼みます。
話が決まって、お弓は家来に指図をし、助右衛門は浪人にふたたび話をします。
「店の主人に相談しましたら、お金を貸しても良いということでした。ご出世次第必ず返してください」と言って助右衛門は浪人に金を渡します。
浪人は感謝して金を懐に入れ、表に出ます。するとお弓の家来が襲い掛かりますが、浪人に逆襲されます。お弓が取り縄を持って迫りますが、浪人はお弓に当身を食らわせて逃げます。お弓もたじろぎながらそのあとを追っていきました。

大川筋の浜伝い。人のいないところまで行くと、

    「こちの人」

とお弓が呼び止めます。「女房、まんまとしでかした」と答えたのはまぎれもない、お弓の夫、阿波の十郎兵衛です。
そこに庄九郎が現れて「代官所に連れて行く」と言いますが、あっという間に斬られてしまい、暮れ六つの鐘が鳴る中を十郎兵衛とお弓夫婦は行方も知らず逃げて行きました。

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