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傾城阿波の鳴門(第六の1) 付680,000 

第六は「吉田屋」です。私どもは、「吉田屋」というと『曲輪文章』(タイトルとしては「文」と「章」を一字に合字、つまり「文」偏に「章」という文字で表記される)を思い出しますが、もとは近松門左衛門の

    夕霧阿波の鳴門

の一部です。それをこの『傾城阿波の鳴門』にも取り込んでいるわけです。

大坂新町の揚屋「吉田屋」では大晦日の今日、庭で餅つきの最中です。藤屋の伊左衛門は夕霧を呼びに行かせていますが、癪でふらつくからといってまだ来ません。
駕籠舁の喜八と太鼓持の太四郎は「夕霧様は、半年ばかり伊左衛門様が江戸に行かれてたので吉原での遊興にすねていらっしゃる」「そうではなくて住吉屋の阿波の客が身請けするという噂で癪を起こされたらしい。なんとか伊左衛門様に身請けしていただけるようにとこちらの旦那(吉田屋喜左衛門)が京までいらっしゃったそうな」と話します。それを聞いた伊左衛門は「親は女郎嫌いだから、さてうまくいくかどうか」と案じます。
そんな伊左衛門を慰めるように太四郎が餅を搗き、一同は奥に入って行きます。(ここまでが口)

夕霧がやってきます。そのあとに破れ編み笠に

    紙衣姿

という男がついてきて声をかけ、銭一文を差し出します。風流なところもありげな男の様子に、夕霧はわけがありそうだと思います。
男は、「私はあなたに惚れました。先月二十日の朝、道中されるあなたを見て忘れられなくなりました。このままでは死んでしまいそうで、どうかお情けに一夜を共にしてください」と言って泣いています。
夕霧は聞き届けましたといって吉田屋の中に手を引いて男を入れます。花車のすぎは驚きますが、先ほどの一文で私は買われました、と言うのです。いくらなんでも紙衣姿では、というのでやむを得ず着替えさせることになりました。

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みすぼらしい紙衣姿だった男はあっという間に粋な様子になり、喜八と太四郎が話します。「あなた様はどちらから?」「長町のほうから」「冗談でしょう」「お長と一緒に住んでいる」「おめかけさんですか?」「帰ると尻尾を振ってくれてふとんのかわりに抱いて寝ると暖かいが、時々足を舐めるのが困る」「そんな人がいながら廓にいらっしゃったとは。まずはお通りを」と話が合っているやらいないのやら。男が立つと足下に米袋がころり。「汚いものだ、捨ててしまえ」といわれて、男は「大事のものだ」などといっています。
彼らが奥へ行くと、

    伊左衛門

が現れ、腹を立てています。「あんな男に惚れる夕霧とはなんといういやらしい女郎だ。身請けをしたいという男があればどこへでも行くような女だろう。何とか仕返しをしたい」と悋気しているのです。そこに阿波の武士が伊左衛門に会おうと血相を変えて来ている、という知らせ。
こわくはない、と強がりは言ったものの、相手は国家老の

    小野田郡兵衛

とのことで、自分は追放の身の上。会うことはできないと、伊左衛門は長持ちの中に隠れます。
そこに郡兵衛が来て、「伊左衛門め、追放の身で廓通いとはけしからん。ここへ出せ」と大声を出しています。
「伊左衛門様はいらっしゃいません」と店の者がごまかそうとしますが、郡兵衛は家捜ししてでも引きずっていく、とすさまじい剣幕で中に入っていきます。

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