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傾城阿波の鳴門(第十の1) 

いよいよ大詰めの十段目です。ところは、小野田郡兵衛の下屋敷です。
桜井主膳と郡兵衛のやりとりから始まります。
「しばらくお待ちください。なるほど、刀の真贋を改めないで持参したのは拙者の誤りですが、殿の重宝を私が隠すはずがありません。盗賊はほかにいます」
「殿のお誕生日の三月三日に刀を飾るのは貴殿と拙者。今日は内見ということになったのに、ないでは済まぬ。ありのままを殿に申し上げるから、とりあえず大小を渡せ」
主膳はしかたなく腰の大小を投げ出し、軍兵衛に命ぜられて奥に行きます。
郡兵衛は一間を開けるとそこは

    高尾

の仮の座敷牢になっていました。
郡兵衛が言います。「家来の土手助に言いつけてそなたを連れてこさせ、ここに押し込めているのは人目を憚るため。拙者の妻になることを承知すればそんな遠慮は要らないのだ」と。
高尾はもちろん断ります。
郡兵衛は、それならつらい目を見せてやろうといって、土手助に命じて十郎兵衛を連れてこさせます。
すると高尾が意外なことを言います。

    「兄様、

どうして縄をかけられているのですか?」と。

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「兄妹だったのか、これはよい橋渡しができた」と言いながら郡兵衛は庭に降り、「なぜ佐渡平や山口定九郎を殺したのだ」と問い詰めますが、十郎兵衛は「それは主人主膳さまのため」と答えます。
郡兵衛は「主従共に盗人」と罵ります。主人を盗人呼ばわりされて怒る十郎兵衛に対して、郡兵衛は「主膳は国次の刀を盗んだ盗人だ」と言い、刀のこじりを縄目に入れて責めます。
高尾はその様子を見て歎きます。郡兵衛は「もしそなたが拙者の妻になれば十郎兵衛は小舅だから許しても良い」と詰め寄ると、高尾はついに

  「どうなりと・・・」

と承知してしまいます。郡兵衛は高尾の言葉がまだ半信半疑です。そこで十郎兵衛のいましめをほどき、「高尾を説得してわが妻となるようにきちんと話せ。聞き入れない場合は二人とも成敗する。奥で待っている」と言ってその場を去ります。
十郎兵衛と高尾は小声になって話し合います。
「刀の詮議のためとはいいながら、あなたは殿のお嬢様。私のことを兄などともったいないことを」
「それはかまいません。それよりあなたは刀の詮議を」
「それなら郡兵衛があなたに惚れたのが幸い、油断させてやつの刀を見てください。国次なら、なかごは乱れ焼き、はばきは金で唐草に蝶の彫り物。私は奴部屋にいますから、間違いなければ知らせてください」
「それなら合図は

  桜の花をこの水筋に流す

ことで」
と取り決めて、二人は別れます。

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