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道行とは(2) 

    『本朝廿四孝』

は通し上演の難しい演目です。
時間の関係で大序から四段目までを二部に分けて上演するのが大変なのです。
そこで二段目と三段目を入れ替えて、しかも二段目の一部だけを切り離すなどと言う外科手術のような切った貼った(外科医の先生、失礼しました)がおこなわれています。
この上演方式ですと二段目の

    「勝頼切腹」

からすぐに

    「道行似合女夫丸」

に続きます。
「勝頼切腹」の最後で、蓑作(実は勝頼)と濡衣が旅立ちます。
そしてすぐに「女夫丸」で二人の道行となるのです。見ようによったらとても分かりやすく、連続性があるようにさえ見えます。しかしそんなに分かりよくていいものなのでしょうか。
以前この形で「廿四孝」を「通し」で見た時、あまりにも「道行」が薄っぺらに思えました。
道行っていうのはこういうものなのだろうか?
大きな疑問が湧きました。

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「千本桜」の道行はなぜ弥左衛門と若葉内侍(三段目で吉野から高雄の文覚のところに旅立つ)ではいけないのか、そんなことも思いました。
結局その時に道行について私が感じたのはこんなことでした。

道行とは……

  三段目の凄絶な愁嘆場を終えた後、「そういえばあの二人は」と、二段目
  で姿を消した二人をはるかな記憶から舞台に呼び戻すものなのだ。そして
  その距離感が旅の距離感と重なり、道行の幻想性を紡ぐのだろう。


ややきざな言い回しですが、かつて「上方芸能」誌に書いた文章そのままです。

忠臣蔵の「旅路の嫁入」も、戸無瀬と小浪が登場して、そういえばあの時見つめあったまま別れた二人(力弥と小浪)がいたんだ、あのあと破滅的な出来事があったけど、

  彼らはどうなったのだろう?

と我々観客に思い起こさせ、次の場面で何らかの再会があるというメッセージを送ってくれる場面のような気がします。
あのとき加古川本蔵に追いすがった母娘が、あれ以来ずっと長い旅を続けているような錯覚さえ抱いてしまいます。
「千本桜」の道行がもし内侍、六代、弥左衛門なら、彼等は高雄へ行ってしまって姿を消すでしょうから、四段目につながりません。「思い起こし」「再会」のいずれもなく、当然これは論外です。
これらの道行は

    「行く」

だけではなく、

    「たどり着く」

ことも必要なのでしょう。
心中道行は「思い起こし」はないかもしれませんが、死に場所にたどり着いてこそ意味があるように思います。

考えがうまくまとまらないのですが、ツチ子大夫さん、お園さんを惑わせたことがどうも気になっていたのでだらだら書いてみました。

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コメント

道行。

道行は、現実と幻想との中間にあるようにも思います。

現実を引きずりながら理想郷に旅立つ二人、何かよからぬことを予感させながらも旅する二人…。道行は、何かを秘めながら幻想的に進みます。

まるで道行は、現実と幻想とを繋いでいるように思います。

なるほど

どこかへ行き着くための道、夢と現実の間をつなぐ道、鋭い指摘、ありがとうございます。しかし道行というのは、心中もの以外では、恋人同士でない場合も多いですね。千本道行は主従に近く、「忠臣蔵」では義理の母娘、「似合夫婦丸」はむしろ濡衣に辛い設定になっていますね。
 先日国立劇場資料室で、昭和47年に出た「菅原」の「道行詞甘替」の記録テープを見ました。これは桜丸が飴売りに扮して、斎世親王と苅谷姫を落ち延びさせるもので、普通三段目のあとに来ると思っていた道行が、初段の後に来るので珍しく思いました。死ににいくときは、やたけたの熊さまが指摘されるように、現実と幻想をつなぐ道、生きるための道行は、目的地への期待と不安に満ちているようにも思います。

>やたけたの熊さん

確かに、幻想性は絶対にありますね。
どこまでも現実的な三段目が終わって、夢幻のような道行が始まる。
ほんとうにいいものですね。
吉野といえば吉野でしょうが、桜の園でさえあればいいような「千本の道行」。
明日書きますが、私の一番好きな道行です。

>まゆみこさん

「詞甘替」も明日触れようと思っていた(というか、もう下書きしてしまいました)のですが、これだけは二段目の口ですね。
三段目で旅立つのは白太夫ひとり。
四段目の北嵯峨では、八重が死んだあと山伏(実は松王丸)が御台所を連れ去りますが、道行として松王の正体を見せるわけにも行かず。
作者は思い切って趣向を変えて二段目の口に持ってきたのでしょうか。
「女夫丸」はほんとうに濡衣にとってつらいですね。「似合い」「女夫」というタイトルからして気の毒です。
どう見ても似合いの夫婦の濡衣と蓑作ですが、実は濡衣の恋人はすでに死んでしまっている。蓑作は信州に八重垣姫がいますが、濡衣はそこへいっても誰もいない。
そんな複雑な思いの中での道行。いろんな趣向がありますね。

>目的地への期待と不安に満ちている

これ、ありますよね

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