加賀見山旧錦絵(第五の2)
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眼兵衛が帰ってきます。妻が「わが子を殺すことになろうとは」というのを聞いて問い質します。妻は「わが子を殺した
夢を見た
だけです」と言い逃れます。眼兵衛はうっかり「夢に知らせがあるのも道理だ」と口に出し、今度は妻がわけを聞きます。「娘が廓に行ってから便りもないが、夢にでも知らせてほしい、という意味だ」と眼兵衛はごまかします。妻が「実は道芝が来て、今、姉妹で話をしている」というので眼兵衛が奥をのぞくと二人で話している様子。眼兵衛はつい「南無阿弥陀仏」と唱えてしまい、妻も仏壇に御明しを灯して看経します。そして二人でそれぞれの心で念仏を唱えるのです。
姉妹が話し合っています。お来は「せっかく会えたけれど、私は今夜から遠いところへ行きます。実は、母様のために大磯に身を売ったけれど、それも行けなくなった。あなたが代わりに行ってくれたらその金で
母様の病気
も治る。そうなったら私はもう死んでもよい。わけは後でわかるから、どうか頼みたい」といいます。しかし道芝も「あなたがそんな心細いことを言ったら両親は誰を頼りにすればよいのですか。どこへも行かず両親の介抱をしてください」と頼むのです。
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四つの鐘が鳴ります。
母はお来を殺そうとします。道芝は姉を殺させまいとし、眼兵衛も止めに入って妻の刀を引ったくり、道芝を斬ります。すると、道芝の身体は消えて仏壇の前に残ったのは首だけでした。実は
道芝の死霊
だったのです。お来と母親が歎いているところに肝煎がやってきて、残りの五十両を差し出し、お来を迎えに来ました。眼兵衛が事情を尋ねると、お来は母の病気平癒のためなどと説明します。
肝煎がお来を駕籠に乗せて連れて行くと眼兵衛夫婦はわけがわかりません。妻はお来を道芝の身代わりにするつもりであったことを述べ、眼兵衛も道芝を斬ったことにはわけがあったと話します。そしてとりあえずお来を取り返すために金を持って駆け出します。すると紙崎主膳が現れ、「お来は大磯に身を売ったのではない。実はわが家来を廓の肝煎に仕立ててわけがあって連れて行ったのだ。お来の夫の名を聞いて詮議することがある。それよりまず聞きたいのはこの刀のことだ」と尋ねます。
「この刀は午王丸の名剣で、赤松満祐がこの刀を奪い取ってそののち行方知れずになったものだ。これを持っているお前は満祐の余類であろう。満祐のせがれの赤松三郎の行方を知っているだろう。白状せよ」と詰め寄ります。すると眼兵衛はいきなり刀を腹に突き立て、「私は謀反人赤松満祐の足軽、嘉嶋権平という者。足利家に仇を報いようと思っていたが、娘が足利の子を懐胎してしまった。殺したのは主君への忠義だ。今、主膳殿に見顕されたのは運の尽きだが、切腹は本望だ」と語ります。紙崎は「赤松三郎の行方を尋ねても白状はしないだろうからもう尋ねない。その刀はわが親紙崎兵庫が赤松満祐を討ち取った時に満祐がくいついて歯型が残っている。その刀で切腹すれば
主従一所に討死に
したも同然だ」と言います。眼兵衛は妻に離縁を告げ、わが子を殺し、顔も見ぬ孫も殺したことを詫びます。紙崎はしばらくの間とはいえ殿の寵愛された道芝の母を咎めはしない、といって帰ろうとします。すると犬淵藤内が襲い掛かりますが、雪平がやってきて斬って捨てます。
- [2012/08/19 00:00]
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