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原作の「帯屋」 

『桂川連理柵』の「帯屋」は人気があります。最近では嶋師の抱腹絶倒の前半、住師の滋味ある後半がありました。
ただ、この段は原作をかなり変えています。
気がつく点をいくらかメモしておきます。

おとせ、義(儀)兵衛母子の五十両の悪巧みから長右衛門の詮議に入ります。そして義兵衛によるお半の手紙読み上げ。ここは原作にかなり色をつけています。
まず、読み上げ前に「読むぜ、読むぜ・・」などともったいをつけるところは原作になし。「飛ぶぞ、飛ぶぞ」の読み違えの部分も一切なし。読んだあとの口三味線もありません。
当然チャリ場としての面白さは原作は希薄。前受けを狙ったいれごとが固定した感じです。
繁斎が長右衛門を責めたあと、お絹が、お半様の恋の相手は長吉だというと、義兵衛は「丹波から来てゐる、あの洟垂れの長吉ですかえ。あの洟長・・・」と言いますがこれも原作にはありません。義兵衛が長吉を呼びにいくと原作ではあっさり「疾しや遅し」と出てきますが、今は義兵衛の呼び出しがかなり長くなっています。「この洟から片付け」以下の義兵衛のせりふも原作にはなく、義兵衛の様子は「落ち着く布袋なり」です。
この「疾しや遅し」は現行テキストも同じですが、人形の動きを考えたら変えた方がよさそうに思うのですが、いかがでしょうか。
お絹が目まぜで長吉に約束通りに言うようにほのめかすと、原作では長吉はかなりキッパリと話しますが、現行テキストではかなり照れながら話します。そして石部での出来事も現行テキストでは長々と。
一同が奥に入り、自害の覚悟を極めた長右衛門が寝ているとお半が来て「長右衛門さん、おじさん」と可愛らしく言いますが、原作は「長右衛門様、長右衛門様」で、やはりお半のイメージは微妙に違います。
このように、現行の前半はチャリ場の色が濃く、長吉も

    阿呆の丁稚

のイメージができました。原作ではもっと抜け目のない男です。

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「帯屋」の段切は、現在は長右衛門の駆け出しまでですが、このあと原作は違っています。

長吉の兄、本間の五六が来て、長吉を呼び出します。長吉が義兵衛から預かった「骨折り賃」の五十両を兄に渡し、引き換えに刀を受け取ります。五六がいきさつを問うと、長吉は洗いざらい話します。まず、刀をすり替えたのは「恋の叶はぬ意趣晴らし」であったこと。『忠臣蔵』「花籠」で顔世が師直の無体な恋を責めて語るせりふと同じですね。もうひとつ、義兵衛の企みはこの刀を自分が見つけたことにして遠州の蔵屋敷に持参し、長右衛門を陥れ、自分が跡継ぎになることだ、とも話します。
すると五六が

    意外なこと

を言います。
「親父様が商売を始められたのは繁斎様のおかげ。お前が奉公できたのも繁斎様のお世話。義兵衛が偽侍のふりをしてくれと頼んできた時、帯屋と信濃屋に災難があると察して仲間入りを装ったのは悪巧みをしるため。その刀は偽物で、本物はここに持っている」
なかなかかっこいいです。五六に合う首って、何でしょうね。「封印切」の八右衛門のように、イヤミもありながら肚はきれいな人物を感じるのですが、首はどれが映りますかね。
さて五六は、逃げようとする長吉を投げ飛ばし、飛び出してきたおとせと義兵衛も投げつけます。繁斎とお絹も現れたので、悪人トリオは逃走します。五六がお絹に五十両を渡すと、お絹は長右衛門を探しますが、姿が見えません。
すると信濃屋のお石がお半の書き置きを持って現れます。
繁斎は五六に「すぐに刀を蔵屋敷に持参し、三人を捕まえろ」と命じ、五六は去ります。
そこに桂の百姓が来て、「氷の淵に身投げがあり、見るとお半様と長右衛門様でした」と告げます。
一同はうろたえますが、百姓の勧めに従って桂川に急ぐのでした。

もちろん、

    道行朧の桂川

はありません。

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コメント

そうでしたか

>藤十郎さま
なかなか、義理と人情の機微に焦点を当てた凝った筋立てですね。勉強になります。しかし、痛ましい歳の差ラブと抱腹絶倒のチャリ場がないと、落ちます。
道行朧の桂川の「小さい時からお前をまわし、祇園参りや北野さん、物見見物後追ふて、手を引かれたり負はれたり…」がないとびーびー泣けないではありませんか。

♪おとみさん

今の「帯屋」のチャリ場は、周りの人間の動きをほぼ止めて、「引抜」のように義兵衛、長吉(おとせも少し)のみを浮き出させていますが、もとは流れるような構成だったのですね。
道行もやはり物足りなく思う人が多かったことを示すのでしょうか。
いずれにせよ、長吉の人物像の変化、五六という男の抹消など、原作との違いはかなりあります。
私は初めて観た時に、刀をすり替えたりお半を追い回したりする長吉と帯屋の彼がどうにも結びそうつきにくかったのです。
この作品の生き延び方に今も津々たる興味があります。

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