匂う 

以前にも書いたような気がする内容の記事です(笑)。
平安時代の文学を読んでいると「匂ふ」という言葉が出てきます。
たとえば源氏物語に登場する人物の中に、ずばり

    匂宮(におうのみや)

と呼ばれる人がいます。天皇の子で母親は光源氏の娘(明石中宮)、当代随一の美男子です。彼のライバルには薫がいます。こちらは光源氏の子ということになってはいますが、実は柏木という男が光源氏の妻であった女三宮と密通した(実際は柏木がかなり乱暴なことをした)結果生まれた子です。
薫は自分の出生の事情について疑問を抱いており、そのために若いのにどうも宗教臭い。
一方の匂宮はまぎれもなく天皇の子で光源氏の孫でもありますから人生に何の疑問もなくけっこう派手な生活をしています。
この二人の呼称は「におう」「かおる」という具合に、現代的に考えると

    嗅覚に訴える

ような言葉がついています。そこで学生も薫は「いいにおいがする」、匂宮はなんだか変なにおいがするのでは?と思うことがあるようです。
ところが実際の「匂ふ」の意味はそういうことではなかったのです。

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漢字を当てると「丹秀(にほ)ふ」になるでしょうか。
「丹」は「丹塗り」などともいうとおり、赤い色です。「秀」はすぐれている、ぬきんでているなどの意味があります。たとえば「稲穂」というのは稲の突き出た部分、ということ。「君が代」にも出てくる「巌(いはほ)」も岩の突出したところ。他にも「波のほ」「垣ほ」などということばがあります。
「穂(ほ)に出(い)づ」というと表面に出ること、目に付くことの意味になります。
ですから、「丹秀ふ」というと赤い色が浮き出るように見えることです。つまり本来は

    視覚に訴える美

なのですね。
「紅にほふ桃の花」というと赤く美しい桃の花のことです。ここから美貌であることもこの言葉で表されることがありました。ですから、匂宮はぱっと目に立つような美しい宮様、というくらいの意味でしょうか。派手な二枚目、美男子なのですね。薫(かをる)は煙などがたなびく様子をいう言葉で、そこからにおいが漂う意味ができました。梅や橘はかおりの愛された花でした。ですからこちらはなんとなくほのぼのとした美しさと言うことになります。
そんな話をすると、学生は

    繊細ですね

という感想をしばしば口にします。そうですね、同じように美しいのでもニュアンスというものがありますから。古典文学の世界はなかなか面白いのです。

で、何でこんなことを尾も出したかと言うと、久しぶりに仕事場に行ったら、なんだかあたりが匂うのです。ペンキのにおい。この時期は建物のメンテナンスや美化が行われるので、こういうことになります。あまり気持ちのいいものではありません(笑)。こうなると「匂」というよりは「臭」の字のほうがよく意味を伝えてくれるように思います。

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