訴嘆 

正月にかるた取りをなさるかた、高校時代に百人一首を丸暗記せよとと宿題を出されたかたなどはご存じの歌です。

  由良の戸を渡る船びと
    楫をたえ
      行方も知らぬ恋もするかな

この歌を詠んだのは10世紀の歌人

    曽禰好忠(そねのよしただ)

という人です。曽禰氏など当時はたいした家柄ではなく、彼もやっと丹後掾という職にありつく、という程度の人です。丹後国の三等官。守(かみ)、介(すけ)に次ぐ地位です。
それで、彼は曽禰丹後→曽丹後→曽丹(そたん)と呼ばれ、そのうちに「そた」と呼ばれるかもしれないと言ったとか言わなかったとか。
歌人としてはなかなか優秀で、奇抜な語や発想で詠み、1日1首の日記的歌群

    「毎月集」

を編んだりもしています。
家柄が家柄ですから、将来出世の見込みもなく、やはりそのことが不満だったようです。
私の恩師は曽禰好忠についての研究でも知られた人で、多くの論文を書いています。

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曽禰好忠は、不遇をかこって詠んだ歌がありますので、沈淪の歌人などと言われることもあります。
私の恩師はけっこう言葉遊びの好きな人で、不遇を訴え嘆いたから

    訴嘆調

の歌を詠んだ、と評しました。わかります? 「訴嘆」に「曽丹」を掛けているわけです。研究に掛詞!
歌人としては評価されてもやはり地位、身分にこだわりを持つのは、当時の官人にとっては当然だったのかも知れません。
名門で、生まれながらにして将来を約束されているような人を、彼はやはり妬み、羨んだのでしょう。もっとも、彼が名門に生まれていたら、果たして歌人として名を残すだけのユニークな歌を詠めたのかどうか。そのあたりが難しいところです。

今の世の中、多くの人が不遇を嘆き、訴えたい気持ちを持ちながら我慢して生きているのかもしれません。
いや、今だけではなく、歴史をたどるとすべての時代に弱い人、嘆きたい人はあまたあったのだろうと思います。
私も、今はせめて

    行方も知らぬ恋

でもしたい(笑)と思うのですが、それもまたできない。訴嘆するほかはないのかも知れません。

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