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名所江戸百景~向島界隈 

江戸の人から見ると川の向こう、という意識になります。中川と隅田川に挟まれ、さらにいくつもの水路を持っていた名残は、「京島」「浮島」「寺島」「曳船」などの町名や学校、駅の名前などに残っています。
「広重の『名所江戸百景』は今水神大橋のあるあたりを何か所も描いています。第六十三景「綾瀬川鐘か淵」。

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↑綾瀬川鐘か淵

隅田川は千住大橋の東で一気に南向きに流れを変えます。そのあたりで北東から流れてきた綾瀬川と合流します。絵は隅田川を左右に、正面奥に綾瀬川を描いています。つまり左側が隅田川の上流です。この絵の手前には大きく合歓(ねむ)の木が描かれていますが、これは綾瀬川の「記号」というべき木です。川沿いが合歓の木の名所だったそうです。ただ、この木の位置は隅田川の西岸になりますから、理屈から言うとおかしい。奥に見える綾瀬川の土手にあってこそ合歓の木の意味があるわけです。しかし広重はそれをあえて手前に置いた。「記号」といったゆえんです。鐘が淵はその少し南側ですから、この絵でいうと右側奥になります。筏に組んだ材木を運ぶ男の背中が涼しげな夏の風景。彼が見ている方向がまさに「綾瀬川鐘が淵」になります。

第三十五景「隅田川水神の森真崎」は隅田川神社(水神社、浮島神社)から隅田川上流を観望した図。

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↑隅田川水神の森真崎

手前に八重桜が咲いている春の風景。正面奥から流れてくる隅田川が南に向きを変えるため水がぶつかってくるので、洪水があると危険な地域でしたが、この神社のあたりは小高くなっていて(浮島)、無事だったようです。遠望されるのは筑波山ですが、実際はもう少し右側にあったのではないでしょうか。しかし江戸の「北」を示す山として描く。写真ではできない表現方法というべきだと思います。
この絵を反対側、つまり隅田川右岸(西側)から見たのが第三十六景「真崎邊より水神の森内川関屋の里を見る図」です。

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↑真崎邊より水神の森内川関屋の里を見る図

料理屋の窓から北東方向を見ていて、筑波山が見えます。第三十五景とは逆で、実際の位置はもう少し左側であったのかもしれません。手前左の室内には花瓶に花が活けてあり、外には梅の花。川には筏や川遊びの屋根船が見えています。中景の右端に水神社の鳥居。春ですから、空には帰雁。とても粋な印象を抱く絵です。

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第九十二景「木母寺内川御前栽畑」はあの梅若の塚のある寺です。

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「木」「母」は「梅」の字を分解したものですが、「母」の字をあえて独立させて使っているところが梅若伝説~謡曲「隅田川」の悲しみを感じさせる役目も果たしているように思います。「内川」は入り江のことで、その南側に木母寺。「御前栽畑」は「御」の字がついていることからわかるとおり、幕府の野菜畑です。手前に二人の女性が梅若の塚を訪ねるべく舟から下りています。前にいる女性は「ここがあの梅若の・・」と言っているように思えます。梅若の母に重なるようで、やはりこの場所には女性が似合います。右手に料理屋の建物、中央に内川に架かる橋。

第六十四景は「堀切の花菖蒲」。

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↑堀切の花菖蒲

古地図には「堀切村 百姓伊右エ門花菖蒲之名所ナリ」と見え、これも実際の花菖蒲は向こう岸(堀切側)にあるものなのでしょうが、あえて手前に大きく数本を描き、さらに向こう岸に菖蒲畑とそれを楽しむ人々を見せています。第六十三景「綾瀬川鐘が淵」とよく似た描き方といえるでしょうか。

第三十三景「四ツ木通用水引ふね」はこのあたりの名物といえそうな引船。

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今も東武線に「曳船」駅があります。舟の舳先近くに立てた棒につないだ綱を岸で人が曳いて動かすわけです。こういうのって、両岸で曳くのだと思っていたのですが、この絵では曳き手はすべて右側(東側)にいます。手前の二艘は男性が曳いていますが、真ん中あたりの船を曳いているのは女性ではないでしょうか。もしそうだとしたら、下流に向いているので比較的力はいらないでしょうが、たくましいです。北を向いていることは筑波山が見えることからわかります。

この通用水の下流に小梅村があり、向島の南の端、本所はすぐそばです。第百四景は「小梅堤」、ここの上流の秋葉権現境内を描いたのが第九十一景「請地秋葉の境内」、さらに暮れ方の隅田川左岸(向島側)を歩く芸者を近景に置いて浅草川を遠望したのが第三十四景「真乳山山谷堀夜景」です。向島は絵筆の意欲をかきたてるようです。

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↑小梅堤

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↑請地秋葉の境内

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↑真乳山山谷堀夜景

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