伴大納言絵巻を読む(1) 

今、一般の皆様を対象にした『伴大納言絵巻』を読む講座を開いています。
もう、面白いの何の。受講者の皆様はどうお考えかは存じませんが、私はただただ面白く、一生懸命予習しています。
そらく90分のお話をするために5時間以上の予習をしていると思います。
時間がかかる理由の第一は私が

  絵巻物、あるいは絵画史料

の専門家ではないことが挙げられます。あとはもうどうしようもない私のセンスのなさ、無知、これまでの不勉強などが災いしています。
伴大納言絵巻は美術品として超一級だと私は確信しています。もちろんどなたがご覧になっても同じことになるかと思うのですが、あえて申し上げておきます。
高校の日本史の教科書に

    応天門の変

というのが出てきて、その史料としてこの絵巻物の「子供が喧嘩をしている」場面が掲載されていました。
あくまで史料ですからそれはそれでかまわないのですが、勘違いが起こることもあります。「この絵巻物は応天門の変」を描いたものである」という勘違いです。厳密に言うとこれは正しくないのです。この絵巻物はあくまで応天門の変を基に作られた説話を絵画化したものだからです。
それはどう違うのか? というと、応天門の火災の原因は、史実としてはどういうことであったのか、はっきりわからないのに、説話では伴大納言(伴善男)が犯人ということになっているのが最大のポイントです。

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日本史の教科書でも

    藤原氏による他氏排斥

が事件の真相かもしれないということが書かれていたのではないかと思います。時の大臣は左大臣が源信、右大臣が藤原良相。天皇の外祖父である藤原良房は太政大臣になって、やや政界の中心から距離ができています。
彼らに告ぐのが大納言伴善男。このおとこが大臣になったりすると藤原氏としてもやっかいです。このあとには藤原基経という期待の若者がいますが、まだ31歳でトップに立つにはもう少し時間がかかります。その間に善男などが右大臣、左大臣と上がっていこうものなら先がどうなるかわかったものではありません。こういう場合は無実の罪で陥れるのが一番です。
早い話が、事実としては放火ではないかもしれないのです。本来は火の不始末など、はっきりわからない原因で起こった火災を伴善男の責任とした可能性が否定できないということです。
絵巻物のもとになった説話ではさらに伴大納言が犯人であることが露見するのは子供の喧嘩がきっかけになっているという、とてもおもしろい内容になっています。疑獄事件と子供の喧嘩というアンバランスが絶妙だと思われませんか。
この話は平安時代後期には成立していた説話だと思うのですが、今我々が見ることができるのは鎌倉時代の説話集である

    宇治拾遺物語

です。『伴大納言絵巻』のほうが成立は早いですから、この説話集から本文を採ってきたのではなく、この説話集が典拠とした、平安時代の別の説話集にとって描いたものと思われます。

この絵巻物についてはこれまでにも断片的に何度か書いたのですが、せっかく講座を実施していますので、その記録を何度かにわたって書いてみようかと思っています。といいましても、講座は週に一度で年鑑16回のことですし、書き終わるのはいつになるやらわかりませんが。

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コメント

記事とは、無関係ですが。号泣。

センセ、先日はサッカーのご教授ありがとうございました。

で、何に号泣かと申しましと。
昨晩、住太夫さんのドキュメンタリーがNHK教育で、有りまして。録画は勿論しました、リアルタイムでも拝見しました。何度も繰り返し見てしまうのですが。

楽屋で、簑助さんと言葉にならない会話を交わされる場面で、思わず声を上げて泣いてしまいました。

戦友を通り越して、一緒に歩んでこられたんだろうな、と感じる、とても素晴らしい場面でした。

あの、空気を映し取ったNHKは、流石です。センセに出演依頼されただけのことはありました。

  • [2014/06/22 09:21]
  • URL |
  • 押し得子です。
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

♪押し得子さん

一昨日、久しぶりに神戸に行ったら、嬉しくて歩き回ってしまい、ずっとたまっていた疲労との相乗作用で週末はダウン。よって、テレビも観ていないのです。
簑助師匠とは七十年来のお付き合いでしょうし、文楽分裂時代もずっとご一緒でしたから、何も言わなくてもわかりあえるのでしょうね。余人の入れない世界かと。

サッカー、観ていますか? 私は全然です。ドイツを応援してはいますが。

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