新作への絶望と希望 

今年は夏の公演で子供向けの新作があり、秋の東京では鶴澤清治さん主導によるシェークスピアの新作があります。
新作の当たり年と言えそうです。
新作浄瑠璃を上演する必要があるのかないのか、これについてもいろいろな意見があるようです。
以前、新作のあり方について少し調べたことがあるのですが、あまり好意的な意見は多くなかったような気がします。
戦前戦時の「時局もの」といわれた作品はもはや日の目を見ることはないでしょうが、たとえば戦後松竹が試みた『椿姫』『お蝶夫人』『ハムレット』などの「赤毛もの」、『春琴抄』『おはん』などの「文芸もの」もほとんど顧みられなくなりました。私がこの中で観たのは『お蝶夫人』『春琴抄』『おはん』ですが、さほど印象に残らないものでした。
比較的人気があるのは

    『夫婦善哉』

と親子劇場の定番『瓜子姫とあまんじゃく』でしょうか。
新作というとそれだけで眉をひそめる方もあります。私の知り合いにも「新作だけは観ない」と宣言している人がいました。
新作を上演する暇があったら埋もれそうな古典をもう一度、という声もしばしば聞きます。
新作なんて作ったって仕方がないじゃないかという、いわば

    絶望

を抱く方もあるのです。たとえば石割松太郎氏は、ばっさりと新作を作ることの無意味さを書いていらっしゃいました(『文楽雑話』)。
それでも、有吉佐和子、三島由紀夫、井上ひさし、三谷幸喜などといった錚々たる劇作家、作家が新作文楽に筆を染めていらっしゃいますし、広く一般から新作を募集しようという試みもかつてはありました(文楽なにわ賞)。

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シェークスピアに題材を求めることもしばしばあり、先述の『ハムレット』のほか、最近では『あらし(テンペスト)』を山田庄一さんが脚色され、そして今回の清治さんです。
また、桐竹勘十郎さんは子どもむけなどの作品をずいぶん作ってこられました。鶴沢清介さんがそのつど作曲で協力されてきました。この夏の公演でも小佐田作品に曲をつけたのが清介さん、演出が勘十郎さんということでおふたりはなかなか熱心でいらっしゃいます。
つまり文楽の内部にも今なお新作への

    希望

があるわけです。
そして、そのわかりやすさなどが文楽初体験の方を招きよせる意味もあるのもまた事実です。
新作を作るというのは極めて難しく、まず作者がいない。芝居は書けても浄瑠璃は書けない、という場合もあります。しかしこういう時は太夫さんや三味線弾きさんが思い切って手を加えることを許せば何とか恰好はつくと思います。
作者のさがとして、自分の書いたものを一字一句変えてほしくないという気持ちがあると思います。そこをなんとか妥協しなければならないのではないかと思います。
清介さんは昔から「文楽には悲劇は何ぼでもおますねん。そやから新しいものには

    楽しいもの

が欲しいんです」とおっしゃっていました。実際、清介さんの作曲されたものの多くは明るく滑稽なもののように思います。
さて、今年度は新作の当たり年として、本当の意味で「当たる」かどうかは9月の清治さんのものが大きな意味を持ちそうです。
私は希望を持つ者です。

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コメント

新作

この夏の「かみなり太鼓」は良かったと 連れていった小4の女の子は言うておりました。文楽はじめてのかたが 其礼成心中を見に行ってくれて「人形の動きが楽しかった」と言うておりました。30年近く前に住大夫さんが宇野千代さんの作品を語られてたのは「おはん」だったのでないかと思いますが、良かったです。その前は 春子大夫さんが語られたと聞いたような記憶がありますから この演し物は20~30年に一度 上演されるのかなと思います。

♪田村順三さん

コメント、ありがとうございます。
『かみなり太鼓』を楽しまれたお嬢さん、『其礼成』を楽しまれたかた、それぞれによかったですね。
いつか、古典にもいらしてくださることを期待します。
田村さん、ますますお元気で。

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