珍しい動物 

『鳥獣人物戯画』の乙巻にはさまざまな動物が描かれています。牛や馬はおなじみですが、当時の日本人は見たことがないはずの動物まで描かれるのです。
想像上の動物は日本人でなくても見たことはありません(笑)。たとえば麒麟。アフリカにいるキリンではなく、想像上の麒麟です。早い話があのビールの麒麟です。

麒麟
↑鳥獣人物戯画の麒麟(模写。以下同じ)

獏もそうです。夢を食うというあの獏です。鼻は象のようです。

獏
↑鳥獣人物戯画の獏

龍もいます。これは想像上とはいっても、本当にいるのではないかと思うくらいリアルに彼らの頭の中にはイメージされていたようにも思います。『竹取物語』の中で、大伴大納言という人物が「龍というのは日本にいないものでもない」とまで言っています。

    雨を降らせる「神」

でもあり、絵や彫刻にも麒麟とは比較にならないくらい多く描かれているでしょうね。『宇治拾遺物語』には猿沢池に龍が出るという噂を広めた男が、あまりにも多くの人がその噂を信じるので、本当に出るかもしれないと思って自分も観に行くという話があります(芥川龍之介が「龍」という小説にしています)。
実際にいる動物でも、日本にいないものがあります。

    虎や豹

がそれです。『鳥獣人物戯画』では、肉食の獰猛な生き物というよりも、ぺちゃぺちゃと水を飲んだりしていて、どことなく愛嬌のある描き方のように見えます。

豹
↑鳥獣人物戯画の豹

虎
↑鳥獣人物戯画の虎

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当時の人はこういう動物を見たことはないと言っても、毛皮は知っています。平安時代の貴族は冬の寒さを凌ぐために毛皮を着用することがありました。ただ、十世紀初めの頃に定められた規則で、身分によって着用してもよいものが決められていたようです。虎の皮は五位以上の者、豹の皮は参議以上と参議でない(非参議という)三位の者、もっとも価値のあるのは貂の皮でこれは参議以上でなければ着けてはいけないことになっていました。『源氏物語』の末摘花という女性の姿を見た光源氏はびっくりします。面長、痩身、長くて先の赤くなった鼻などの容貌もそうなのですが、寒い冬のある日、彼が見た末摘花は

    黒貂(ふるき)の毛皮

を着ていたのです。女房たちが唐物の食器を用いたりしていますので、末摘花は唐物好みだったようではありますが、毛皮は若い女には似合わないと考えられていたのです。昨今とはかなり違いますね。
虎と言うと、虎の頭(のつくりもの)を新生児のお守りのように用いることもありました。『紫式部日記』に生まれたばかりの皇子(一条天皇の皇子である敦成親王。母は藤原道長の娘)を湯に入れる様子が描かれていますが、その時に皇子を守るために刀と虎の頭を女房が持っています。
象も当時の人は見たこともない動物だったでしょうが、絵や彫刻では

    普賢菩薩

の乗り物として描かれることがあるので、仏画仏像ではおなじみだったと思います。あの末摘花の垂れ下がった鼻も、光源氏は「普賢菩薩の乗り物のようだ」と言っています。
海外からさまざまな動物がもたらされたこともありました。オウムやクジャクなどがそれです。水牛や羊も来ましたし、唐犬や唐猫もペットとして愛玩されたようです。『源氏物語』で柏木という男がかねてより恋い慕っていた女三宮(光源氏の妻)の姿を見る場面がありますが、そのきっかけを作ったのが唐猫でした。

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コメント

ポール・マッカートニー

鳥獣戯画。本日午後から国立京都博物館にまいります。

昨日行った知人が「平日でも朝から3時間待ち!」とメールをくれました。

待ち時間に読書しようと2冊、持ってきました。

生涯二度と見られないかもしれないと、昨年思い切ってポール・マッカートニーのコンサートに行ったときの気分にどことなく似ています。

♪やたけたの熊さん

待つのは大変ですが、ご健闘をお祈りします。ほんとに、本を一冊読めそうな感じですね。
私はもう一度行くつもりでしたが、断念しました。ウサギとカエルの相撲を観るために、もう少し長生きしたいです(笑)。

150分の50分

鳥獣戯画展、くまさんの1日前に行きました。
1時間位の待ち時間を想定して本を1冊持って行きましたが、読み切ってしまい寒さが身にしみました。(安くでチケットを買った罰かもしれません)
コピーなどは家の茶碗などで見ていますしたがが、実物は違いました。
修復の技術にも驚かされましたが、生き生きとした動きや、特に生き物の体の線の描き方がすばらしいと感じました。

♪花かばさん

今は写真技術が優れているので、きれいに色が出ますが、鳥獣人物戯画の場合は墨絵なので、やはり線の美しさに目が行きますね。
おつかれさまでした。

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