道頓堀の残り香(1) 

先日、ある事情があって、カメラマンのTKさんと一緒に文楽の師匠(太夫)のなさっているお稽古を拝見させていただきました。お弟子さんといっても文楽の技芸員さんではありませんから、文楽劇場の稽古場で、というわけにはいかないのです。
師匠が

    「道頓堀で稽古します」

とおっしゃるので、私はいささかうんざりしました。あの、がちゃがちゃとした通りに行くのか・・・と思ったからです。最近の道頓堀は芝居町という歴史が漂わせていた文化の香りとでもいうものがなくなったように思えて、どうにもいけません。
具体的な場所を聞かずに師匠についていったので、「ここです」と言われたときはびっくりしました。道頓堀といってもファッションビルなどの林立する地域ではなく、かつての劇場街の東の端のあたり。目の前にある駐車場はまぎれもない、なつかしの

    朝日座

のあったところです。
そして、師匠が入っていったのは、なんと「蕎麦の更科」さんです。師匠にとっては若き日からおなじみのお店。ここは昔、朝日座に「文楽定食」などを出前もされたそうです。文楽定食というのは甘く炊いた揚げの乗った大阪らしいきつねうどん(いわゆる「あまき」)とご飯のセットだったそうです。

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腹ごしらえでもしてから行くのかな、と思ったら、ここの二階で稽古をなさるのだそうです。そば屋の二階というと独特の雰囲気があって、男女の逢い引きに使われたとか、史実かどうかを云々しないなら赤穂の義士が討ち入り前に集合した場所でもあったとか、

    秘密の場所

のイメージを漂わせなくもないのです。
こちらのお店は狭い階段を上がっていくと店員さんが常駐するわけでもない空間。座布団にテーブル。壁には数々の浮世絵、隅の部屋には立派な見台が置かれていて、いかにも道頓堀の店という感じで、ここで浄瑠璃の稽古というのはしっくり来ます。
この日はその見台の置かれている部屋に数人のお客さんがいらして、そのすぐ近くで稽古をするというのです。師匠はあらかじめそのお客さんにことわりを入れていらっしゃいました(お客さんたちはおひらきの時間だったようで、まもなくお帰りになりました)。
なかなか

    いい雰囲気

ですよね。芝居のあとでそば屋に入ると音楽は流れているものの、二階から何となく三味線の音と浄瑠璃の声が聞こえる。ほとんど織田作之助の『夫婦善哉』の世界ではありませんか。
さて、稽古なのですが・・・。

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コメント

芝居町

あちこちの街並みは没個性になり、全国どこに行っても全国チェーンの居酒屋などが軒を連ねています。そんな街並みのなかでも芝居町・道頓堀の変わりようには落胆しています。

朝日座跡むかいのお蕎麦屋さんですね。なんとなく分かります。そのよこに文楽のかたがたがよく来られる居酒屋がありました。昨年閉店の案内ハガキが届きました。この居酒屋で、某大夫さん(たぶんお蕎麦屋さんでお稽古をつけられた)と隣合わせになったことがあります。このとき越路師匠の素顔をおもしろおかしくお聞きしました。もう20余年まえのことです。

♪やたけたの熊さん

越路師匠の悪口思い出話をなさったなら、多分、同一人物ですね。
この日は土曜日で、通りは人、人、人。蕎麦屋さんに避難した、という感じでした。

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