能勢へ(7)名月姫の悲話 

名月姫については兵庫県尼崎市の尾浜八幡神社と能勢の二箇所で異なった伝承があります。
実は両者の伝えるところでは能勢の立場がかなり違うのです。簡単にいうと尼崎の話では能勢は憎まれ役に近く、能勢の伝承ではさすがにそんなことはないのです。
まず、尼崎の伝承です(微妙に異なった伝えもあるようです)。子のなかった刑部左衛門国春という人が、願をかけて

    八月十五夜

に娘を得たため名月姫と名付けます。大変な美貌でしたが、能勢の家包(いえかね)という人物が一目惚れして奪い去ってしまいます。悲嘆にくれた父は、娘を捜している途中で大輪田の泊(神戸)を修復するために人柱を立てるという平清盛に捕えられます。父が人柱にされるということを夢で知った名月姫は福原に行き、何とか再会を果たすことができます。夫の死後尼崎に戻った名月姫は尾浜に大日堂を建てたそうです。これはこれで新作浄瑠璃になるのではないかとも思います(笑)。
一方、能勢では尼崎の名月姫を妻にして幸せに暮らす能勢家苞(いえづと)という人物があり、その幸せを破るのが平清盛であるということになっています。いくら好色な清盛でも、能勢の農家の妻にそこまで執心するとは思えないのですが、そこは

    たぐいまれな美貌

の女性ということでいちおう納得しておきます。ともかく、清盛の一声で福原に召されることになった名月姫は、まさか逆らうこともできず、福原に向かうのですが、峠を越える時に自害してしまうのです。そこでその峠を名月峠と言うようになり、今も名月姫、その父、夫の三人の墓というものが残されているわけです。また、嫁入りの車などは不吉だから今でもこの峠は越えないという話もあります。
というわけで、「尼崎の名月姫が能勢の男の妻となり、福原へ行く」というところは共通していますが、能勢の男の人物像はかなり異なって見えるのです。

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尼崎の話もおもしろいのですが、私が作るのは能勢のお話ですから、やはり能勢の伝承を基にすることにしました。
単純化しますと

    権力の横暴

でいやな男に横恋慕された女性が、本来愛する男と引き離されそうになるため、名月峠で自害する、という骨組みになります。それをそのまま用いつつ、「もし月が出れば名月姫の二の舞にならずに済む」ということにしたのです。しかしそれではさすがに無理がありそうですので(笑)、そこをいくらかでももっともらしくするように、この二人(周作と桂)の愁嘆場は原作ではかなり長いものにしていたのです。しかし、やはりくどいということなのか、あるいは上演時間のことなどもあって、大幅にカットされました。
それはともかく、ここでも

    名月峠の霊力

というか、名月姫の悲話が危機に瀕した若者を救う話になります。大けやきが「名月峠に行け」と言い、名月峠は「ではすべてを解決しましょう」と言うわけです。
能勢の二つの名所である大けやきと名月峠がタッグを組んで(笑)

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