fc2ブログ

生写朝顔話5(有朋堂文庫による) 

摩耶が嶽 切場
浮洲仁三郎がいろりの火に当たっていると、千里が出てきて話しかけます。千里は荒妙やその手下たちの仕事が山賊だと知らず、猟師だと思っているのです。
千里ははじめて仁三郎を見たときから恋しくなり、いつぞや母が連れてきた娘に習って恋文も書いたのですが、返事もくれません。そこでついにここで思いを打ち明けるのです。すると仁三郎は「もし本気でそう思ってくれるなら頼みがある。あなたの母の持っている

    『女の病気を治すお守り』

というものをそっと見せて欲しい」といいます。千里は「それは母が二重箱に入れて鍵をかけ、その鍵は母が肌身離さず持っている。でもなんとかするから、ちょっと奥の間へ」といって仁三郎の手を引いて連れて行きます。
そこに人買いの

    輪抜吉兵衛

が駕籠を伴ってやってきます。荒妙を呼び出して「この間あずかったこの娘は泣きわめくばかりで、奉公はいやだといって逃げようとする。損をしないうちに返しに来た」といって深雪を駕籠から引き出します。
荒妙が、山蛭がさらってきた娘を吉兵衛に渡すと、吉兵衛はその娘を連れて帰ります。
荒妙は深雪を折檻すると脅して奉公に行けと詰め寄り、それでも逃げようとする深雪を引きずりまわします。そこに出てきた千里があまりのひどい仕打ちに「自分をかわりに売ってくれ」といいますが荒妙は摂関をやめず、ついに深雪は倒れてしまいます。
そこに手下の眼太がやってきて、大名の金飛脚を見つけたので襲ったところ手ごわいので助けが欲しいといって戻っていきます。荒妙は刀を取って自ら加勢に行きます。
仁三郎が出てきます。千里は事情を話してまずは意識を失った娘(深雪)を助けたいと言いますので、仁三郎は「今こそ例の『お守り』を持ってきて欲しい」と言い、千里は立ち去ります。仁三郎が娘の身につけている守り袋を見ると「芸州岸戸の家中秋月弓之助が娘深雪」と書かれていました。
そこに千里が箱を持ってきます。それを深雪の額に当てると深雪は息を吹き返します。千里は深雪を逃がしてやるといって御影のほうに降りる近道を教え、深雪は感謝して逃げていきます。
仁三郎が箱を砕くと中から山岡玄蕃の密書と薬王樹が出てきます。「荒妙こそ玉橋の局と名乗ってこの薬王樹を奪った大友の残党、謀反人だ。あなたとの縁もこれまでだ」と仁三郎は千里に言って一間に駆け込みます。
そこに荒妙が戻り、壊れた箱を見て驚き娘に事情を問うと、千里は喉に刀を突き立てます。千里が事情を話すと荒妙は仁三郎が大内の回し者だと気がつき、一間の障子を引き開けます。

にほんブログ村 演劇ブログへ
 ↑応援よろしく!

kgaeonrjuiをフォローしましょう

するとそこには装束を改めた仁三郎がいました。そして「駒沢次郎左衛門の弟、三郎春次」と名乗り「幼年の頃、父に勘当されたが、先非を悔いて大明国に渡って医官となった。その後日本に戻ったが父は亡くなっていた。多々羅の浜で怪しい老女を見てそれが薬王樹の盗賊と知り、この摩耶まで来て大友の残党浮洲仁三郎と名乗って潜入し、薬王樹を奪い返したのだ。それもこの娘千里のおかげだ」と語ります。
すると荒妙は腹に刀を突き立てて千里に言います。「あなたは私の娘ではない。主君大友宗鎮様の忘れ形見の

    菊姫様

です。宗鎮様がかつて天下を取ろうと謀反の旗を揚げられたとき、豊前の小倉城に大内義隆が攻めてきた。宗鎮様がその最期に際して『姫を伴い落ち延びて成人するまで育ててその後は尼にしてわが菩提を弔わせてくれ』とおっしゃいました。ふたたび大友を世に出すための軍用金として悪行を重ねてきました。薬王樹を奪ったのは大内を滅ぼすため。また祈祷にことよせて娘をかどわかしては売ったりしたが、その罪科が姫君の仇となったのです」と悔やみ嘆きます。
荒妙と菊姫はお互いを思いやって泣き、春次もその心を察します。
そこに関助が戻ってきて深雪の行方を荒妙に問い詰めます。すると春次が「先ほど守り袋の書付でわが兄次郎左衛門の婚約者の深雪様だとわかった。だから都に向かわせた」と伝えます。
それを聞いた関助が駆け出すと蘆柄伝蔵が現れて山岡に注進するというので春次は小柄の手裏剣を投げ、関助がとどめを刺します。
荒妙は菊姫を哀れんで、未来を約束する

    盃を交わして

欲しいと春次に頼み、春次はそれを聞き届けてやるのでした。

このあと、浜松、宿屋の口(笑ひ薬)、宿屋(大井川を含む)と続きます。

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://tohjurou.blog55.fc2.com/tb.php/3601-01c43ad8