小弓と蹴鞠(1) 

今、「あそび」といったら、楽しみ、遊興の意味が強いと思います。ドライブ、カラオケ、スマホゲーム。プリクラを撮ったりUSJに行ったりするのもそうでしょう。おじさんたちはゴルフ、パチンコ、マージャンなどで遊ぶかもしれません。「遊んでないで勉強しなさい」と親に言われるように、「遊び」は「学び」に対する言葉のように思われているかもしれません。
しかし、昔はもっと幅広い意味がありました。岩波の古語辞典は「あそび」について「日常的な生活から別の世界に

    身心を解放

し、その中で熱中もしくは陶酔すること」と説明しています。具体的には、宗教行事(神楽など)、狩猟、舟、酒宴、音楽などに用いられる言葉だったのです。
「あそびわざ」というと勝負事、技量をくらべる競技、という意味になります。たとえば、囲碁、双六、攤(だ)、偏つぎ、弓、蹴鞠などがそれに当たるでしょう。
『枕草子』の「あそびわざは」の段に

  あそびわざは、小弓、碁、さまあしけれど鞠もをかし

とあります。
清少納言は競技のなかで「をかし」と言えるものの筆頭に「小弓」を挙げているのです。また「鞠」つまり蹴鞠についても「さまあしけれど」という注釈付きですが銅メダルを与えているのです。囲碁は当時の女性がとても好んだ「あそびわざ」でしたが、小弓や鞠は競技に参加するのではなく見物するのでしょう。

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小弓というのは、文字通り小さな弓のことです。狩りに用いるような、あるいは騎射(馬に乗って矢を射る)などで武官たちが腕を競うようなスケールの大きなものではなく、貴族の邸宅の外周にあった簀子(すのこ。縁のこと)でできる程度の遊戯用の弓です。射る人は座って左膝を立てて、それで左肘を支えて弓を構えて射るのです。もちろん的をセットします。
これなら建物の中にいる

    高貴なお姫様

でも簾越しに見物できそうです。射るたびにドキドキして的に当たったら拍手喝采。楽しそうな雰囲気が目に浮かびます。
男性貴族たちは我こそはいいところを見せようというわけで普段から稽古もしたのでしょう。
『源氏物語』若菜上巻の巻末近く。
三月頃の空のうららかな日、光源氏は公私ともに順調なあまり退屈な時間をもてあましています。そこに衛門督(柏木と呼ばれる人物)などがやってきました。話をするだけではつまらないので、光源氏は何かおもしろいことをさせてそれを観たいと思うのです。その時に最初に名前を挙げたのが小弓なのです。

  例の、小弓射させてみるべかりけり
  (いつものように、小弓を射させて観ればよかった)

「例の(いつものように)」と言っていますから、やはりこういうときにもっとも手軽でおもしろい「あそび」は小弓だったのでしょう。
ところが、小弓をさせるような若者がこのときいなかったのです。そのために蹴鞠に変更するのですが、それが重大な事件を引き起こすことになってしまいます。

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