小弓と蹴鞠(4) 

若い男たちが夢中になって蹴鞠をしています。時節は弥生のおわり頃。花吹雪が激しいのですが、そんなこともおかまいなしで興じています。
冠をあみだにかぶって動き回る若い男、華やぐ見物衆、花吹雪、弾む鞠。なんとも「乱りがはし」くて、

    映像的

ではありませんか。名場面としか言いようがありません。
家には秩序というものがあります。しきたりとかルールというよりも秩序。そこに住まう人がお互いを支えて保っている心の安定。これが乱れると家族は崩壊しかねません。実はもろいものである家族というものがかろうじて成り立っているのはこの秩序によるのではないでしょうか。その正体が何であるかは家族によって異なるでしょう。そしてまたこの秩序というものももろいものだと思うのです。
さて、寝殿の西側に住まいする女三宮とその女房たちもやはり鞠を観たいと思って当然です。声も挙げたでしょう。それに引き寄せられるように蹴鞠チームはいくらか女三宮のいるほうに寄って行ったのです。
やがて夕霧と柏木は少し休憩、とばかりに寝殿の南の階(きざはし)に腰を下ろします。寝殿の中央にある階段です。光源氏がいるところはどこかよく分かりませんが、寝殿の東端の簀子か東の対の西側の簀子だろうと思います。そうなると夕霧と柏木は光源氏から少し遠ざかったところで休憩していることになります。
乱れ散る桜の下で、二人の

    美貌の若者

が腰を下ろしています。絵になります。

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柏木はふと背後に気をとられます。ここが寝殿の西側、つまり女三宮の住まいではないか。とすると自分のいる場所からさほど遠くないところにあの方はいらっしゃるのだ。
柏木はかつて女三宮を妻にしたいと願い、三宮の父である朱雀院にも訴えていました。そして彼は朱雀院も好意的に考えてくれていたと思い込んでいました。にもかかわらず女三宮は光源氏の妻になりました。普通ならそれで諦めるのでしょうが、この人は今なお

    執着

しており、光源氏が彼女をあまり大事にしていないという噂まで聞いていますので、「もし自分の妻になってくれていたらおろそかに扱わないのに」「彼女は今不幸だ」「光源氏も高齢だから、出家するかも知れない、そのときは私が」などと思い続けています。女三宮の乳母子(めのとご)に小侍従(こじじゅう)という人がいます。乳母子は文字通り乳母の子ですから、小侍従は女三宮より身分は低いもののほんのわずかにお姉さん。兄弟姉妹同然に育てられることがあり、成長すると乳母子がそのまま

    女房や従者

になることも多いのです。小侍従も成長してそのまま女房になり、以前から柏木とは親しくしていました。そこで柏木は小侍従から女三宮のことを聞いては心を慰めていたのです。ちょっと変わった男です。いや、案外たいていの男はそういう面を持っているのにそれがあまり表に出ない、あるいは出さないのです。彼はそれをあらわにする人物ということになります。

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