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女たちの『国性爺』(2) 

この芝居に出てくる主要な女性としては、和藤内母と錦祥女のほかに華清夫人、柳歌君、小睦(小むつ)、栴檀皇女などがあります。この中では柳歌君と小睦の存在が重要です。
華清夫人は今回の上演ではカットされていますが、韃靼の侵略や李蹈天の反逆に逃げ切ることができずにお腹に子を抱いたまま亡くなります。そこで呉三桂が華清夫人の腹を切って皇子を取り出し、我が子を殺して身代わりにするというなんとも

    血なまぐさい

ことをするのです。今上演されないのは、時間の関係や四段目を上演しないので皇子の話があとに続かないから、ということもあるのでしょうが、やはりこの血なまぐささもカットされた理由のひとつだったのではないでしょうか。栴檀皇女は唐土と日本を結びつける役割、和藤内を唐土に招く役割として重要ですが、そこまでだと思います。柳歌君はなかなか勇ましいのですが、今の上演ではかなりその魅力が減量されています。栴檀皇女を連れてくるところも原作では我が子を抱きながら皇女とともに出てくるのです。呉三桂から子どもを置いて皇女と逃げろと言われると、我が子を見捨てて主君第一に逃げ落ちます。

    芦辺での戦い

は、今は安大人との戦いですが、原作は安大人の家来との戦いで、もっと激しい描写になっています。ですから、段切の「乱れし髪をかきあげて、あたりを睨んで立つたりし」というあたりは今の上演で受け取られるよりはるかに凄まじい形相なのだろうと思います。

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私は特に小睦という人に興味があって、この人の性根はどんなものなのだろうと思っていました。
先日あらすじを書きましたが、以前読んだ時は小睦のことをあまり考えなかったせいか、彼女の役割をもっと軽視していたのです。今回読み直してみて、やはりこの人はおもしろい存在だと思うようになりました。
彼女は四段目以降では

    今牛若

といわれるような武者の面を持っています。「濱伝ひ」「もろこし舟」あたりでは和藤内をやり込めるような面もあり、一方、和藤内にたしなめられるようなこともありました。嫉妬深く、感情をはっきり表に出す、よくも悪くも都会的な人ではないだろうと思います。
この公演で小睦は吉田一輔さんの役です。一輔さんはいつもそう思うのですが、とてもきれいで上品で正確な動きをされていたように思います。この人の人形の姿はばらつきがなく、安定感があります。時として物足りなさを感じるのは動きが小さくまとまったように見えることと、性根があまり明確に見えてこないことです。小睦の嫉妬などは

    「ちょっと妬いてみる」

という程度に感じられ、私は「何だか違うような気がする」と受け止めました。一輔さんは間違いなく次代のホープです。もうすぐ幸助さんとともに名前を変える話も出てくるのではないでしょうか。そういう人だからこそ、言いたいことは言わせてほしいと思っています。

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