薔薇(1) 

バラという花は毒々しさを孕んだ華やかさを持っていると思います。香りも妖艶で、あの刺がまたなんともこの花らしくていいです。どうしてもあの豪奢な八重のものが頭に浮かびますが、一重のバラも存外いいものです。双子葉類で5弁の花です。
オペラなどで知られる

    カルメン

は何となくバラをくわえて踊っているような印象を与えがちだと思うのですが、原作者のメリメはそんなことは書いておらず、やはりカルメンの毒のあるイメージがバラに結びつけられたものでしょうか。三島由紀夫はオペラでは『カルメン』が一番好きだったと聞いたことがありますが、あの『黒蜥蜴』の脚色家はさもありなんと思ってしまいます。そういえば、深紅のバラの品種に「カルメン」というのもあるようです。
京都には綾部バラ園、大阪には靭公園や中の島公園、兵庫県にはほかにも須磨離宮公園や尼崎市農業公園など、バラを楽しめる公園や名所があちこちにあります。私の家の近くでは、隣町の伊丹市に

    荒牧バラ公園

というなかなかすばらしい名所があります。荒牧は、伊丹市といっても北の端に位置し、宝塚市の中に首をつっこんでいるような地域にあるので、あまりよその町という感じがしません。私が頻繁に使う国道をまっすぐ走っていると宝塚市から伊丹市に入り、またすぐに宝塚市になるのです。伊丹市が首をつっこんだ形になると書いた所以です。ここには「天津乙女(あまつおとめ)」など伊丹生まれのバラがあります。

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仮名で「ばら」「バラ」と書くのもいいですが、漢字では「薔薇」と書き、いかにも刺がありそうな(笑)難しい字で、なんとも趣があります。音読みすると「さうび=そうび」で、『源氏物語』「賢木(さかき)」巻にも出てきます。
妻の葵の上を亡くした(これは「葵」巻)あと、六条御息所は伊勢に下り、父桐壺院も亡くなります。そして父の一周忌に光源氏が思慕し続けてきた藤壷中宮が突然出家します。光源氏からの理不尽なまでの求愛を拒絶する藤壷中宮の、光源氏を愛するがゆえの決断であったと思われます。世の中は光源氏とは相容れない右大臣が実権を握り、光源氏は何もかもうまくいかないという思いを抱いています。二十代前半の蹉跌の時期、その鬱屈を晴らすかのように彼は

    朧月夜

といわれる女性との道ならぬ恋に溺れます。彼女はなんと敵方といってもよい右大臣の娘。ロミオとジュリエット、久我之助と雛鳥ではありませんか。そして朧月夜との逢瀬をよりによって右大臣その人に見つかってしまい、これが彼の須磨退去の直接の原因になるのです。
「薔薇」が出てくるのは、密会が露見する前、彼が鬱屈した日々を送っている場面です。光源氏が親友でライバルの三位中将(元の頭中将)と「韻ふたぎ」という遊びをして、そのあと負けた中将が「負けわざ」という饗応をするところに

  階(はし)のもとの薔薇、けしきばかり
  咲きて、春秋の花盛りよりもしめやかに
  をかしきほどなるに

とあるのです。

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