六世豊竹呂太夫へ(2) 

群馬県の青木正少年は、大阪の十世若太夫のところに弟子入りして豊竹若子太夫としてデビューしました。勉強家で、同年代の竹本綱子太夫(のちの豊竹咲太夫)とともに少年太夫として活躍されたそうです。
昭和42年4月に師匠の若太夫が亡くなったため、兄弟子であった三世春子太夫に入門、その秋に22歳で五世呂太夫を襲名されたのでした。
師匠が亡くなったとき、まだ若子太夫だった呂太夫さんは、かつてよく遊んだ若太夫の孫で20歳になっていた雄治青年(祖父とともに東京暮らしをしていた)と風呂に行き、「雄ちゃん、君は声が大きいから

    太夫になれる」

と勧めたそうです。将来に不安を抱いていたものの、太夫になる気などまったくなかった雄治青年は簡単には首を縦に振らなかったようですが、なおも上手に説得する若子太夫さんにうまく乗せられる形でついに大阪行きを決意し、大阪府吹田市の春子太夫邸に内弟子として住み込みました。この雄治青年こそ、三代目豊竹英太夫その人です。
英太夫さんは小学校高学年の頃から勉強に目覚めたらしく、大阪の市立中学では優秀クラス、東京に転居してからも成績がよく、東京都立の一流高校に進学されました。ところが大学受験にうまくいかず、さあどうしようかという時に祖父若太夫が亡くなり、語弊があるかもしれませんが、

    絶妙のタイミング

で若子太夫さんから文楽入りを勧められたわけです。同期入門には吉田和生、吉田簑太郎(三世勘十郎)、吉田玉女(二世玉男)、吉田昇二郎(昭和50年退座)そして竹本緑太夫(故人)らがいらっしゃいました。この顔ぶれが今揃っていたら、と思わせるすばらしいメンバーです。

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英太夫さんは心根の優しい春子師匠のもとで稽古に励まれていましたが、わずか2年後、若太夫三回忌の追善で「酒屋」を語っていらした春子師匠はもうすぐ語り終えるというところで胸の痛みで悶絶されました。一時退座して復帰されていた嶋師匠が急遽代演されたそうですが、美声で知られた三世竹本春子太夫は心筋梗塞でまもなく亡くなりました。
若太夫追善のひとつ前の東京公演で春子師匠は『妹背山』の道行だけのはずが、突然「山の段」の大判事の代役が回ってきて、そうとうつらい思いをされたようです。それが引き金になったのか、この四月はあまり体調がよくなかったらしく、しかし師匠の追善ですから出ないわけにも行かない。無理に無理が重なったのでしょうか。
師匠を失った英太夫さんでしたが、嶋師匠や呂太夫さんとともに

    四世越路太夫

門下となり、再出発されました。
英さんは、実力ある呂太夫さんを敬慕されて「自分は将来呂太夫兄さんの右腕になればいい」とまで考えられていたそうです。少し年下で一緒にこの世界に入った親友の竹本緑太夫さんとともに研鑽を積まれました。ところが緑太夫さんはわずか48歳で亡くなり、また呂太夫さんまでもが55歳にして亡くなり、文楽太夫陣は

    大きな痛手

を蒙りました。英太夫さんにとってもつらい試練だったのではないでしょうか。英さんにとって救いは小松太夫さんや嶋師匠の存在だったようです。ところが小松太夫さんもご病気で苦しまれたあげくに亡くなられました。

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コメント

 緑太夫さんが亡くなられたのが1999年1月5日、その2か月後に相生太夫さんも亡くなられ、2001年には三味線の鶴沢八介さんも亡くなられ、という、怒涛のように悲しみが重なり押し寄せる日々であったことを思い出します。
 とりわけ、緑太夫さんの追悼文集「緑の風」には、ご健在だった越路太夫師匠、五世呂太夫さんらの文章もありました。そして呂太夫さんが逝かれたのが2000年9月9日、東京公演の「忠臣蔵」通しの初日でした。
 今考えても、文楽の伝承にとって、痛恨の極み、としか言いようがありません。
 「砧の音、夜嵐、悲しみの声、虫の音、まじりて落つる露涙、ほろほろはらはらはらと、いずれ砧の音やらん」という文章が思い出されてなりません。
 

♪まゆみこさん?

すみません、どなたかわからなかったので、勝手に「まゆみこさん?」としてしまいました。違いましたたらごめんなさい。
八っちゃん、こと八介さんも惜しい方でしたね。音楽は何でも好き、中でもジャズに詳しく、写真もよく撮られた方でしたよね。亡くなってもう15年になりますね。
緑さんは生真面目、誠実な方という印象があります。呂、緑は文楽きっての二枚目で、女性ファンも多かったですよね・・・

 ついうっかり、名前とタイトルの欄を間違えていました。さすが藤十郎さま、文体だけおわかりいただけるとは・・・
 

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