六世豊竹呂太夫へ(4) 

七十歳になられる来年四月の公演で、豊竹英太夫さんが呂太夫の六代目を襲名することが先日発表されました。新聞では「若太夫の前名」を継ぐという紹介がなされていましたし、それは事実です。しかし英さんの心の中を忖度するに、「自分を文楽の世界に導いてくれた

    呂太夫兄さんの名

を継ぐ」という意識も強くおありなのではないでしょうか。
五世呂太夫は、美男で、華があって、声がよく、力があり、節が正確で、勉強家。義太夫節の深奥をかなりきわめていらっしゃったようでした。ファンは多く、理路整然として弁舌も滑らかなためインテリ受けもしました。それだけにベテランとなった英さんがこの時期に呂太夫というのは、五世を知る人の中には違和感を覚える方もあるようです。実際、SNSでは歓迎しないという声すらありました。呂太夫は

    呂勢太夫 さん

が継ぐべきではないかという人もいました。実は私自身、呂勢さんの呂太夫襲名を期待していたひとりでした。呂勢さんは二世呂太夫の子息でいらっしゃった四世鶴澤重造師に義太夫節の手ほどきを受けられ、五世呂太夫、四世呂太夫の嶋師匠の門下となられました。さらには五世の美質をよく受け継いでいらっしゃるようにもお見受けしており、呂太夫という名にはもっとも近いように思っていたのです。辞められた鶴澤浅造さんは、師匠の重造師を今も敬慕されていますが、「年忌の楽屋内へのくばりものなど、今は文楽の人ではない自分にはできないが、呂勢君がしてくれました」とおっしゃっていました。

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では私は英さんの呂太夫襲名をどう考えているのかというと、大いに歓迎しています。上の人たちが辞めていかれて、下の人たち(例えば千歳、呂勢、咲甫など)が台頭してきたこの時期、実は英さんや津駒さん、松香さん、三輪さん、津国さん、少し離れますが文字久さんらの存在は無視できない、いやそれどころかこの人たちが活躍してくれないとほんとうの意味で義太夫節の真髄が継続していかないのではないかとすら思っています。義太夫節はやはり人の情愛を語るものです。それには人間性が出ます。いくら技があっても、声がよくても、知識があっても、まだ人間として円熟していない人にはどうしても語りきれないものがあるように思います。英さんがこんなところで

    ベテランに収まって

しまってはいけない。今から五年間、中堅としての最後の期間だとお思いくださって目一杯切り場を受け持つ覚悟を持っていただきたいのです。本来ならトップの太夫であるはずの五世呂太夫さんや切場語りに向けてしのぎを削っているはずの緑太夫さんがいらっしゃらないことでむやみに責任を感じられることはないと思うのですが、やはりお二人ともっとも親しい位置にいらっしゃった方としては覚悟を決めて邁進していただきたい。そのために

    襲名

はとても重要な役割を果たすことがあると思います。今英さんが名乗る名としては呂太夫がいろんな意味でふさわしいだろうと私は思うようになりました。呂勢さんにはいつの日か「嶋」の名前が譲られることもあるかもしれません。
そして、津駒太夫さんもいつまでもこのお名前では切の字を預かることはできないでしょうから、たとえば「濱」という名前などお名乗りいただきたいと陰ながら希望しています。

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コメント

襲名の意義

 不思議なことに、私が文楽を本格的に見てきたこの20年ほどで、太夫の大きな名跡への襲名はありませんでした。(綱太夫→源太夫を除いて)
 襲名は、名に寄せられた期待、これまでの芸系、先人への感謝を受け継ぎ、次の世代へとバトンタッチするために名を預かること。しかし「名を負う」ことが、その人の芸格、芸質を一段大きいものにするということは事実です。
 当代の勘十郎さん、玉男さん、清十郎さんらがそうです。そしてその名を負われた方々は、一様に座頭、立女方の位に負けない芸の広がり、深まりを見せておられます。
 三味線も、錦糸さん、燕三さんなど、先代より託された芸の品格を見事に現在に伝える貴重な存在となっています。
 英太夫さんが呂太夫を襲名することで、太夫の方々の襲名、ステップアップの機会となってくれれば、と思います。お書きのように、津駒さん、呂勢さん、文字久さんら、もう一段上に行っていただかねば、という方ばかりです。千歳さんもそうです。そして時は熟していると思います。

♪まゆみこさん

文楽劇場以後で言えば文字→住、伊達路→伊達、織→綱などはありましたが、花形太夫の襲名というのはほんとうにありませんでした。
どういう理由なのかは知るよしもありませんが、今後は劇場や協会も考えていただきたいし、ベテランの太夫さんも、自分たちがなかなか襲名できなかったからこそ後輩はいい名前を付けるように勧めてもらえないかと思うのです。
ある方が津駒さんに「津太夫名乗ってください」とおっしゃったら「そんなあほなこと」とお返事されたそうです。私は「あほなこと」とは思いません。2018年には津駒さんも古希になられるはずです。この期を逃さず濱は津を名乗ってほしいです。

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