「呂」 

豊竹英太夫さんの六代目襲名発表によって呂太夫の名が話題になり、改めて思うのですが、なぜ「呂」なのでしょうか。私など「呂」の文字からは「風呂」や「語呂」を一番に思い浮かべてしまうのですが、「風呂で浄瑠璃をうなっていたから」とか「言葉の調子がいいから」という理由で「呂太夫」になったとは思えません(笑)。「いろは」の文字は本来「以 呂 波」を崩したものですから、仮名の二番目という印象もあります。ではこのことと関わりがあるのでしょうか。なかなか難しい問題なので、この際、漢音で「りょ」、呉音で「ろ」と読む「呂」の字について少し考えてみることにしました。
日本の古典文学や伝統音楽に興味があるなら「呂」の字から「風呂」や「語呂」を連想していてはいけないのです。やはり

    「律呂」

または「呂律」を思い浮かべるべきでしょう。「りつりょ」「りょりつ」。「呂律」と書いた場合は「ろれつ」と読むこともあって「ろれつが回らない」という言葉で今に伝わります。「呂」と「律」がうまく転回しないのが「ろれつが回らない」なのです。ということでお分かりのように、「律」と「呂」は対語になっています。日本や中国の伝統的な音楽で基本とされた音は

    十二律(じふじりつ)

といって、日本では壱越(いちこつ)、断金(たんぎん)、平調(ひやうでう)、勝絶(しようぜつ)、下無(しもむ)、双調(さうでう)、鳧鐘(ふしやう)、黄鐘(わうしき)、鸞鏡(らんけい)、盤渉(ばんしき)、神仙(しんせん)、上無(かみむ)がそれに当たります。そのうち陽性に属するのが「律」(壱越、平調、下無、鳧鐘、鸞鏡、神仙)、陰性が「呂」(「律」の音以外)です。
また、律旋、呂旋というと雅楽などの音階で、律旋は平調、黄鐘調、盤渉調、呂旋は壱越調、双調、太食(たいしき)調。
「呂」はこのように日本の音楽には欠かせない文字なのです。

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三国志に登場する豪傑の「呂布」や孝子で知られる唐の「呂向」のように、「呂」といえば中国の人の姓にしばしば見られます。国名にも地名にもあります。そのような文字であるからには悪い意味を持つはずもありません。「呂」の字は象形文字です。この字、よく見てみると人間の姿をしていませんか。上の「口」は顔、下の「口」は胴、そしてそれをつなぐ真ん中の線。この字の本来の意味は

     「背骨」

なのです。いい意味ではありませんか。また、長いという意味もあります。こじつけかもしれませんが、呂太夫は背骨になる太夫であっていただきたいものです。
英太夫さんと仲の良かったライバルは緑太夫さん。緑さんのご本名は

    律太郎 さん

でした。英さんが「呂」になれば「呂」「律」が揃った、というのは単なる洒落なのですが、このお二人が文楽の「呂」=「背骨」=「屋台骨」となって活躍されていたらどれほど心強かったでしょうか。それは今さら悔いても詮無いことですので、英太夫さんが六世呂太夫となられた曉には、今ごろ濱太夫か津太夫を名乗っていらっしゃったであろう、緑さんの分も含めてなにとぞ大いなるご奮闘をなさいますように。

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コメント

呂とは、メジャーコードのチョイひねりだから美しい。

相変わらず、頓珍漢なコメントを送信して、失礼いたします。

へ? 呂が付く太夫さんのお名前って、素晴らしく雅で美しいお名前だと思うのですが・・。
そんな能天気な解釈ではアカンのかな?・・まあ多分、きっと色々と事情がおありなんでしょう。兎に角、ご襲名おめでとうございます、です。そして、お疲れ様ですと申し上げたいです。

※あ、お気楽なコメントの背景には、門閥とか、襲名に関する興業主さん、ご関係者の方々のご意向には、全く考慮していないことを、お断りしておきます。

話題の論議は分かりませんが。

呂と言えば、音の元、音階の基本、メジャーのコードとか、マイナーコードのナンたらカンタラ、と昔、教わりました。
黒鍵が必要なのは、呂の音階が有るからで、それが無ければ大半の音楽が生まれなかった、とか。
(結局、理解出来ないまま、今日まで生きて居るのが情けないのですが・・)

あ、只ですね。
漆塗りの世界では、呂といえば呂色という、職人さんの腕が一番試される色だと、教わったことは覚えております。(ろいろ・蝋色って表記するのだったかな?)
漆塗りの工芸品の名前に、呂色が入ってたら大概高い、と聞いたことがあります。
結局、値段の話になるって下世話で失礼しました・・。

呂太夫さんの声の艶と色合いも、益々の深みと輝きを増すことでしょう。

ああ、早く、舞台中継してくれないかしらNHKさん・・。(政見放送を縮小したら、出来ると思うよ。したくても、無理だろうけどサ・・)

え?ああ、ハイ。その前に講演を観に行け?
 。。ハハッ、仰る通りです・・。(最後のボーナスって出たのかしら・・)

  • [2016/07/20 12:17]
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  • 押し得子です。
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♪押し得子さん

ありがとうございます。そうやね、呂色は大事。ちょっと必要があるので、パクらせてください。

どうぞ、ご随意に。

@・・・パクらせてください。

お役にたてるのであればよろこん・・。

あ!イカん!!前言撤回です。しまった、また、センセの公開処刑のネタを提供したのか?私・・。

でもまぁ。。。ま、いっか(よくない予感はしますが。)

ところで、呂色って、黒色でしたよね?(オイオイ、今更かい・・?)

確か?苦労(クロウ)の苦の無い色=呂色(あれは洒落だったのだろうか?)
なのに、
とんでもなく苦労させられる色なのだと聞いたような・・。
違ったかな、さ、取りあえず、逃げておこう。

  • [2016/07/20 20:34]
  • URL |
  • 押し得子です。
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♪押し得子さん

ありがとうございます。まじめにパクらせていただきます。
いい押し得子さんを持って幸せです。

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