嫉妬とうはなり打ち(3) 

嫉妬による元妻の攻撃は日本だけの話ではありません。
白居易の「上陽白髪人」は、こういう話を伝えます。

  楊貴妃が玄宗皇帝の寵愛を一身に受け、他の女たちは上陽などに
  置かれました。ある女性は十六で皇帝に召された時に「あなたの
  容貌は芙蓉のようで、胸は玉のように美しい」と言われたのです
  が、皇帝にお目通りする前に楊貴妃に睨まれ、嫉妬されて上陽宮
  に送られ、そのまま老いて白髪の老婆になってしまった。

絶世の美女の楊貴妃もまた弱い人間だったのでしょうか。この話は『古事記』の磐姫命の話に通うところがあるように思われます。
『源氏物語』「葵」巻にはいくつか有名な場面があります。光源氏が葵祭の斎院の禊の時に行列に加わるというので見物人が大変な数になります。彼の妻の葵の上は懐妊中でしたが、女房に誘われて出かけることになりました。仮にも左大臣の娘で今をときめく光源氏の妻ですから怖いものなし。遅れていったので車がたてこんでいますが、権威を見せてそのあたりにいた車をどけてしまいます。しかしどうしても

    言うことを聞かない車

があり、ついに下男同士の喧嘩に発展、あげくには暴力的にその車を排除してしまったのです。その車に乗っていたのが六条御息所でした。大臣の娘で元皇太子夫人。皇太子は若くして亡くなり、その後は光源氏と付き合っていたのです。美貌で芸術的センスがあるのですが、光源氏より七歳年長で、性格は潔癖。光源氏はどこか煙たく思っている様子もあったのです。そんな折りに葵の上の懐妊。御息所にしたらもう自分は終わりではないかという気持ちになったかもしれません。

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そういうタイミングで車を暴力的に排除されるという屈辱に遭った彼女はどんな思いがしたことでしょうか。このあと、出産間近となった葵の上にさまざまな物の怪が取り憑くのです。僧侶の祈禱で多くは追い出されましたが、その中にどうしてもひとつ離れないものがありました。
光源氏が見舞いにいったとき、「源氏の君だけにお話ししたいことがある」と葵の上の口から言葉が出てきます。しかし、声や話し方が葵の上ではない。光源氏はハッと気づきます。これは六条御息所ではないか、と。御息所の

    魂が浮遊して

葵の上を苦しめていたのです。
御息所とてこんなことをするつもりはなかった。しかし彼女の情念がそれを許さなかった。やがて葵の上は出産しますが、その後まもなく突然の苦しみで急逝します。これは誰かのしわざだったのでしょうか?
こういう話をもとにして作られた謡曲に

    葵上

があります。作者は分かりませんが、世阿弥かと言われます。シテは六条御息所の霊。前シテとしての面は泥眼、後シテとしては般若。タイトルロールであるはずの葵の上は登場しません。彼女は舞台に置かれた小袖によって暗示される存在です。
葵の上に執拗に取り憑く霊を明らかにするため照日巫女(ツレ)が呼ばれ、その霊が六条御息所の生霊であることが判明します。霊は葵の上を打擲せずにはいられない思いを述べ、激しく打つのです。

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