嫉妬とうはなり打ち(7) 

もうひとつ、『骨董集』の絵の左下にはこんなことも書かれています。
「貞室が 玉海集 に「しもをとこのすり木もてわかなはやしければ うはなりがわかなもたゝく手摺小木」此發句 山の井 にも見ゆ 摺木もて若菜を打をうはなり打にたとへたるも此圖にあへり(貞室の『玉海集』に「下男がすりこぎで若菜を摺っていたので『うはなりが若菜のみならず若妻もたたく手摺小木』。この発句は『山の井』にも見える。すりこぎで若菜を打つのを、うはなりうちに喩えたのもこの絵に合っている」)。
貞室というのは貞門俳諧師の

    安原貞室(1616-73)

のことです。
というわけで、山東京伝の『骨董集』に見える「うはなりうち」の絵を眺めたのですが、この絵の登場人物たち、なるほど真剣なのでしょうが、その一方、どこか楽しそうには見えないでしょうか。「楽しそう」というのは言い過ぎとしても、私はなんとなく

    芝居っ気

のようなものを感じてしまうのです。「こなみ」一統は台所用品を振り回して「うはなり」を追いかけていながら、相手にけがをさせる気はなくて、ただそのあたりにあるものを壊して憂さを晴らしているような感じ。言い換えると、「こなみ」は「うはなり」を許さないのではなく、許すために破壊行為をしていて、「うはなり」は許してもらうために抵抗せずに逃げ回っているようにも思えるのです。「これだけのことはやらせてもらうからね」「それだけやったんだからもういいでしょう」とでもいう、手続きというか、段取りというか。

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「うはなりうち」の絵というと、さらに有名なのは歌川広重の「往古うはなり打の図」でしょう。
以前これについてはどこかで書いたかもしれません。

広重「往古うはなり打の図」
↑「往古うはなり打ちの図」

ご覧のとおり、これはさらにすさまじくて、24人の女性がかなり真剣に戦っている感じです。
ここまでくると「うはなりうち」の実態を描いたものと言うよりはいささか「おもしろおかしく」描いているのではないかと思ってしまいます。この絵を見てみると、彼女たちが武器として用いているものは台所用品とはかぎりません。
素手の人もいますし、台所用品のしゃもじ、鍋蓋、ざるも見えます。その一方、竹ささら、ふとんたたき、ほうき、はたきのような、

    清掃関係

の道具も目立ちます。ふるいもありますし、笠を持っている人もいます。
左側の人は台所用品が目立ち、右側の人たちは多く清掃用品を持っています。広重は何らかの意図を持って描いたのでしょうか。
鉢巻姿、たすきをかけている人などはいますが、裾は引きずっていて、あまり活動的ではなさそうです。

それにしても、人間が生きているかぎり、嫉妬は繰り返され、文学にも演劇にも音楽にも美術にも描かれ続けるのでしょう。
はい、これで秋の講演の予習ほぼ完了(笑)。

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