公開録音(1) 

私がクラシック音楽をよく聴いていた頃、日本人の指揮者というと、渡邉曉雄さん、外山雄三さん、岩城宏之さん、小沢征爾さん、秋山和慶さん、尾高忠明さん、井上道義さんなどのお名前が思い浮かびます。今もご活躍の方はいらっしゃいますが、やはり一世代前の感じになってしまいますね。
これらの方々とともに、忘れることができないのは

    朝比奈隆さん

です。もともと法学部出身で阪急に勤められたことがあるという変わった経歴の持ち主のかたですが、関西交響楽団を組織されて、1960年に大フィルに名を変えてからもずっと常任指揮者、音楽監督をなさっていました。
いつごろだったかは忘れましたが、朝比奈隆さんが大阪フィルハーモニー交響楽団とともにブラームスの交響曲全集を作られました。朝比奈さんはブルックナーで有名ですが、ブラームスやベートーベンの交響曲全集も何度か作っていらっしゃるのではないでしょうか。
こういう場合、お客さんを入れずに録音するのが一般的でしょう。雑音が入ったりアクシデントが起こったりする可能性がありますから。一方、

    実況録音版

は、逆にそういう雑音や拍手の音も込みでこそ価値がある、多少のミスがあってもそれもまた醍醐味、という感じで、いかにも臨場感があります。
朝比奈さんはあのとき、神戸のどこだったか忘れたのですが、あるホールで録音することになり、なんと、お客さんを招待したのです。しかし、1階にはいっさい入れず、2階席のみ開放するという形でした。やはり1階にお客さんがいると雑音が入ってしまうのでしょう。

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あらかじめ場内放送で「演奏が終わっても合図のランプがつくまで(消えるまで、だったかもしれません)拍手はしないでください」と放送があって、演奏が終わってしばらくは朝比奈さんも団員のみなさんもじっと動かず、聴衆も息もしていないかのように

    固唾をのんで

いたのです。そして合図のランプがつく(あるいは消える)と、空気が緊張を解いて、2階席だけの少人数でしたが、聴衆から割れんばかりの拍手。2階とステージという距離があるからこそ、普段の演奏会とはいっぷう違った一体感が漂いました。指揮が終わったときの姿勢のまま固まったようになっていた朝比奈さんも安堵されて、我々を見上げて手を上げ、頭を下げられました。何だかとてもいい気分の録音会でした。
それにしても、なぜ邪魔になりかねない客を入れたのでしょうか。
あのときうかがったお話では、朝比奈さんが

    「お客さんのいるところで

やりたい」とお考えになったからだとか。やはりライブの感覚が大事だったということでしょうか。しかしやはり雑音が怖いでしょうから、録音する側はそれは避けたい。そのギリギリの妥協案が2階のみでということだったのでしょう。朝比奈さんは、私などがこう言うことを申すのははなはだ失礼で僭越なのですが、さすがによくお分かりなのです。聴衆がそこにいることで演奏が違ってくることを。
おそらくあの日会場にいた聴衆の多くは、あの演奏が録音されたレコードを買って楽しんだことと思います。

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