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耕 

清水寺の貫主さんがお書きになるので有名になった「今年の漢字」という「年末恒例」の行事があります。大変失礼とは存じますが、私から見るとそろそろ賞味期限切れではないかと思えます。今年の漢字は「金」だとか。まったく今年を象徴しているようには思えず、無理があるな、としか思えませんでした。
それでも学生は何かと話題にすることもあるようで、ある授業で

  「先生の『今年の漢字』は何ですか?」

と聞かれました。さて、何と答えればいいのでしょうか。「私は『今年の漢字』なんておもしろいと思わないので答えるつもりはありません」などと言ったのではあまりに愛想がないように思います。ここはまあしゃれで、なんとか答えを出さねばなりません。四字熟語なら「臥薪嘗胆」かもしれませんが(笑)、難しすぎますし、なんだかしんどそうですよね。
「苦」「貧」「悩」「虚」「無」・・・など、それに類するマイナスイメージの漢字ならいくらでも思い浮かぶ(笑)のです。でも、せっかく学生が楽しい話をしようと言っているわけですから、ここは少しでも明るさを装わねば(笑)なりません。
で、思いついたのは

    

という字です。この字はなかなかいい字だと思います。
田や畑を耕す。田の土を返す、文字どおり「田返(たがや)す」のです。黙々と仕事をしているようで、とてもいいイメージがあります。農耕というのは人間が自分に都合のいいものだけを栽培するわけですから、植物の自然な生育という点から考えるとかわいそうな面もあるかも知れません。
しかし人間が生きていく上でどうしても欠かせないものであり、植物を慈しみ育てる気持ちは農業をする人にとってはたいてい共通して抱く感情ではないでしょうか。「耕」という字に、土や植物(おもに農作物)への愛情が感じられる所以です。

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筆耕ということばがあります。清書とか書写をする仕事のことをいったり、広く文筆で生計を立てることを意味したりします。憧れです。
舌耕というのは私にも関係のある言葉です。講義や講演などをなりわいとすることです。これももっとうまくなりたいといつも思っています。
目耕というと読書のこと。これも私は不十分ながら好きなことです。
「耕す」は英語だとcultivateでしょうが、これは

    culture

と語源を同じくするようで、これまた嬉しくなってきます。
というわけで、今年も微力ながら耕す仕事をしてきました。そして今年耕した田に植えた苗が来年いくらかでも

    稔りますように

という思いを込めて「耕」を「今年の漢字」ということにしました。学生がどう聞いてくれたか分かりませんが、こんな、ちょっと気取った話もしながら学生に質問に答えていくことは大事なことだと思っています。来年の漢字が「稔」になればいいのですが・・・。

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