『源氏物語』逍遥(四)ーあふさきるさにー(その4) 

 次に、左馬頭は家刀自(主婦)と情趣の関係に言及します。「こぎれいで風雅をちらつかせるような女はそれゆえに欠点が隠れ、こちらが調子を合わせると色っぽさが度を超す。夫の世話という大事な仕事をするのに風流本位では済まないことがある一方、風流のかけらもなく世帯じみてしまったのではつまらない。仕事のことなど、理解のない妻なら話しても仕方がないと、ついそっぽを向いてしまう。子どもっぽい女を妻にすると教える楽しみもあるが、重要なことを頼むのに判断すらできない女では困る」などと。ところが、経験豊かな左馬頭もそのうちに収拾がつかなくなってしまい、「定めかねていたくうち嘆く(結論を出すこともできず、ふーっとため息をつく)」始末です。なお「嘆く」は「長息」=「なげき」からできた言葉です。
 左馬頭はとうとう「もう品(階級)とか容貌などまったくこだわらない。ひどく残念なほどひねくれていると思われない人であれば、ただ一途にまじめで、穏やかな様子の人をあてにできる妻と考えるのがよいでしょう」と言い出します。そして「恨み言を言うべきところを我慢して貞淑を装っていながら、思いあまると(今の言葉でいうと「キレると」でしょうか)恐ろしい言葉などを書き残して辺鄙な海山に行ってしまう女がいるが、それは軽薄だ。ちょっとつらいことがあるだけで愛情の深い夫を置いて逃げ隠れると後悔することになる」と続けます。左馬頭なりの結論は「万事穏やかに、嫉妬するときはほのめかす程度にして恨み言を言う時はそれとなくかわいらしく言えば男の愛情は増すものだ。男の浮気心もそうすれば収まるのだ」ということでした。男の身勝手とも本音とも言えましょうか。
 この意見にうなずいたのは頭中将でした。彼は妹の葵の上が夫の光源氏とあまりうまくいっていないことを思い浮かべていたのです。そして「夫婦関係が順調でなくても気長に耐えているほかはないようだな」というのです。ちょっとしたいやみのようですが、何も意見を言わない光源氏はここに及んで「うちねぶりて(居眠りをして)」います。さてこの居眠り、彼は本当に寝ていたのでしょうか、話がつまらなくて目を閉じていたのでしょうか、あるいは自分に不利な空気を読んで狸寝入りを決め込んでいたのでしょうか。
 頭中将が熱心に聞き耳を立ててくれるので、左馬頭はこの品定めの「博士(その道に通じた指導的立場の人)」としてなおも続けます。「奇抜なものと本格的なものでは後者の方が心惹かれるもので、何かの折々に様子ありげなふりをするような人は信用できません。そういう例をお話ししましょう」と居住まいを正します。話が具体的になるようです。頭中将は真剣に聴こうとし、光源氏もまた目を覚ますのでした。
 憂鬱な雨に降り込められて心が内向きになっている若者たちです。あたかも百物語でもするかのように話はさらに続くのです。

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