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世にかずまへれたまはぬ 

『源氏物語』の講座ではもうすぐ宇治十帖と呼ばれるところに進みます。この最初の巻は「橋姫」で、冒頭は「そのころ、世にかずまへれたまはぬ古宮おはしけり」で始まります。世間から忘れ去られたような過去の人である親王がいらっしゃった、ということです。
この人物は権力闘争に巻き込まれる形で、一時は有力な春宮候補だったのですが、時勢の変化によってその夢は破れ、彼を支持していた周辺の貴族たちも離れていき、公私ともに不如意な生活をすることになります。光源氏の異母弟で、桐壷帝の八番目の男子であったために「八の宮」と呼ばれます。
泣き面に蜂が刺すように、娘二人を残して北の方(正妻)は亡くなり、あげくには屋敷が焼けてしまいます。
なぜこんなに

    歯車が噛み合わない

のか、なぜ自分はこんなに不幸にならなければならないのか、宿世を恨んだこともあったかもしれません。彼はその後仏道に精進して、宇治の別荘で暮らします。
そして、二人の娘の身を案じながら世を去って行きます。
物語はこのあと薫と匂宮という二人の若者と八の宮の三人の娘(先述の二人のほかに、北の方以外の女性が生んだ娘があった)との関係が描かれていきます。
何の罪もない八の宮ですが、

    権力闘争の渦中

に投げ込まれたために不遇の日々を送らざるを得なくなり、もはや取り返しのつかない人生を送る羽目になってしまいました。権力者の道具に用いられた挙句の敗残。私はこの人に強い同情を覚える気持ちを禁じ得ません。
自分で自分の人生を切り開くことができないのだから仕方がない、といわれるかもしれませんが、そういうことができるようには生まれつかず、また育てられもしなかった人です。
この人の登場する巻はもうしばらく先に読むのですが、どんな話をすればよいか、とぼんやりと考えています。

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