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簔助師匠の引退(4) 

なんだかんだといっても、簔助師匠といえばやはり女形の人形が忘れられません。
これをいちいち挙げていたら日が暮れてしまうほど名演が数々あります。ここでは思いつくままにいくつかのみ書いておきます。すでに書きました「朝顔話」の深雪(朝顔)、「桂川」のお半については繰り返しません。
遊女では「河庄」の小春、「吉田屋」の夕霧、「曽根崎」のお初、「封印切」の梅川などがあります。小春もいいのですが、今の「河庄」は『心中紙屋治兵衛』のそれを使っていますので、全体的にあざとさがあって、小春の個性を浮き彫りにしきれていない恨みを感じています。そういうこともあって、私は梅川が一番好きなのです。封印切で興奮してしまった忠兵衛をたしなめるように、「なぜそのやうにのぼらんす」と声をかけ、自分はどうなってもあなた一人くらい面倒は見るとまでいう気強さ。遊女の色気を失わず、

    一本芯の通った女性

の魅力が鮮やかに描かれていると思います。そういう人物を描かせると、やはり簔助師匠の右に出る人形遣いさんは当代見当たらないように思うのです。
きりっとした女性には「三婦内」のお辰、「毛谷村」のお園、「引窓」のお早、「合邦」の玉手(お辻)、「城木屋」のお駒などもありました。
武家の姫君も一途で上品、可憐、いじらしさのある人形を遣われました。「妹山背山」の雛鳥、「金閣寺」の雪姫、「絹川村」の時姫、「十種香から狐火」の八重垣姫などです。
『忠臣蔵』では、腰元、田舎の女房、遊女と運命に翻弄されるようなおかるをそれぞれ場面にふさわしく表現されました。腰元おかるは勘平を松の木蔭に誘う積極的な今の言葉でいう「肉食系」のようです。山崎の女房おかるになると、母親に軽口をたたくなど、のどかな雰囲気も漂わせます。そして遊女になるととにかく色っぽい。二階で懐紙を団扇代わりにして

    酔いを醒ます姿態

は簔助師匠の独擅場という感じでした。あの魅惑に対抗できたのはやはり先代玉男師匠の由良之助ならではだと思います。
「千本の道行」の華やかさも忘れ難いものです。鼓を持つ姿の美しいことといったらありませんでした。文楽劇場開場公演では、先代勘十郎師匠が狐忠信。あんなすばらしいものがよくぞ観られたものだと今さらながら幸せを感じます。
いまでこそ三代目勘十郎さんの役になりましたが、「杉酒屋から金殿」のお三輪は、以前は簔助師匠のものでした。
いじらしい女性には「酒屋」のお園、「野崎村」のおみつ、「鬼界が島」の千鳥などがあります。
少し年を重ねた老女形になると、わきまえ、たしなみのある上品さがにじみ出ました。「山科閑居」のお石、「熊谷陣屋」の相模、「土佐将監閑居」のおとく、「豊島屋」のお吉、「太功記」の操、『ひらかな盛衰記』のお筆、「御殿」の政岡、「寺子屋」の千代や戸浪。
ほかにも、「袖萩祭文」の袖萩、「国姓爺」の錦祥女、「嫗山姥」の八重桐、「沼津」のお米、「岡崎」のお谷、「宵庚申」のお千代、景事では鷺娘など、本当にたくさんの名演を見せていただいたものです。
今後は、どうかお弟子さんなどにどんどんダメ出しをしていただいて、ますます文楽のためにご活躍いただきたいと願っています。

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