吉田簔一郎さん
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文楽の人形遣いさんはご自身で人形の手足をお作りになる方がいらっしゃいます。彫刻刀なんて持たせると確実にけがをする私と違って、器用な方がいらっしゃるものです。彫るだけでも大変でしょうに、穴をあけて三味線の糸を通して手のひらの開閉や手首の動きをなめらかに見せるのですからたいしたものです。
主遣いさんは舞台下駄を履いて演技されますが、あの下駄もそのあたりで売っているというわけにはいかず、手作りだそうです。
私は文楽人形劇をするために、あの下駄が必要でした。それで予算を取ってもらって2つ入手したのです。
その下駄の作者はどちらも吉田簔一郎さんです。
人形を動かし続けているうちにどうしても弱くなってくるところがあり、一度手の糸(三味線の糸)が切れたことがあります。そのときも修理してくださったのは簔一郎さんでした。
失礼ながら、私は勝手に
イチローさん
と呼んでいます。兄弟子の方が「一郎君」と呼んでいらっしゃったので、ついまねをしてしまったのです。「文楽界のイチロー」さんは埼玉県のご出身で、研修生を経ずに1981年に簔助師匠に入門されました。ということは、今年で40年のキャリアです。
背が高くていらっしゃって、足遣いのときは大変だっただろうと思います。左遣いとしてとてもいいセンスで活躍され、主遣いとしては女形が多く、腰元、遊女などで脇役をつとめられたり、最近は老女形や婆首の人形で活躍されたりしています。私はどちらかというと
動きのはっきりした立役
が好きなのです。脇役でもいい味があって、『夏祭』の「こっぱの権」のふてぶてしさもとてもよかったです。不思議に覚えているのが『雪狐々姿湖』のコン平(だったかな?)で黒衣に頭巾でしたが、とても味わいがありました。『上方芸能』の「文楽評」にはなかなかイチローさんのことは書けなかったのですが、この『雪狐々』を書いたことは覚えています。今もなかなか役に恵まれないように思うのですが、いつでもどんな役でもできますよ、という位置にいらっしゃると思います。
大阪府豊能郡能勢町の「浄るりシアター」でも勘十郎さん、簔二郎さんとともに長らく指導をされてきました。
いつぞや森ノ宮ピロティホールで私の書いた『名月乗桂木』という作品が上演されるとき、私もお邪魔したのですが、大勢のお客さんで混雑していたロビーで私がうろついていると駆け寄ってきてくださって挨拶までしてくださいました。とても気配りのあるすてきな方です。
人形遣いとしても熟してこられ、また道具の作成でも見事な技を発揮され、「芸人さん」と呼ぶにふさわしい人ではないかと思っています。
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- [2021/05/20 00:00]
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