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野澤松之輔師匠(1) 

私が文楽の世界で今とても関心があって、しかしさっぱりわからない人が三味線の野澤松之輔師です。
松之輔師は昭和50年(1975)に亡くなったため、私はほとんど存じ上げません。ただし、そのお姿については、写真はもちろんですが、映像で拝見したことはあります。一番印象に残っているのは、昔、文楽鑑賞教室で放映されていた文楽の紹介映画です。この映画では桐竹紋十郎師が吉田簑太郎君(失礼! でも、十代半ばの少年だったので・・・)の目の前で人形の着付けをする場面もあったのですが、全体としては

    傾城阿波の鳴門

をベースにして太夫、三味線、人形の紹介がおこなわれていました。今は若い技芸員さんがおもしろくお話をしてくださいますが、昔はこういう映画を見せて三業の紹介をしていたのです。
そして、松之輔師がいかにも大師匠らしくひかえていらっしゃるところに、まだ40代かあるいは50そこそこでいらしたであろう

    竹本南部太夫師

が、「『鳴門』の役をいただきましたのでお稽古をお願い致します」と進み出ていらっしゃるのです。ちょっとわざとらしい演出でしたが(笑)。
まだ文楽の人たちをよく知らないころにこの映画を初めて観ましたので、そのときは「ふ〜ん、この三味線弾きさん、きっとえらい人なんだろうな」という印象だけでしたが、それがあの松之輔師であるとわかり、さもありなんと思ったのでした。
松之輔師の業績は三味線弾きさんとしてはもちろんなのですが、作曲(節付け)のお仕事を忘れるわけにはいかないのです。松竹がさまざまに試みた新作の作曲はこのかたが多く務められました。
そのお仕事では、ご本名が「西内重男」でしたので

    西亭

と名乗られました。戦前戦中のいわゆる「時局もの」に始まり、『浅間の殿様』『お蝶夫人』『ハムレット』『椿姫』『暖簾』『名人豊澤団平』『明治天皇』『下田時雨』『白いお地蔵さん』『大阪繁盛記』『婦系図』『箕輪心中』など、すべて松之輔師の作曲、景事の『二人禿』『面売り』などは作詞作曲です。
三味線弾きさんの作曲というと三代鶴澤友次郎師の『花競四季寿』、二代豊澤団平師の『壺坂観音霊験記』『鳴響安宅新関』、初代鶴澤道八の『釣女』、四代鶴澤清六師の『雪狐々姿湖』、二代野澤喜左衛門師の『瓜子姫とあまんじゃく』『ほむら』などがあり、十代竹澤弥七師は八代竹本綱太夫師と工夫して近松ものの作曲などをなさいました。最近のかたでは五代鶴澤燕三、三代野澤喜左衛門、鶴澤清治、鶴澤清介各師などのお名前が挙がるでしょう。
しかし松之輔師の作曲のなんと多彩なこと。どうしてこんなに多くの作品をお作りになれたのか不思議でさえあります。浄瑠璃というものがきちんと頭に入っていなければできないことでしょう。
鶴澤清介さんが松之輔師に節付けについてお尋ねになったことがあるらしく、清介さんのお話によれば、松之輔師は30分ほどのものであれば一晩で節付けされたそうです。そして清介さんは松之輔師を「天才」だとおっしゃいます。

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