fc2ブログ

「ゐ」と「ゑ」 

昔の人は現代人とは発音のしかたが違いました。そのことを示すものに「あめつちのことば」「いろはうた」があります。これはすべての文字を並べて意味のある言葉(歌)にしたものですが、そのうち、より古い形を示す「あめつち」によると10世紀ごろはア行の「え」とヤ行の「え」が区別されていたようなのです。また「いろは」でも「い」と「ゐ」、「え」と「ゑ」ははっきり区別されています。「お」と「を」も区別がありますが、これはわりあいに早く同じような発音になったようです。
今や「ゐ」「ゑ」という字はあまり見なくなりました。わずかに店の看板などにデザインとして用いられることがあるかもしれませんが。若い人に「ゐ」「ゑ」が書けるかと聞いたら「書けない」という人がずいぶん増えたような気がします。また、「書ける」と答えた人でもずいぶんいいかげんな文字を書くことが少なくありません。日常的に使わないのですからやむを得ないとも言えるでしょうが。
「ゐ」は「ウィ」のような、「ゑ」は「ウェ」のような発音だったと思われ、そのためにひと昔前は

    「ヰスキー」

と書いて「ウィスキー」と読ませることもありました。また女性の名前で「よしゑ」「まさゑ」などという方がいらっしゃったものでした。もともと「ゑ」は「恵」の字を崩したものですから、名前にするにはとても縁起のいい字ですね。
ではもう「ゐ」を「ウィ」、「ゑ」を「ウェ」と発音する人はいないのでしょうか。資生堂の社長をなさった福原義春さん(1931年生まれ)は、子どものころ(ということは昭和10年代あたりでしょう)は「ゐ」「を」を使い分けていたとおっしゃっています。「井戸」は「いど」ではなく

    「ウィド」

だったのです。福原さんは資生堂創業者の御令孫で東京生まれ、東京育ちの方です。昭和初期の東京でもそういう発音は残っていたといわれるのです。そして、私が学生のころもまだ田舎に行くと同じような区別はあると教わりました。今はどうなのでしょうか。
発音は微妙に変わっていきます。「ハ行」が次第に「ワ行」に代わっていったのもよく知られるところです。「思ふ」が「思う」に代わったたぐいです。藤原道長の日記『御堂関白記』の古写本(平安時代後期)には「いとほし」という言葉に対して「糸星」「糸惜」という漢字を当てるところがあります。一方は「いとほし」もう一方は「いとをし」と読めます。もうこのころは徐々に発音が変わっていたのです。
現在の我々の発音はけっして不滅ではなく、そのうちに徐々に変わっていく可能性はあります。「店員」を「ていいん」、「原因」を「げいいん」、「延々と」を「永遠と」と発音する若者が増えています。こういうところから、ゆっくりと新しい時代の発音ができていくのかもしれません。

にほんブログ村 演劇・ダンスブログへ
にほんブログ村
↑応援お願いします
KatayamaGoをフォローしましょう

スポンサーサイト



コメント

頑張った・・

森鴎外センセイの、ヰタ・セクスアリスを、長いこと。

きた・せくすありすと言う、アリスちゃんが出てくるメルヘンだと思っていた・・・とか。

周五郎の樅の木は残った、を。
カシの木は残った、と思い込んでいたいたこと。
オマケに、悪役の酒井雅楽頭に至っては。
ががくとう、が出てくるとイラっとする!!と話してしまい、両親、親戚一同から爆笑されたなんて・・・

親の書棚を、小学校の夏休みに暇つぶしに読み漁っては、イケナイという、良い手本かと存じます。

あ、因みに。ヰを、キーボードのULIで入力すると知ったのは、ウインドウズ・デビュー後のことです。

ゑの入力なんて。
を、が打てるだけで、良しとして貰いたいものでした・・。
※今は入力できますが、使う機会は全くない・・・、ULEのゑ。

  • [2021/11/12 16:59]
  • URL |
  • ヰが打てる・押しEgo
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

♫押しEgoさん

よくあることですね。ラテン語でタイトルをつける方が悪いかも。
というより、よくそんなこと覚えていますね。そっちに感心します。
私はいつも「wi」「we」と打って「ゐ」「ゑ」を出しています。

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://tohjurou.blog55.fc2.com/tb.php/5906-604721ae