弱い者を笑い飛ばす世の中(1)
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狂言風オペラ『フィガロの結婚』の仕事からはほんとうにいろいろなことを学ぶことができました。雅楽・能・狂言・文楽・歌舞伎の中で、私が一番実際の舞台を観ることが少なかったのは、自分でも意外なのですが、狂言でした。能と狂言という組み合わせの公演ももちろんありますが、昨今は解説と能一番、ということも多いと思います。かつて学生を引率した大槻能楽堂での能もまさにそれでしたし、それ以外でもわりあいに能単独のものを多く観たような気がします。狂言は独立して「狂言の会」という形も多いですね。
しかし『フィガロ』で狂言師の方と間近に接することで、これまで見のがしていたようなことを知ることができました。テキストを読むことで理屈ではわかりきっていることでも、実際に演技を作っていく過程を目の当たりにすることで、頭で理解するのではなく、感じ取ることができたのだと思います。
とにかく力のある者を
笑い飛ばす
のですね。この「飛ばす」という感じがほんとうによくわかりました。『フィガロ』の中で、狂言師さんはアドリブを入れて現代の傲慢な権力者をネタにして客席から大笑いをとっていました。これです。強い者、権力を持つ者を笑い飛ばすのです。「哄笑」ということばがありますが、まさにそれ。庶民にとっては権力者なんて哄笑の対象なのです。
「フルシチョフはばかだ」と叫んで
赤の広場を走り回った男が逮捕され、
23年の労働刑に処せられました。そ
のうち3年は侮辱罪、あとの20年は
国家機密漏洩罪による刑罰でした。
というアネクドートがありました(人物がフルシチョフでなくブレジネフだったり、場所が変わったり、よく似たいろんなパターンの話があります)。アネクドートは政治風刺を内容とする小話のことです。これはもともとフルシチョフが自虐ネタで使ったジョークだと言われますが、庶民の笑いに通ずるものがあると思います。今、ロシアではどんなジョークがささやかれているのでしょうか。
笑いというのは、こうやって権力を笑い飛ばしてこそ健全なように思います。もちろん今でも堂々と権力者を茶化すような芸人さんはいらっしゃるでしょうが、逆に強い者が弱い者を笑い飛ばす傾向もあるような気がしてなりません。権力のある(と本人は思っている)地位に就くや否や、さんざん文楽をバカにしたり児童文学館を縮小して府立図書館に統合したりした人物もいました。そして反論する者には
嘲笑や侮蔑の言葉
を繰り返していました。こういう人物のように発信力の強い者が弱者を笑い飛ばすということはややもすると虐待につながります。学校で教師が学生を嘲笑したらどういうことになるでしょうか。政治家が弱い者の味方にならないで身内だけを大事にしていてまともな仕事ができるでしょうか。
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- [2022/04/12 00:00]
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コメント
狂言師
フィガロ役でしたっけ。狂言師さんが「森友問題のように」と言われたので会場が爆発したみたいな笑いに包まれました。ちょうど森友問題が国会を賑わせていた頃でした。この脚本すごいぞ、と思ったのでした。
藤十郎さん
強いもの、例えば日本では国会議員に月100万円もの文書通信交通滞在費(文通費)が支給されますよね。
使途は非公開、未使用分は返還しなくてよい・・・とこういうものこそ既得権益でひどすぎると思います。
♬やたけたの熊さん
おもしろかったみたいですね。ああいうアドリブを入れるセンスがすてきだと思いました。翌年は「知事と市長のダブル選挙」。膝を叩いて笑っていらっしゃるお客様がありました。
♬如月さん
政治活動に必要なんです、という理屈なのでしょうが、そんなことを言いだしたら誰だって必要なお金はありますよね。100万円というから、私はてっきり年間のお金だと思いましたが、一か月に!
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