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笠之段、仏師 

一か月前の話です。
3月19日に大阪の大槻能楽堂に行ってきました。狂言風オペラ『フィガロの結婚』が、スイスの楽団が来日できず中止になったため、その代替公演としておこなわれた催しがあったからです。
演目は狂言の「仏師」、仕舞「笠之段」、文楽「お園のクドキ」、シューベルトの「魔王」の歌唱版と義太夫+能+人形という上演でした。
文楽ももちろん興味はありましたが、能狂言に疎い私としては「仏師」と「笠之段」は興味津々でした。
「笠之段」は能『蘆刈』の中のシテの舞です。津の国日下(草香)の左衛門夫婦が貧しさのためにいったん別れ別れになります。妻は都に上って貴人の家で乳母となり、安定した生活ができるようになりました。妻は夫がどうしているかを知りたくて日下に戻るのですが夫は行方不明でした。妻のお供をしてきた者が元気を取り戻してほしくて里の人におもしろいことがあれば教えてほしいと頼みます。すると里人は蘆を売りに来る男はおもしろいと教えます。妻と従者が見に行くと、蘆刈の男があらわれ、笠尽くしの舞を見せます。妻が蘆刈の男に蘆を見せてほしいというと、男は近づいてきますが、彼女の顔を見て驚いて隠れます。蘆刈男は夫の左衛門で、

    零落した我が身

を恥じて隠れたのです。しかし妻は一緒に都に上ろうと誘い、左衛門は喜びの舞を舞って都に上ります。
この中で、シテの蘆刈男が難波の春をほめそやしながら舞うのが「笠之段」です。このたびは大槻文蔵さんの舞でした。現在能で、能の形式でもシテは面を付けないのですが、仕舞では能舞台での装束も着けずいわば「素」のままの姿で、それだけになかなか難しいのではないかと思いました。今年80歳になられる大槻さんですが、さすがのたたずまいで、若い地謡のみなさんに支えられつつ舞い納められました。
狂言の「仏師」は「すっぱ(詐欺師のこと)」と「田舎者」によるお話です。「田舎者」が御堂を建てたので、本尊にする仏像を造ってもらおうと都にやってきました。そして「仏像を買います」と言いながら歩いていると「すっぱ」があらわれて、自分が仏師だから明日までに造ってやるとだまします。翌日「田舎者」が見に行くと、

    等身大の仏像

があるのですが、どうも姿が変なので、仏師(すっぱ)に印相を換えてくれと依頼します。実はその仏像は「すっぱ」が面をつけて立っていただけです。変更を頼みに行くと「すっぱ」はすばやく面を取って仏師のふりをして「田舎者」に応対し、またすぐに仏像の姿に戻って姿を変えて立っています。それを見てなおも不満な「田舎者」はまた換えてくれと頼み、それを何度も繰り返します。その「見に行く⇒不満⇒変更依頼⇒見に行く」の循環はしだいにスピードがあがり、その結果、あわててしまって仏師から仏像に姿を変えるのに失敗した「すっぱ」は、ついに正体を見破られてしまいます。
今回は「すっぱ」に善竹隆平さん、「田舎者」に山本善之さんという配役(東京公演では野村又三郎さんと高野和憲さん)でした。『フィガロの結婚』もこれまでは茂山あきらさん、茂山茂さんが参加していらっしゃいましたが、今回はこの4人になる予定だったのです。

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