魔王
- 文楽 浄瑠璃
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大槻能楽堂での催しについて、文楽『艶姿女舞衣』については別に書こうと思います。
小学生のころ、シューベルトが好きでした。日本語では「わらべは見たり野中のばら」と訳される「野ばら」(D=ドイチェ番号=257)に接したのが最初だったと思います。といっても、その音楽性がどうのこうのというようなことは何もわからないままで、ただ彼の歌曲を聴いては喜んでいただけです。そもそも「わらべは見たり」「あしたの野辺に」の意味もよく分かっておらず、「わらべ」は「わらしべ」だと、「あした」は「朝」ではなく「明日」だと思っていたような気もします(笑)。それでもなぜか、わずか31年という若さで亡くなったあの作曲家に哀れを感じていたこともあって、興味を惹かれたのだったと思います。その後も「未完成」(D759)や「グレイト」(D944)と通称される交響曲、ピアノ五重奏の「ます」(D667)、弦楽四重奏の「ロザムンデ」(D804)などにも接しましたが、やはり彼の場合は歌曲が好きでした。「美しい水車屋の娘」(D795)「冬の旅」(D911)「ます」(D550)「子守歌」(D498)等々の作品はいろんな歌手で聴きました。特に
ペーター・シュライアー
の「美しい水車屋の娘」やディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの「冬の旅」などは記憶に残っています。
ゲーテの詩による「魔王」(D328)はシューベルトが18歳のころの作品だそうで、これを聴いたのはおそらく中学生の時で、かなりショッキングだったことを覚えています。病気の子を連れて父親が馬を走らせていると魔王が子どもを誘います。子どもは怯えますが、父親には魔王の姿が見えません。そして子どもは父の腕の中で亡くなります。
この作品を聴いた時、私自身も登場人物の子どもと同じような不安を抱いたように思います。そしておそらく、シューベルトもそうだったからこそこの曲をつけようと考えたのではないでしょうか。
この作品を
六代豊竹呂太夫さん
はバリトンの河野克典さんと、歌曲と素浄瑠璃という形で何度か上演されています。今回大槻能楽堂では、河野さんと穴見めぐみさんのピアノによる歌曲と、呂太夫さん、竹澤団吾さんによる浄瑠璃に能の赤松禎友さん、文楽人形の桐竹勘十郎さん、吉田簔紫郎さんらが演ずるまったく新しい形での上演でした。この歌曲はもともと魔王、父、子、語り手の四役を歌い分けるものですから、なるほど義太夫節にはなりやすいと言えるでしょう。歌曲としても、4人で歌うこともあるようですが、基本はひとりの歌手が歌い分けます。
子どものころ憧れを持ったシューベルトの名曲を河野さんの声で聴きたかった、そして呂太夫さんの浄瑠璃も聴きたかった。ほんとうに聴きたかったです。
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- [2022/04/21 00:00]
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