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ほぼほぼ 

今どきの若者がどんな言葉を話しているのかについては興味があるのですが、残念なことに現実に彼らがどんな言葉を話しているのかはさっぱりわかりません。
実は、若者言葉にも世代があるようで、何年前のことだったか、当時の学生さんが「私たちの言葉は若者言葉で何を言っているかわからないと批判されますが、私も今の中学生の言葉が謎です」と言っていました。
わずか数年の年齢差で何を言っているのかわからないことがある、というのです。
10年以上前から「雰囲気」を「ふいんき」と読んでいる人がいましたが、そのころは学生の中でも「正しくは『ふんいき』だよ」と訂正していた人が少なくありませんでした。今は「ふんいき」と読むことは知っていても「発音するときは『ふいんき』です」という人がいるくらい、この発音は定着してきたようです。ひょっとしたら、将来的には正しい発音として認められる日が来るかもしれません。
「独壇場」という言葉がありますが、これは本来

    「独擅場(どくせんじょう)」

でした。ところが「擅」の字が「壇」と間違われて、「どくだんじょう」と読まれるようになり、いつの間にかそれが定着して、今では「独擅場(どくせんじょう)」は駆逐されて「独壇場(どくだんじょう)」が正しい言葉として通用しています。NHKでも普通に使われます。あわれ「独擅場」は「から見出し」(見出しとして挙げていても説明がなく、「○○に同じ」「→○○」などと書かれている)にされたり、見出しそのものから外されたりすることもあるようです。私はずっと「独擅場」を使ってきましたので残念です。
「敷居が高い」も本来は「不義理をしたところに行きづらい」というような意味ですが、今では能舞台や高級レストランのように「高尚過ぎて、あるいは高価過ぎて入るのがためらわれる」場合に用いられるようになりました。住太夫師匠も文楽が難しくて敬遠されがちなことについて「敷居を低うしてお待ちしとります」とおっしゃっていたことがありました。
誤用に始まった言葉の変化については、ある程度までは「それはおかしい」といって私のような守旧派は抵抗もできるのですが、あまりに一般的になると、その変化を認めざるを得なくなります。
最近若い人から聞いたのですが、「ほぼ」という言葉を強めて言う形として

    「ほぼほぼ」

というのが普通に使われるようになったそうです。へーッ、と思って調べたら、実はかなり古くから用いられていたらしく、ネットに記されているところでは、それが顕在化したのは6、7年前だという意見がありました。実際、三省堂の辞書編纂者が選ぶ「今年の新語」では2016年に「エモい」「ゲスい」などをおさえて「大賞」に輝いたのだそうです。全然知りませんでした。
どうして重ねて言うのか、実は今も私はよくわかっていません。強調したいから、というのが常識的な考え方なのでしょうが、「ほぼ」をもう少しぼやかしたような言い方にも思えます。また私は、単なる当て推量なのですが、音の響きのおもしろさというか、印象に残りやすさが影響しているのではないかとも考えています。テレビタレントさんなどが使って、それを聞いた人が「ほぼほぼ」という音をおもしろがって広げるようになったのではないか、と、これは何の根拠もないのですが想像しています。すでに辞書でも「俗語」として載っているものがあるらしく、こういう言葉もやがて普通になってくるのかもしれません。
何年か前に大学生に「謎」と言われた言葉を使っていた中学生も今では大学生になっています。彼女たちも今の中学生の言葉を聞いて「神秘」とでも思っているのでしょうか。

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