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ブサイクな光源氏 

『源氏物語』の主人公光源氏と言えば、頭脳明晰、芸術の天才、学問優秀でおまけにいつまでも衰えぬ美貌を兼ね備えたスーパー貴族です。そして、これは当時の美徳でもあったと思うのですが徹底した「色好み」でもありました。
そのために、ドン・ファンのように女から女へと飛び回るどうしようもない男、というイメージが付きまとうようです。学生に聞いても「とんでもない浮気者」というイメージを持っている人が少なくありませんでした。
しかし光源氏の恋愛はたいてい何らかの失敗を伴い、うまくいかないことも多いのです。さほど美人でもない年長の人妻には一度の逢瀬のあとは徹底的に拒否されてしまいますし、せっかく親しくなった女性は頓死してしまいますし、シンデレラのような落魄の姫君と出会ったと思ったらとんでもない醜女で和歌のセンスもない人でした。
正妻の葵の上はいつもツンと澄ました感じの人で、折り合いが悪く、子どももできないままの

    仮面夫婦

のような感じでした。ところがこの人が結婚10年にして初めて懐妊するのです。しかし彼女はおそろしい物の怪に襲われて、出産してまもなく亡くなってしまいます。この物の怪は、謡曲「葵上」にもなっているように、六条御息所という人の生霊なのでした。光源氏はその物の怪の正体を知ってしまって、御息所との関係ももう終わりだと感じたようです。一方の御息所も娘が伊勢斎宮として下向するため、それに随行して光源氏のいる都から離れる決意をします。伊勢斎宮は実際に伊勢に下るまでに長い潔斎の期間があります。先ず宮城内で初斎院と言われる潔斎をおこない、その後さらに野宮と言われるところで一年の潔斎を続けます。この野宮は平安時代になると嵯峨野に作られました。一代限りのもので、常設されていたわけではないようです。今、嵐電嵐山駅から北北西に進路を取って5分ほど歩くと野宮神社があり、神社では野宮の名残と伝えています。
御息所は野宮で潔斎する娘と一緒にいるのですが、光源氏は別れのためにこの野宮を訪ねます。とても美しい情景描写もあって、さすがは謡曲になるだけの名場面だと思います。
近松門左衛門『傾城反魂香』の又平は実在の絵師、

    岩佐又兵衛

をモデルにすると言われますが、この又兵衛が野宮を訪ねる光源氏の絵を描いています。一度見たら忘れられないような絵です。この光源氏の容貌は、学生に言わせると「ブサイク」で「幻滅した」ということになります。たしかに、現代風の美男子からはかけ離れた風貌の光源氏です。
しかし、都から離れた嵯峨までやってきた光源氏の、六条御息所に会いたいような会いたくないような複雑な胸中がにじみ出ている絵だと思います。画中の光源氏からは「ほーっ」というため息のような声が聞こえてくるようです。
漫画に出てくるような美男子ではなく、悩める貴公子光源氏が見事に描かれた絵だと思います。

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