話しかけられる
- 日々牛歩
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私は見知らぬ人から話しかけられるのが苦手です。そういう人はたいてい「道を教えてほしい」とか「あなたは神を信じますか」とかそういう用件だろうと思うのです。
神は信じていないので返事もできませんが、道を問われる場合はうまくいくと見事に答えを出せることがあります。あるとき、高齢のご夫妻らしい方が向こうから歩いて来られ、そのうちの男性がニコニコしながら私に近づいてきました。「あ、道を尋ねられる」と気づいたのはその人が歩きながら何となくきょろきょろしていたからです。目的地がこのあたりにあるはずなのに見当たらないという感じでした。そしてその人は私に向かって「おーみんあん」という口をなさいました。「道を尋ねる」「このあたり」「おーみんあん」という三題噺のようなところから私は答えを導かねばなりません。一瞬のうちに、近所に「おーみんあん」という感じの発音の施設、しかも高齢のご夫妻が生きそうなところはないか、と考えを巡らせました。近くにある施設というと「郵便局」「市役所」「公園」「スーパー」「体育館」などがあるのですが、ハタと気付きました。その場から5分ほど歩いたところに
公民館
があるのです。これだ! と思って「公民館ですか」と聞き直したらその人は大きくうなずかれました。あとは簡単で、すぐに道をお教えするととても嬉しそうにお礼を言ってくださいました。
しかしこんなことはなかなかなくて、たいていは「すみませんよくわからないのです」とお詫びすることになってしまいます。
田舎の町に行って山陽道の山道を下りてきたところに、もう80代くらいだろうと思われる女性が立っていました。どう考えても私を見ています。「この人、なんで山道を歩いて下りてきたんだろう」とお思いになったのではないかと想像できました。そりゃそうです、険しい山道ですから、車で行くならともかく、歩いてくるなんて珍しいでしょうからね。声を掛けられたらどうしよう、と思っていたら、しっかり話しかけられました。もうやけっぱちで、こちらから「私、実は土地の者ではないのですが、この道に興味がありまして今歩いてきたのです。これって山陽道ですよね」と言いました。するとその人はなんだかとても嬉しそうに
「そう、そう」
という返事をしてくださいました。それで私は間髪を入れず「いや、昔の人は大変でしたね。では、どうも~」という感じでその人から離れることに成功しました。ところがそのあと、近くにあった石碑を見ていたところ、その人がまた近づいてきて、石碑を指さして何か言っています。私は石碑に書かれていること読むようにして「昔は・・・だったんですね」というと、また嬉しそうにしてくれました。
すると今度はその人がその場を離れていって、申し訳ないのですが私はホッとしたのです。そしてさらに下って行ったところ、またその人が私を呼び留め、別の石碑を指さしていました。まさか無視することもできませんので近づいていってまたひとことふたことお話をしたのでした。最初は不審者だと思われたのかもしれませんが、よそ者であれば地元の自慢話をしてやろうじゃないかということだったのかもしれません。何だか、すっかりお世話になった感じで、けっこう楽しい時間でした。
めったに外部の人間なんて来ないでしょうから、もの珍しく思われたのでしょうね。おばさん、ありがとうございました。
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- [2023/03/24 00:00]
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