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迎駕籠死期茜染(8) 

中の巻の切場は「聚楽町」です。この段が今もしばしば上演される『迎駕籠野中井戸』「聚楽町」に当たります。ほかの段は上演されないため、「野中の井戸」に限定するようなタイトルにしたのかもしれません。現行の上演のものに比べますと、中味が若干違っています。というのも、原文のままだと何者なのかわからない人物も出てきますし、この段だけを上演するなら登場させなくてもよい(むしろその方が自然に見える)のです。しかし話の筋は同じで、『迎駕籠死期茜染』「聚楽町」は『迎駕籠野中井戸』「聚楽町」と同じと言ってよいと思います。
以下、あらすじです。

梅谷渋(うめやしぶ)を商う由兵衛は商売で外回りをしていて、家には妻の小梅が仕事をしています。そこに由兵衛の伯母(河内屋女房)が寺参りにかこつけて「小梅さん、通りかかったので足休めにお邪魔します」とやって来ます。小梅は「由兵衛さんは今仕事に出ていて私はしてもしなくてもいいことをしているだけですからお茶でも差し上げましょう」と愛想よく言います。伯母はお供の下男に「日暮れに提灯を持って迎えに来い」といって帰らせ、小梅に話しを始めます。「由兵衛はお吉という妾に狂っているそうな。道理で、いつぞやは私に百両の金を無心してきた。そんな金はないと言ったら練気者(ねれけもの。ずるい人)らしくしおしおとして帰ろうとするので、つい銀二百目を渡してやった。ところがその金を道に落として、どういう因果かうちの親仁様が拾ってまたそれをもらうというありさま。そのときに性根を誰に奪われたのか気がついた。

    『悋気せぬ女と酢のきかぬ鱠は
        今の世の廃りもの』


というように、はじかみか生姜くらいの辛みを持つ方がよいぞ」。小梅は「夫に限って妾狂いなどあるはずがありません」と言うのですが、伯母は信じずに「由兵衛が戻るまで寝て待っているから枕と一間を借ります」と言って障子の奥に入っていきます。
そこにあわてたようすで勝次郎が来ます。小梅はその慌てた様子に驚きわけを聞きます。勝次郎は「ご存じのように藤四郎の刀が見つかりましたが、明日中に請け取る人があるとのことです。そのことを由兵衛殿に伝えようと思ってきたのです」と伝え、「夫はもうすぐ帰ります。また思案してくれるでしょうから、あまり心配しないように」という小梅に対して「新地のお吉のところに行って話してきます」と去っていきます。
入相の鐘が鳴ります。そこに小梅の弟の長吉が来ます。長吉は姉の顔を見て「痩せたようですが、何か苦になることがあるのですか」と案じます。小梅は「以前おまえにも話した大事な刀がお金を渡さないと手に入りません。他人の手に渡すようなことになっては一分が立たない、と私も夫も辛苦を味わっています。ほんとうに主人ほど大事なものはありません。お前も奉公を大事に思って親方様のものは塵ひとつ粗末にしてはいけません。さあお使いの戻りなら早く帰ってお返事しなさい」意見をしたうえで帰そうとします。長吉は「私は平野へ為替の金を受け取りに行って、日が暮れたらこちらに泊まってもよいと番頭さんに言われています。お金もこのように持っています」と言って首にかけた小財布をおろすと、小梅は驚き、「このお金はどれほどあるの」と聞くと

    「小判で七十両」

とのことです。小梅は、あるところにはあるものだ、子どもにこんなものを持たせて平気でいられる身代になってみたい、と思います。気を取り直した小梅は食事を用意してやろうといいますが、長吉は自分ですると言って奥に入ります。

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