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迎駕籠死期茜染(9) 

「聚楽町」の続きです。
まだ幼い子を殺さねばならなくなる、という切羽詰まった事情に陥るのは『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」も同じですが、そこでも夫は「切る」と決め、妻は理屈ではない情ゆえにためらいを見せます。しかし子どもはすでに覚悟している、つまり夫婦の上を行っていることになるのです。これとよく似た状況に陥ったのが由兵衛と小梅夫婦です。
もともとこの話では長吉は百両を持っていることになっていたのですが、この『迎駕籠死期茜染』では「七十両」としており、これは作者の新たな工夫でした。残る三十両はどうするのか。それについてのもうひとつのはらはらする話を付け加えたのですね。

小梅が夫の戻りが遅いのを案じていると、夫が帰ってきました。小梅は急いで「あなたが留守の間に勝次郎様が『明日中に刀を受けだす人がある』とあなたに知らせにいらっしゃいました。勝次郎様はお吉様のところにお知らせに行かれました」と伝えます。由兵衛は途方にくれますが、小梅が「あの刀はもともと盗品ですから、お上に訴えれば当分はお金の心配はしなくてもいいのでは」と言います。由兵衛は、「置き主は一六屋の本八と古手屋の三婦と分かっているが、三婦が伊予まで行って盗んできたとは思えない。もう一人犯人がいるはずだ。今ここで公にしたらその犯人を詮議する手段を失う。まず百両の金をこしらえて刀をこちらに取り戻せば詮議はいつでもできるのだが、その金の才覚をして取り戻さなければこの由兵衛の忠義が立たない。腹切ることは簡単だが、お家は断絶になる。それが無念だ」と涙ぐみます。そして小梅が「私も先ほど長吉が来て為替の金七十両を見せられた時は欲しくてなりませんでした」というと、由兵衛は

    「長吉はもう帰ったのか」

と問い、今夜はこちらに泊まると聞くと「今夜は思案してどうにもならない場合はお前の言うとおりにしよう」と何やら思うところがあるような言い方をします。由兵衛は酒を飲んで寝ようといい、小梅はそれなら買ってくると家を出ます。そのとき小梅は「刀の金は百両ですね」と意味ありげに念を押します。
後に残った由兵衛は心を決めています。掛け金をかけて押入れの脇差を懐に隠し、猫なで声で長吉を呼び出します。そして金を確認したうえで刀を抜き放しました。そのとき小梅が帰ってきて戸を叩いて「開けて」と言います。そして長吉が開けに行ったその後ろから由兵衛は切りつけました。長吉が倒れる音が胸にこたえた小梅は戸を激しくゆすると掛け金が外れます。由兵衛は慌てて染め物を長吉にかぶせますが、小梅と向き合うと

    歯の根も合わない

ほど狼狽します。由兵衛の差し出す茶碗に小梅が徳利を傾けるとばらばらと一分の金が出てきました。由兵衛は驚いてこの金の意味を問うと、小梅は「七十両では足らないと思って、肝煎殿のところに行って島之内の木幡屋に勤め奉公することにして一分で三十両もらいました」と言うのです。

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コメント

ドキドキしながら続きを読んでおります。なんだかお人形が目に浮かぶような気さえします。これからどうなるのでしょうか・・・・

♬おみつさん

おそれいります。文章がまずくて申し訳なく存じております。きちんとまとめて書いているのではなく、1ページずつ読んでは書いているため、つり合いが取れていないところがあると思います。さて、どうなりますか。

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