fc2ブログ

月に帰るかぐや姫(1) 

『竹取物語』の5人の求婚者による難題解決の話は滑稽で読者の笑いを誘います。今5人と書きましたが、本来は3人だったのではないか、という説が有力です。いろんな傍証があり、私もかなり高い確率で3人だったのだろうと思っています。男たちはそれぞれに人間の弱みを露呈しており、生まれた家柄によってたまたま「身分が高い」というだけの人間が実はどれほどつまらないかを示しているようですらあります。
ところが、帝の話になると少し風向きが変わり、かぐや姫に受け入れられなかった後は、快楽を求めることなく歌のやり取りをして暮らすなど、地上における最高の「みやび」の空気は醸し出していると思います。
ところが帝とのやりとりが始まって3年が経った春の初めから、かぐや姫は月を見ると物思いをするようになりました。地上で暮らす期限が来たのです。
かぐや姫の様子は次第に深刻になり、嗚咽することも増えてきました。ある日、ついに翁にそのわけを話し、

    八月十五夜

に月に帰るのだと告白します。このあたりを読んでいると、私はいつもしんみりとした気持ちになって涙すら催されそうなのです。そして月に帰るかぐや姫。これはもう娘に先立たれた親の気持ちなのではないか。そう思うと、学生のころにはわからなかったこの物語の真髄が伝わってくるように思います。
映画『かぐや姫の物語』の結末もなかなかいいのです。なぜかかぐや姫が覚えていた「まわれ、めぐれ、めぐれよ」のわらべ歌を媼の前で歌い、その歌にまつわる思い出を語ります。かぐや姫はかつて月の世界で「まわれ、めぐれ、めぐれよ」の歌を歌っては涙を流していた人(女性)を見たことがありました。この人物もかつて地上に降りたことがあるのですが、それゆえにかぐや姫もこの地上に憧れて、その罰としてほかならぬこの地上に降ろされたのです。月で涙を流していた人物が地上から月に戻る場面がほんのわずかに描かれます。そこには地上の男と子どもが浜辺まで見送っている姿があります。これはやはり

    天人女房(羽衣伝説)

の昔話によるのだと思います。この人物はかつて地上の男との間に子ができて、しかし月に帰らねばならず、夫と子を思う気持ちが心のどこかに残っていたのでしょう。
この話のあとかぐや姫は「ああ、帰りたい」と言います。どこへ? それを察した媼はあることを企てます。ひそかにかぐや姫を山に行かせるのです。山に帰りたかったのです。そこには「ほんもの」の「愛」があることをかぐや姫は知っていたのです。『竹取物語』は翁とかぐや姫の物語ですが、『かぐや姫の物語』は媼の母性がかぐや姫の心のよりどころになります。そして山で再会した捨丸との飛翔シーンとなります。かぐや姫にとって「ほんもの」の世界がここにありました。地上の美しいものを俯瞰してそれらを礼賛するかのように飛び回るのです。
しかし、その幸せは一時のものでした。捨丸はその体験を夢かと思い、妻や子のもとに帰っていくのです。

にほんブログ村 演劇・ダンスブログへ
にほんブログ村
↑応援お願いします
jyorurisakushaをフォローしましょう

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://tohjurou.blog55.fc2.com/tb.php/6544-2331d048